映画の感想文 「長崎の鐘」

長崎の鐘」大庭秀雄監督、1950年公開。

1945年8月9日の長崎への原子爆弾投下の際、長崎の大学病院で勤務中に被爆した医師永井隆博士が被爆者の救護にあたった体験を記録した同名の書が原作。なお、藤山一郎の同名の曲はこの本をモチーフに作られたもの。
永井博士を若原雅夫が演じている。

長崎の教会のミサのシーンの美しさは見所。
いや、それにしても主人公よが下宿先の可憐な娘月丘夢路と勤務先のベタベタ美人ナース津島恵子にモテモテの前半は何。信仰に目覚め月丘との結婚に至るラブストーリーだけじゃダメなの? 伝染病に罹っているかもしれない状態で児童達に結核検診するのもどうよ。
一方、朝倉教授役の滝沢修がやたらと頼もしく見える。

「長崎の鐘」は原爆描写が随分穏やかだと思って見ていたが、ウィキペディアによると「戦後、日本人によって原爆を取り扱った劇映画第1号」であり「GHQによる検閲の為、原爆及び被爆状況等について真正面から取り上げる事が出来ず、永井隆博士の生涯を描いた作品という形で製作」したものらしい。

かねてより「キリスト教徒の多い国の軍隊」がわざわざ「日本の中でも熱心なカトリック信者が多い浦上」に原爆を落としたという事実について信者達はどう捉えているのだろうと疑問に思っていたが、ウィキペディアの「浦上燔祭説」の項を見て少しだけ理解できた。
永井が唱える説、その説への批判、批判に対する反論。興味深い。

なお、原作は「青空文庫」で読むことができる。【み】

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