ドラマ「大奥」第10回「八代将軍吉宗・水野祐之進編」(2023年3月14日/NHK総合)。
いよいよ最終回。というかようやく最終回までたどりついたよ! 遅ればせすぎて申し訳ない。
この絢爛豪華で複雑怪奇なSF時代劇、最後はどう決着をつけるのか!?
行方不明の「没日録」見つかる
跡目は自分が継ぐと思っていた次女宗武(松風理咲)に、吉宗は「次の将軍は家重」と告げた。
宗武は驚き、「姉に将軍が務まるのか」と抗議するのだが、「さように案じるのなら、どうか家重を支えてやってほしい」と言われてしまう。唖然とする宗武。
場面変わって、「まあ、得心などしてはおらぬだろうが」と吉宗。
「この先は家重様がご自身の働きをもって納得させていくしかございませんでしょう」と応えるのは杉下(風間俊介)。今日は珍しく晩酌の場ではなく、昼間のシーンだ。
原作ではこういう場面で側にいるのはたいてい加納久通なのだが、このドラマでは吉宗の腹の内を聞くのは杉下の役目になっている。
なにやら風呂敷包みを吉宗に差し出す杉下。
「春画にございます。上様にご献上したいと水野から」。
吉宗は「はぁ?」と驚くが、レディース将軍綱吉とは違い、威厳を残した「はぁ?」であった。
ていうか、私も「はぁ?」だよ。「春画? はぁ?」である。
原作のどのエピソードを置き換えたんだろう? それともドラマオリジナルのエピソードなのかな?
「決して誰にも見られぬよう、知られぬように、こっそりとご覧くださいませ」と念押しする杉下。
ははーん、わかった。春画と言って渡したのは、よほど大事なモノだね?
さては、かつて、探したけど見つからなかったとかそもそも書かれていなかったとか藤波が報告していた「没日録」の残りの部分か? そうなると、これはドラマオリジナルのエピソードだな。
部屋に戻って、風呂敷を広げる吉宗。
中から出てきたのは予想通りの「没日録」。
添えられていたのは大岡越前守忠相(MEGUMI)からの手紙である。
手紙は、「泥棒を捕まえてみたら奴らのねぐらでこれを見つけた。取り調べをしたところ御右筆村瀬の墓所を荒らした時に手に入れたという。これは吉宗が探していたものだろうと推測し、自分ひとりでは処理できないので吉宗の判断を仰ぐことにした。それで杉下の知恵を借り、水野を通じてこっそり渡すことにした」という内容だった。
いや、ちょっと待ってちょっと待って。
どうして水野〜杉下ラインを通じて、こんな重要な案件が処理されてるの?
大岡忠相が内密に相談したり、吉宗への届け物を仲介するのは加納久通一択じゃないの?
ていうか、久通は今何してるの?
家重が次代を継ぐ準備とか裏工作で大忙しなのだろうか?
久通は吉宗の側を離れすぎ。杉下はともかくとして水野重用されすぎ。
言語障害に苦しむ九代将軍家重
時は過ぎ、御鈴廊下の場。
「上様の御成り」の声と共に登場したのは、九代将軍徳川家重(三浦透子)である。
吉宗は将軍の座を長女家重に譲り、自分は「大御所」になった。
場面が変わると、杉下が家重の長女家治(落井実結子)と将棋を打っている。
それを楽しそうに見ている吉宗。
家治は、杉下のことを「じじ様」と呼んでいる。
杉下は吉宗の三人の娘の父代わりを務めているので、家治にとっては祖父になるのだ。
おいおい、加納久通どこ行った?
もしや杉下に暗殺されちゃった?
それはともかく、大奥総取締の杉下はこんなところで遊んでいる場合じゃないと思う。
今、大奥の諸問題は誰が処理してるの?
そこへやってきたのが加納久通。
大御所吉宗に意見を伺いたいとの老中たちからの伝言を持ってきた。
将軍職を退いてからも政治を執り行っているのは吉宗なのだ。
(良かった! 久通、杉下に暗殺されてなかった!)
さて、大御所会議無事終了。
部屋に残った吉宗と加納久通。
「久通、家重は具合でも悪いのか?」と吉宗。
近頃老中たちが吉宗に相談にくることが増えた気がするという。
「さようでございますねえ」とあいまいな返答をする久通。
吉宗が詳細を問うと、久通は首を傾げてとぼけた表情。なんだどうした久通!
締め切った部屋の中に男がひとり正座しているところが映る。
お幸の方(吉田大輝)である。
吉宗の怒鳴り声が響く。
「側室を罪人のごとく扱うとは何事じゃ! しかもお幸は家治の父親! 一体何を考えておる!」
恐縮している家重。
「で、でも母上、お幸は……」
家重の言い訳をさえぎって、さらに怒り炸裂の吉宗。
「聞けば、お幸はそなたが
原作のお幸の方が座敷牢に入れられた原因は、家重がお幸の方に見せつけるように新しい側室とイチャイチャしているのに嫉妬して斬り掛かってしまったから。
大奥の中での刃傷沙汰だ。本来ならば問答無用で死罪なわけだが、お幸の方は家治の父。さすがに殺すわけにはいかないということで獄に繋がれた。
京から下ってきた御台所と一緒に大奥にやってきたお幸の方は、京に許嫁もあったのに家重の側室にされてしまった不幸な人。牢に入ってから何も食べないお幸の方のため、かつては有名な店で働いていた料理人の芳三が苦心してあれこれ調理するエピソードがある。
この時に芳三がこしらえた「鰻丼」が平賀源内の重要なエピソードに繋がるのだが、今回のドラマではまるまるカットされてしまって残念。
さて、杉下との晩酌中にも、「あやつは世の役にたちたいと言うたではないか」と愚痴っている吉宗。
「どうやらお言葉を発するのが、お恥ずかしうなられてしまったようにございます」と杉下。
命令を下している家重の様子が映る。
「
家重の不明瞭な言葉にとまどう老中たち。
「おそれながら、今一度」とおそるおそる申し出るが、やはり家重の言っていることがわからない。
すると田沼意次が「酒造りを奨励することで米の値を上げられるのではないかと、上様は仰せにございます」と家重の言葉を通訳する。
顔を見合わせる老中たち。本当に家重がこういう提案をしているのか疑っているのだった。
杉下によれば、このようなことが度重なったため、家重は大奥に入り浸ることが増えたのだという。
……といった話をしている最中に、杉下は急に胸をおさえバッタリ倒れてしまう。
杉下が倒れ、あの人がやってきた
杉下の病状は「真心痛」。
「ずいぶん前から兆しはあったはずだが薬代がかさまぬよう我慢していたのではないか」というのが医師の見立てだと加納久通に語る吉宗。
なお、検索したところ「真心痛」とは「心筋梗塞」のことらしい。
これを聞いて「なんと杉下様らしい…」と久通。
文句も言わず長年仕えてくれた杉下に何かしてやりたい、何かひとつでも報いてやりたいと吉宗。
杉下の寝室に水野登場。
「大奥にも既にある薬かと思いましたが、とりわけ質のいい品をお持ちしましたんで」と水野。進吉として生まれ変わったこの人の婿入り先は大きな薬種問屋なので薬の入手には強いのだ。
布団から半身を起こし、水野が持ってきた皿にのった「とりわけ質のいい品」を指でつまみながら、「しかし、高価なものなのでは……」と言う杉下。
その様子を見た吉宗、「そうやって薬も飲まぬゆえ、かようなことになったのであろう」と叱りつける。
「今、煎じさせておるゆえ」と吉宗。「私ごときにもったいない」と杉下。
そこへ煎じた薬が届けられると、吉宗手ずから杉下に薬を飲ませる。
あまりにとんでもなくありがたい状況にビックリして目を白黒させる杉下。
杉下が薬を飲むと微笑む吉宗。杉下も微笑みで応える。
ふたりの様子を見て「まるで
相変わらずのフレンドリーが過ぎる水野の発言に、またまた目を丸くして驚く杉下。
だが、吉宗は平然と言うのである。
「
これを聞いて吉宗の顔を見上げて、またしても目をまんまるくする杉下。
「姫らの父は、皆、はように亡くなった。父親代わりとして娘を育ててくれたのは杉下じゃ。姫らの父ならば、私には夫であろう」。
「なるほど」と合点がいった水野。
「恐ろしい」と杉下。
「恐ろしいとは何じゃ」と吉宗。
「いえ、口が滑りました。恐れ多い」と杉下。
三人がなごやかに談笑しているところに、加納久通がやってきた。
にんまりとして「もうお一方、お客様がいらっしゃったのですが」。
さあ、ネクストゲストは誰が来る?
藤波か?
杉下に縁がある人が全然思い浮かばないよ!
そして、「ごめんつかまつります」と渋く圧の強い声で登場したのは白髪頭になった藤波(片岡愛之助)だ!
やった、当たった! まあ、このドラマで杉下に縁があり、かつスペシャルゲスト感のある登場人物はこの人くらいしかいないものね。
藤波は吉宗への挨拶もそこそこに、杉下の隣に座っている水野を見て、驚いて駆け寄る。
「昔、よう似た男がおったように覚えておりますが……み、水野であるのか!?」。
それにしても、20年くらい前にほんのちょっとしかつきあいがなかった水野の顔をよく覚えていたな藤波。
大奥時代とは髪型も衣装も違うから、「遠山の金さん」の世界なら別人に見えていたはず。見たところ全然変わってないけど加齢により顔も老けているはずだし!
「実はの、藤波」と吉宗が楽しげに種明かししようとするのだが、藤波はいきなりガバっと水野を抱きしめちゃうのだった。なんでよ!
驚く水野。吉宗も杉下も久通もビックリ顔だ。
「愚かにも! あまりに愚かしい殺生をしたと! よう生きていてくださった!」。
ものすごい圧でこう言うと、水野をぎゅうぎゅう抱きしめる藤波。
どうやら藤波は、水野に御内証の方ルールを知らせずに吉宗のお褥へ送り込んだことを反省していたようなのだ。原作のダメ藤波とは違い、このドラマの藤波は有能かつ人情深い人物なのだった。
唐突に役者の絵姿を皆に配りながら、「それがし、今は片岡仁左衛門という役者を贔屓しておりましてな」と言う藤波。
仁左衛門の魅力を語り、さらには「大御所様が仁左衛門の後見人をしたら良い」と突拍子もない提案をするのだった。
当時の歌舞伎俳優は人気も金もあっただろうが、社会的には四民の下の被差別民の扱いである。徳川将軍が役者の後見人? そんなことありえるの? こういう事例が実際にあったのかしら?
案の定、吉宗は藤波の話には乗らなかったわけだが、藤波、今度は杉下に「病が治ったら、ちょいと抜け出し、芝居見物に出かけては?」とマイルドな提案に切り替える。
しかし、水野から「それはお定め破りではございませぬか」と言われてしまう(いくら今は町民になったとはいえ藤波はかつて直系の上司の元大奥総取締なのにまったく遠慮のない物言い!)。
しかし、藤波、「なんのなんの、大御所様のなされたお定め破りに比べたら」と朗らかに言い返すのであった。
確かにお定め通りならとっくに死んでいたはずの水野がこうして元気にしているのだから、杉下が芝居見物に行くなんてどうってことはないよね。顔を見合わせ笑う一同。
なお、藤波の中の人は、十三代目片岡仁左衛門に見いだされ十三代目の次男の養子となった松嶋屋の人なので、劇中の贔屓の役者は当然片岡仁左衛門。仁左衛門ほどの大名跡になると代々の経歴がかなり明らかになっているし、吉宗の生没年もはっきりしているから、藤波が推している仁左衛門は一体何代目の仁左衛門なんだろう?とウィキペディアを見ながら考えてしまうのだった。
原作における無能な大奥総取締役設定は免除の上、大奥から下がる前の大説教や水野との感動的な再会シーン、さらには本職の歌舞伎の自分の家の宣伝までさせてもらえて、片岡愛之助、実は「八代将軍吉宗・水野祐之進編」のラスボス、真の主役なのかもしれない。
場面変わって、寝間着の杉下相手に晩酌中の吉宗。
病気の人は静かに寝かせておいたほうがいいと思うぞ。他に人はいないのか大奥。
だが、吉宗はまたしても手ずから杉下に薬湯を飲ませてやろうとするのだ。
これは晩酌ではなく、杉下の介護の時間だった!
杉下は半身を起こして喋れるくらい元気だし手が麻痺している様子もないので、ただ茶碗を渡してやればいいだけなのに、吉宗はまるで御小姓のように甲斐甲斐しく世話をしてやっている。
杉下は「もうご勘弁を。自分で飲みますゆえ」と遠慮して、昼間は自分の手から飲んでいたではないかと吉宗を怒らせている。
そして、「あれは不意を襲われましたような」という冗談めかした杉下の返答を聞いて、口をとがらせていた吉宗も思わず笑ってしまうのだった。
いよいよ杉下が危篤となった。
廊下を走って杉下の部屋へ急ぐ家重(ドラマの家重は走れる!)。
部屋には吉宗とたくさんの部下たちが集い、杉下の快癒を願って必死に呼びかけている。
家重も駆けつけた。
杉下はとてつもなく弱々しい声で、家重に「うれしうございます、さように
杉下の手を握り、励ます吉宗。
大御所様に手を握ってもらい上様に見守られながら、にっこりと微笑んで杉下は安らかに逝く。
加納久通の告白
加納久通の報告によれば、杉下の菩提は市ヶ谷の天桂寺に御年寄としてではなく吉宗の側室として丁重に葬られたという。
「寂しくなりましたね」と久通。
外は雨。「今年は不作になるやもしれぬ」と吉宗は憂い顔である。
場面変わって、鍬や木槌や筵旗を担いだ険しい表情の農民の女たち。
吉宗の不安は的中し、米不足のため飢えた農民たちが米問屋へ打ちこわしにやってきたのだ。
一方、大奥では、老中たちが「米不足により百姓一揆が頻発している」と、この非常事態を報告する。
家重が「堀田、そなたにすべて任せる。よきにはからえ」と言うと、老中たちは間髪入れず「ははあ」と一礼するなりあっという間に部屋を立ち去る。
家重は「どうせ母上のところに参るのなら、私のところになど来なければいいのじゃ。無駄足もいいところじゃ」とつぶやく。
「おそれながら上様」と田沼意次。
「大御所様は決して上様から
しかし、「そなたもあの者らと一緒に行ってはどうだ?」と家重。
意次はめげない。
「あの日、万民の役に立ちたい、役に立つと大御所様にお約束なさったのは、上様にござりましょう!」。
しばし瞑目した家重、大きな目を開き「勝ち筋が見えぬのだ」と言う。
「凶作になれば百姓どもが飢え死に、米の値は上がり、町人どもは飢え、豊作になったらなったで、米の値は下がり、札差に買い叩かれ、武士の暮らしは立ち行かぬ。私には、まことにどうしたら良いかわからぬのだ」。
発声と体が一部不自由なだけで頭脳は明晰という設定の家重が、心を許す側近の田沼意次と大岡忠光に明かす胸の内。
一方、吉宗は、不作は人の力ではどうにもならないと意次に言う。
「それによって起こる一揆は、私が百姓の荷を重くしてきたがゆえ。家重も私のつけを払わされているようなものじゃ」「私自身、ろくな策を打ててはおらぬ」。
さらに吉宗は言う。
「勝ち筋などあるものなら、私も知りたいところじゃ」。
場面変わって、加納久通と語り合う吉宗。
原作の「吉宗編」の中で大変印象深い名場面のひとつ、久通最後の出仕の日。
「のう、久通」と吉宗。
「私はまこと運の強い
久通をまっすぐに見据え、言葉を続ける吉宗。
「私と跡目を争っておった尾張の吉通様を亡き者にしたのはそなたなのか?」。
しばらく黙っていた久通は「はい、わたくしでございます」と返答する。
「尾張の徳川吉通様を殺しましたのは、わたくしにございます」。
幼い家継公は病弱だったため手を下すまでもなかった。
しかし、紀州の吉宗の二人の姉は、久通自らが毒を盛って殺した。
なぜなら姉たちがいる限り紀州家の主になれず、さらには決して将軍にもなれないからだ。
さらに、大奥の裏事情に通じている御右筆村瀬(石橋蓮司)が余計なことを吉宗に言わないよう、御庭番に命じて殺させたのも久通だった。
次々と人を殺めたのは、吉宗のためだけではなかった。
吉宗が将軍の座に就きこの国を導いていく姿が見ていたかったからだと久通は告白する。
「いつでもお手討になる覚悟で、今日まで生きてまいりました」と平伏する久通。
「どのみち、この冬を越せぬと言われております」。
だが、吉宗は涙で言葉を詰まらせながら言うのだ。
「つらかったであろう、久通。今までずっとひとりで背負っていてくれたのじゃな」。
それを聞いた久通は驚き、そして微笑みながら言った。
「一睡の夢を見せていただきました。良き夢にございました! 」。
幼馴染の女たちが二人三脚で歩んできた険しい道程を振り返って泣いている。立派な女ふたりが互いを思って涙を流している。
愛らしい顔だちに似合わぬ恐ろしい所業を告白する久通というショッキングな場面だが、原作同様、ドラマでも幼い頃より忠実に仕えた有能な家臣の心とその苦しみをねぎらう吉宗の心に胸打たれる名シーンに仕上がっていた。
吉宗の幻視
吉宗の肝いりで青木昆陽が改良した甘藷(さつまいも)に舌鼓を打つ大奥の御三の間の男たち。
幕末編で活躍する黒木(玉置玲央)が顔を見せている。
また、赤面疱瘡はいまだ撲滅できていないが、吉宗が死亡した患者の解剖を許したおかげで、「赤面に罹ると体内にも瘡が広がり肺まで詰まっていることがわかった。これとて確かな一歩であろう」と語る小川笙船(片桐はいり)。
その言葉を聞き「まこと大御所様は偉大な将軍であられたことにございます」と大岡忠相。
大御所様の生きているうちに「これで治りましたぜ!」と見せたいのだと水野。
この大岡越前守役のMEGUMIを始め、このドラマの中心人物たちはかつらに白髪が混じったくらいで皆割と若いままである。御右筆村瀬のように老年期は年齢相応の俳優に交代したほうが良かったと思う役も少なくない。
しかし、小川笙船役の片桐はいりは見た目も演技も素晴らしく立派なご老人だ。
片桐はいりは、このドラマのファンタジーとリアリティを脇から頑丈に支えた大功労者である。
場面変わって、御鈴廊下を杖をついてゆっくり歩いている吉宗。
風呂敷包みを抱えている。
今まで借り出していた「没日録」を御右筆の間に返しにいくところである。
御右筆の間に行くと、何と御右筆村瀬がいるではないか。
死んだはずの……いや、加納久通が殺させたはずの老村瀬だ。
驚愕する吉宗。
「ずっと、お待ちしておりました」。
村瀬の挨拶を聞くと同時に手にした風呂敷包みを落とし、ばたりと倒れる吉宗。
もしや村瀬はあの世から吉宗を連れにきたのか?
これは原作にないドラマオリジナルのシーンなのでどうでもいいけど、あの世の皆さんが吉宗に差し向けるなら久通とか杉下とかもうちょっと位の高い使者になりそうなものだと思った。
さて、死んだかと思ったが、吉宗、まだ息があった。
吉宗の枕頭で「私を置いてゆかないでくださいませ、母上!」と泣く家重。
過去9回のあれやこれやのダイジェスト映像が流れる。
その中で登場したのが、大奥の中を歩いていく小柄な侍と金髪の大柄な侍の後ろ姿である。
私は原作を読んでいるからこの二人組が誰と誰なのかわかっちゃう。
小柄な侍は平賀源内(鈴木杏)、大柄な侍は吾作、のちの青沼(村雨辰剛)に違いない。
うっすら目を開く吉宗。
なぜか彼女は現代の女性の格好で現代の渋谷のスクランブル交差点に立っていた。
そして、「滅…びぬ……」とつぶやく今の吉宗。
なんと吉宗は未来を見たのだ(江戸時代の渋谷は郊外だけどな!)。そして、「戻るぜよ、あん世界へ」と脳内に直接話しかけてくる坂本龍馬の
若い男女でごった返す未来の渋谷を見た吉宗は「この国は、滅びぬ」と、娘家重と孫家治(森山のえる)に伝えるのだった。
吉宗薨去。
時代がいったりきたりして混乱する最終回。
例のポップソングが流れる中、生前の吉宗が「赤面疱瘡を駆逐してほしい」「吉宗今生最後の願いである」と田沼意次に命ずる場面となる。
最後は、「来たぞー! 長崎ー!」と高らかに叫ぶ平賀源内。
そして!
と、大きな文字が2枚ドーン!
やったね!
鈴木杏の平賀源内は実際に秋に放送されるドラマを見てみなければわからないが、日本生まれではない村雨辰剛を青沼にキャスティングしたのが謎。外見はオランダ人でも中身はまるっきり日本人というのが青沼というキャラクターの重要なポイントのひとつだと思うのだがどうか。
青沼は長崎訛りの設定なので、日本語の多少のアクセントのブレは何とかなるのかもしれない。あるいは、家重のように原作とは異なるキャラ設定にするのかもしれない。
何はともあれ、「大奥」の続きが見られるというのだから万々歳。
文句を言ったらバチが当たる。
このドラマのおかげで凛々しい冨永吉宗に会えた幸福を胸に、ウキウキと秋を待つ所存である。【み】
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