「カーネーション」直子の助言

土曜の次週予告で見た通り、激怒した末成由美は聡子デザインのミニワンピースを突き返してきた。
「二度とこの店には来ない!」とプンプンして帰る末成由美。その様子を見て、厄介払いができたと喜ぶ糸子、昌子、恵。
聡子はドレスを握りしめ、一人しくしく泣く。

「いい勉強になった」「デザイン画で納得していてもいざ実際に着てみたら丈が短くてビックリしたのだろう」「脚でも腕でも出したことのないところを出すのは恥ずかしいものだから丈は難しい」などと、糸子にしては珍しく娘をきっちりフォロー。
だが、聡子のワンピースを見た次姉の直子のリアクションは母とは全く違っていたのだった。

ワンピースを見るなり、「ええやん、アンタなかなかやるな」。
「破廉恥」と罵られたと訴えると、「そんなもん言われたもん勝ちや。ウチなんかしょっちゅう言われてんで。破廉恥やら悪趣味やら。ほんでええねん。デザイナーがええ子ちゃんでどないすんねん」。
さすがは元猛獣。さすがは装麗賞最年少受賞。さすがは未来のサイケの女王。イカスぜ!
しょんぼりする聡子を元気づけたくて、テレビの前で「ええぞええぞ! もっと言っちゃれ!」と直子の尻馬に乗るわたくし。
素直で可愛い聡子とカッコイイ肝っ玉直子の会話は見ていて本当に楽しい。

「あんなあ、アンタがロンドン風好きやったら、ひたすらロンドン風作っちゃあたらええねん。ほしたら勝手にロンドン風の客が集まってくるようになるんや。お母ちゃんも姉ちゃんも客に媚び売り過ぎなんや。あんなん聞いちゃったらあかんで」。
コレが直子流なのだ。
客の要望の応えて腰回りにタックを入れたり、どう裁断したら女性が一番キレイに見えるかと考えたり、有名デザイナーのデザインを勝手にアレンジして使ってしまったり…という糸子とは正反対の考え方。
また、服飾学校の優等生として、客と上手にコミュニケーションをとりつつ自分の持ち味を生かそうとする優子とも違う。

直子の口から繰り返される「ロンドン風」というフレーズ。それを目を輝かせて聞く聡子。
MICHIKO LONDON…じゃなくて、SATOKO LONDON誕生の日にまた一歩近づいた模様。

「あのよ、ずっと前から聞きたかったんやけどよ、お前よう……」
だんじり祭りの夜、北村が糸子に何かを言いかけた。
口ごもった北村は不自然に話題を方向転換し、結局「自分が仕入れた生地は正絹か否か」という話になってしまったのだけれども、ねえ、コレってアレよね? アレだよね?
周防との不倫を経た糸子はもう昔のように他人の恋心に気づかぬ朴念仁ではないはず…と思いたい。
まあ、いろいろトラブルのあった北村の思いに真っ向から応える必要はないのかもしれないけれど、口は悪いがここまで糸子にひれ伏すようにして貢ぎ続けてきた男にも何かいいことが起こるといいよね。

それはそうと、ドラマに顔を出すたびに一人順調に老いていく木岡。
主人公の糸子がとうてい50歳に見えないメイクなのをはじめとして、千代も木之元夫妻も玉枝も八重子も、戦前から出ているキャストはみな若々しすぎる。
しかし、木岡だけは髪が白くなり腰が曲がり口元はフガフガして動きは緩慢、立派に爺さん化しているのであった。
3月3日から糸子役が交代するというが、小篠綾子さんに似せた老けメイクの夏木マリと並んで違和感がなさそうなのは木岡だけだと思う。
でも、夏木は72歳からの晩年を演じるというから、糸子の親世代の木岡はもう90歳くらい? むう、間に合わんか。

で、糸子が72歳ということは、三姉妹も50歳前後。
登場時から個性的で迫力があって、高校生の時は高校生に、デザイナーとして独り立ちしてからはちゃんとその時代のデザイナーに見えている直子はあまり心配していないのだが、問題は可愛い可愛い聡子である。
ローティーンの頃からここまでは自然な扮装と演技で良かったのだが、このまま五十代に突入させてしまうの? 大丈夫なの? 三姉妹も夏木マリと同時に交代させた方が良くない?

ワタクシ的には中年以降の三姉妹はかしまし娘でお願いしたい。
華やかで社交的な雰囲気の長女正司歌江が優子、おっとりした雰囲気の三女正司花江が聡子。
そして、善作の母で糸子の祖母のハルを演じた正司照枝を直子に。
善作の気質を姉妹の中で一番受け継いだ糸子、さらにその気質を受け継いでいるのが直子だと思うので、ハルと直子が同じキャストでもいいのだ。子どもの頃の糸子を演じた二宮星が、子どもの頃の直子役で再登場してるしね。

ああ、でも、尾野真千子の糸子で最後まで見たかったなあ。ねえ皆さん。【み】

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