テレビをこじらせた東京福袋が書いたノンキなテレビコラム集。

「大奥〜華の乱〜」第1回

桜

10月13日、フジテレビの平成「大奥」シリーズ第3弾、「大奥〜華の乱〜」がスタートした。
例の大奥勤務とは思えぬお下品な3人組、今回もレギュラーらしい。ドラマの冒頭に登場して、無理矢理今回のお話のおおまかな設定を説明していた。
彼女らの説明によれば、前シリーズの続きとなる時代のお話で、前シリーズの語り手だったお玉が、今シリーズの将軍綱吉の生母・桂昌院である。お玉を演じたチンクシャな星野真里が年をとったら江波杏子。なんだそりゃ。

さて、幕末の前々シリーズから春日局の前シリーズに時空を超えて同じ役回りで登場した3人組、こいつら大奥に棲む妖怪かよ…などと思っていたら、今回はそのあたりをも台詞で説明しちゃってやんの。
曰く「お忘れか? あのお方がお玉と呼ばれ、人にこずかれこき使われていた昔があったことを」「葛原様はともかく、わたくし達はその頃はまだ大奥にはおりませぬ」「大奥どころかこの世にも」。
つまり、葛原(鷲尾真知子)は前作からの引き続き、残りの2人(山口香緒里、久保田磨希)は前作とは別キャラ、と言いたいらしい。

いや、この3人のことなどどうでもいい。
「笑えるシーンも入れないと視聴者が飽きてしまう」とか「この3人に随時ストーリーを整理して喋らせないと視聴者がドラマの流れについてこられないんじゃないか」とか、視聴者をバカだと思っている制作サイドの傲慢かつ臆病な心のあらわれとみた。
まあ、今回は久保田の鼻があからさまに赤く塗られてなかっただけでも有り難く思え、ということか。

それはともかく、塗ってもその色なのか、小池と内山。
前作で位の高い尼僧を演じた瀬戸朝香がやけに健康的な小麦色の肌だったのが気になったけれど、今回は主役の安子役の内山理名とお伝の方役の小池栄子の肌色がヘン。色調整に失敗しちゃったみたいな灰色がかった肌色なのだ。
なぜこんな色のドーランを? 無理に白く塗ると似合わなかったのか?

安子は、大奥入りする前は綱吉側用人・牧野成貞の娘であり、婿入りした夫と優しい両親と共に質素ながらも温かい家庭で暮らしている。
牧野家での質素な暮らしと大奥に入ってからの華やかな暮らしとのギャップを際だたせるためだとは思うが、牧野家時代の内山は、薄黒い肌色に輪郭のハッキリしない淡いピンクの口紅、でも眉はクッキリというヘンテコなメイクである。しかも可愛らしいピンクの着物。いくら太平の世とはいえ、武家の女房がこんな格好するもんだろうか。ギャル妻?
いや、なにも眉を落とせとかお歯黒しろとか、そこまでリアルを求めているわけじゃない。でも、この役柄でナチュラルメイクっておかしいんじゃないの? 女子大生とかOLじゃないんだからさ。

で、小池栄子がまた妙なことになっている。
こちらも内山同様に薄黒い肌色に加え、どういうわけか眉を薄くしているのだ。そして、口紅はヌードカラー。小池の素の眉なのか、抜いたり化粧品で塗りつぶしてるのかはわからないが、彼女がいくらあの大きな目で必死に内山を睨みつけても、こんなメイクの途中で慌てて飛びだしてきたような顔では滑稽なだけである。
このメイクで一体何を表現したいのか。
出産直後で眉が薄くなって化粧も控えているという表現かとも思ったが、小池の子はもう赤ん坊ではない様子。出自が卑しい身分という設定をヌーディッシュなメイクで伝えてるつもりなのか。わからん。
こんなヘンテコな薄眉にするくらいなら、いっそ「大奥」(1968年版)の浪花千栄子みたいに、眉を剃ってお歯黒入れたら良かったのに。眉なしお歯黒にしたら、憎々しい表情で睨む小池の演技が生きると思うがなあ。中途半端な顔じゃ小池が気の毒だ。

なるほど、今どきの「大奥」ドラマはナチュラルメイク指向なのか…というとそうでもなくて、江波杏子や藤原紀香は白めの肌に眉クッキリ、口紅しっかりという昔ながらの時代劇メイクなのである。
せっかく絢爛豪華な衣装をまとっているのだから、ヘンなところでリアリティ(?)を求めず、遠慮なくこってりメイキャップしてほしい。
ただでさえ、内山と小池は大奥に暮らす女性という系統の顔だちじゃないのだ。時代劇の世界観からしたら、田舎の女中、あるいはせいぜいがお侠な町娘という風情。
肌あくまでも白く、眉キリリ、目張りクッキリ、口紅は真っ赤。この手のメイクじゃないと、顔が着物に負けてしまう。

ところで、綱吉(谷原章介)が忠義の家臣・牧野成貞(平泉成)に大奥へ娘を差し出せと迫るシーン。
綱吉が自宅に来るたびに妻・阿久里(萬田久子)が閨の相手をさせられており、さらに夫のいる娘を差し出せという無理難題。親心と忠義心の間で苦しむ成貞。
絞り出すように「娘には夫がおります」。まあ、平泉成はいつも絞り出すような声で喋ってるんだけどさ。

えー、相手は上様だぞ。武士がそんな心掛けでどうするよ。即座に「ありがたき幸せ」とか言わなくちゃ。
綱吉、慌てず騒がず「離縁させればよい」「安子はまだ若い。一介の側役の娘であるよりは、わしの側室になったほうが、先々幸せというものじゃ。そなたの家も栄える」。
おいおい、そんなこまごましたことまで上様に考えさせるなよ、成貞。

ところが成貞、将軍直々のアドバイスなのに、またしても絞り出すような声で「そ、そればかりは……」。
これにはさすがの綱吉も「なんと申した。よう聞き取れなんだが…。まさか家臣の分際で主君に口答えするつもりではあるまいの?」。
さらにダメ押しでもう一言。「下総関宿五万三千石の命運は、そちの返答次第にかかっておる」。
あら、なんか違和感。文法的に間違ってるような気がするんだけどどうよ。この台詞、「返答次第じゃ」あるいは「返答にかかっておる」のほうが良くないっすかこれ。

あと、ドラマ終盤の、庭を散歩する安子とお伝の方がすれ違いざまに火花バチバチというシーン。
位の高いお伝の方に道を譲って頭を下げる安子を睨みつけながら歩いていくお伝の方、その後ろにはおつきの女中たちがぞろぞろ、という「大奥」モノで良く見かける光景である。
かたや卑しい出ながらも今や世継ぎの生母という大奥最高位に上り詰めた女、かたや母の仇をとるべく大奥に乗り込んだ武家の娘…という風には全く見えなくて、大奥学園をシメてるスケ番一行が転入してきたナマイキな新入りにガンつけてるといった感じなのだった。

他にも「また出てるのかよ北村一輝」とか「高岡早紀どこに出てた?」とか「前作の星野真里に比べて余貴美子のナレーションは格段に聞きやすい」とか「内山理名のダ行の滑舌悪すぎ」とか、あれこれ感じることはあったが、やはり今回の目玉は高僧・隆光を演じる火野正平であろう。
いつまでも若い若いと思っていた火野だが、こうして若者だらけのドラマに登場するとさすがに貫禄がある。とはいえ、彼の持ち味であるチンピラっぽさもどこか見え隠れしていて、そのアンバランスさがいい感じ。
前作における梶芽衣子と藤田まことのようにドラマの重心的な役割を果たしていくのだろう。っていうか、そうあって欲しい。【み】