ネット界隈を少々騒がせた「ここにタイトルを入力」の新作、「クイズ・ファイブセンス!五感を研ぎ澄ませ!」(フジテレビ/2022年4月12日)。
マヂカルラブリー村上が単独出演でしかも彼がひとりでMCを務めるクイズ番組というだけでだいぶ異色なのに、回答者として端っこの席に座っているバイきんぐ小峠の様子が明らかにおかしい。
小峠の右半身は向こう側の部屋にあり、回答者席にいるのは左半身だけ。部屋と部屋の間に鏡が置いてあり、左半身と鏡に写った左半身を合わせて全身に見せかけているという状態である。
このヘンテコなスタイルでクイズに参加している小峠、時々苦しそうな表情を浮かべたり意味のわからぬ事をつぶやいたりする。
どう見たって挙動不審の極みなのだが、MCのマヂカル村上も他の回答者(みちょぱ、武井壮)もたいして気にしている様子もなくクイズは淡々と進行していく。そしてこの状態のまま小峠優勝で「クイズ・ファイブセンス!」は幕を下ろしCM。
いやちょっと待て。これなんなの? 小峠はどういう状況に置かれているの? ネタバラシしてくれないの?
CMが明けるとスタッフと打ち合わせ中の小峠。
スタッフいわく「小峠をダブルブッキングしてしまったので2番組同時に収録したい」。
当然、小峠は「そんなこと無理」と断るわけだが、スタッフは「大丈夫です」と自信満々である。
「スタジオを見てもらえばわかります」と言うスタッフに連れられて真ん中で2つの部屋に分かれているスタジオを見学する小峠。片方はクイズ番組、もう片方はトーク番組のセットが組んである。渋りながらもスタッフに説得され同時収録をOKするあたりの流れは被ドッキリ王の面目躍如。さすが2年連続で「ドッキリにかけられた芸能人ランキング」1位に輝いただけのことはある(「水曜日のダウンタウン」調べ)。
というわけで、番組後半は「ボクらの時代」みたいなトーク番組「Rest Garden」。
鼎談の相手は俳優の中村俊輔と遊井亮子。子どもの頃の思い出ばなしとか当たりさわりのない同世代トークでゆるゆると番組は進むが、その間も左半身の小峠は「クイズ・ファイブセンス!」に参加しているので、時々トークの内容にそぐわないことを言う。そんな小峠にとまどう中村と遊井。それを強引にごまかす小峠。
一方、隣の部屋で収録が行われているクイズでは「小麦粉の中に顔を突っ込んで手をつかわずにハートのクリスタルを見つける」とか「優勝して大きなレイを首にかけてもらう」といった派手なイベントが発生しており、小峠は途中から粉まみれの真っ白な顔になってしまう。
つまり、この番組を一言で説明するなら「隣り合わせたスタジオで同時に収録している2つの番組に半身ずつ参加した小峠が苦しみ困りながらも任務を全うする」というフェイクドキュメンタリー的バラエティ。
リアリティを狙ったのか予算の問題かはわからないけれど、どちらの番組も共演者や設定がゆるすぎてメリハリが今ひとつ。同時収録のアイデアも淡々と無茶ぶりをこなす小峠も最高に面白かったので惜しい。
本当に困った状況に陥った小峠が真剣に焦りながらも危機回避する妙技が見たい。尊敬するミュージシャンとか大御所芸人とか政治家とか、小峠が絶対に失礼な態度を取れない共演者で是非もう一度。
あるいはカズレーザーとかロザン宇治原とか、クイズに強くかつ普段この手のドッキリにかけられないタイプの芸人がクイズパートは全部本気で挑むバージョンも面白そう。【み】