今朝、このブログで「岸和田だろうがどこだろうが、よその縄張りを『私は不良少女です』という看板を背負ったようなスタイルで歩くのは危険極まりない」「岸和田のドロップアウトした若者達がみな温厚だったとしても、深夜、里香に出会った場合、一悶着あるのが当然なのではあるまいか」と、書いた途端に悶着である。しかも真っ昼間に。
あまり強そうじゃない子だったのでまだ良かった。
というか、いかにも弱そうな子だったので、里香も相手をナメてメンチを切ったのだろう。
ボコボコに殴られているところを長身の青年に助けられ、背負われて帰ってきた。
救急車で病院直行ではなく「まず2階に」という程度の怪我なのに、素直に背負われてきた里香はやはりたいしたツッパリではないのである。
そして、その程度のダメージしか与えられなかった相手もまた見た目通りの弱いヤンキーだったのであろう。
不良というのは意地と義理と体面を大事にする人種だ。
喧嘩に負けて男の子におんぶされて家に帰るなんて、不良少女としてはかなり情けない状況である。
長身の青年は「ポリ来たど」と叫んで、喧嘩相手を撃退したのだという。
「警察来たんけ」と驚く糸子。
「いや、嘘やけど。そう言うたら、絶対、勝ってる方が逃げてくんで」と聞いてにんまりした糸子、じんわりと絡みつくように「賢い子やな」。
糸子はこんな風に賢しげに相槌を打つ人ではなかった。こんな風に色気が滲み出てくるような物言いを一切しない人だった。
ああ、空白の12年の間に糸子に何があったのか。どれだけ人生経験積んでいたのか。私はそこが知りたいよ。
「働かざる者食うべからず」なので、糸子は里香に店の手伝いをさせている。
部屋に飾ってあるたくさんの写真立てを磨かせたり、かつて糸子がパッチ屋で教わった「タテタテヨコヨコ」の窓磨き法も伝授。
里香は態度が悪いが、糸子はそれほど気にしていない模様。
もちろん小言は言うが、昔、料理ができない妹達を叱った時のように怒鳴りつけたりしない。糸子の中の善作的な部分は一体どこへ消えてしまったのか不思議。
写真立てを磨いていた里香が、泰蔵の写真に目を留める。
それを見た糸子が「男前やろ」と水を向けるのだが、里香は「別に」と素っ気ない。
「いや! こんな男前そうはおらん! おばあちゃん、後にも先にもこの兄ちゃんしか知らんで」と抗議する糸子に、里香は「私、似てる人、知ってる」と言い出すのである。
それはチームの先輩だという。暴走族の先輩であろうか。
「絶対、泰蔵兄ちゃんの方が男前や」と言う糸子に、「先輩見たことないじゃん」と里香。
「この男前がアンタ、大工方やっちゃってんで」と糸子。「ダイクガタ?」と里香。
「アンタ、大工方も覚えてへんけ? だんじりのごっつい危ない役や。それを黙々とこなしてやな、ほんで、ウチらチビにはごっつい優しいんや。男の中の男やったで」。
写真を見つめる里香。チームの先輩とやらもそういう男なのだろう。
細面、涼しげな目元…泰蔵に似ているというのはもしや里香を背負って帰ってきた長身の青年? 泰蔵は小柄な男だったが、なんとなく面影が似ているような……。
でも、あの川合俊一的な80年代風の髪型は、暴走族系の男子が好む髪型ではないよねえ。別人かねえ。
オノマチ糸子が泰蔵を見る目は「我が町のヒーロー、私も泰蔵兄ちゃんみたいにカッコイイ大工方になりたい」だったが、夏木糸子が泰蔵を語ると色恋が絡んでいるように聞こえるから面白い。豪快なオッサン糸子から色っぽいオバサマ糸子への大変身。
里香の母親の優子が心配して電話をかけてきた。
岸和田を離れて長いせいか、東京弁だけでなく泉州弁までなんとなくぎこちなくなっている。
休学は1年までとか、私が行って説得しようとか、私は放任主義で育ったがグレなかったとか、お母ちゃんより私の方が愛情を注いだとか、埒もないことをグダグダ言うのである。
このドラマに出てくるお母さん達は個性派揃いでこういういわゆる一般的な母親は出てこなかったから新鮮といえば新鮮なのだが、やっぱりウザいもんはウザい。ああ、私が優子の妹や娘じゃなくて良かった。
三林京子がオハラの客として登場。
NHKはなんちゅうシビアなことを……!
三林京子といえば、大阪出身の名女優。
ふんわりと柔らかで自然な泉州弁が耳に心地いい。
貫禄もあり愛敬もあり華やかで、間が良くて気風が良くて…あれ? これ、糸子ですか?
夏木マリが硬筆なら三林京子は毛筆。
それぞれに良いところがあるわけだが、私は三林糸子も見てみたかったな。
毎日、ただ黙々と定規で線を引いている従業員の水野が気になる。
今日は怪我をして帰ってきた里香を軽々と背負って二階に昇っていった。水野も歌舞伎が好きなのかしら。【み】