仲違いしている店主とその姉のメッセージを取り持って、陰で「直に話せばいいのにね」とひそひそ話をする従業員。もし彼女達が店主の心に寄り添っているなら、きっと聞こえよがしに陰口など叩かない。
店の売上げは姉が六割だという。デパートの支配人は初対面の時から優子のファンだ。
そもそも従業員が着ている服。あれは直子ではなくて優子のデザインではないだろうか。
自分の店でありながら直子の孤独は深い。
優子と北村の前で「もう店を辞める」「あんな店知らん」と泣く直子。
オハラ洋装店を優子に譲ると聞いて、糸子のこれまでの苦労を思い出して泣く八重子。
善作から贈られた看板を見上げて泣く糸子。
本日は涙々の15分。
看板を見上げて泣いていた糸子が涙を拭いて家に帰るとまた北村がいる。
優子が直子の店を辞めて岸和田に帰ってきた今こそ店を譲る時。そう覚悟した糸子に、大きな黒目を剥いた優子が「話があんねんけど」と切り出した(この人は感情が高ぶると黒目を剥く癖がある)。
糸子が一顧だにしなかった心斎橋の物件を「お母ちゃんに内緒でとっておいて」と北村に頼んだ直子。
おそらく自分であれこれ調べたのだろう、面積や価格はそこそこだが立地が抜群の物件なのだという。
何かと目障りな姉と一緒に働く東京の店はスッパリ辞めて、心機一転、心斎橋の新しい店で自分だけの力で勝負しようと思っていたのに、あれれ、まさかまたしても優子にオイシイところを持っていかれてしまうの…?
まあ、昨日からの話の流れから考えれば、「話があんねんけど」の後に続く言葉は「あんなお母ちゃん、ウチ心斎橋に店出したいねん」だろう。
隣に座っている北村は優子がオハラの跡取りなのを承知だろうし、以前、心斎橋の物件を薦めて即座に却下された経緯もあるから、糸子に良かれと思って物件を紹介したのに結局余計なことしてしまってこんなはずじゃなかったどうしようまた糸子にしばかれる…とおどおどしている感じ。
どうする優子。どうなる直子。
ところで、周防との不倫の時は近所中の噂になっていたという描写があったけれど、頻繁にやってきては夕飯を食べ泊まっていく北村だってたぶん格好の噂の種になってるよね。
「オハラのオバハンとこにヘンなオッチャン通うてきてるデ」とか。
「一番下の娘はあのオッサンの子ォらしいデ」「へえ、全然似てへんな」とか。
「前の男の方が二枚目やったナ」とか「オバハンかてもう年やもん、そうそう何度もええ男が捕まるかいナ」とかね。
実際、糸子よりもずっとマメに三姉妹の面倒を見てやったり、お客が好きな千代に張り切って食事をこしらえさせたりと、小原家とは家族同様のつきあいだから、ま、いいか。いや、噂になってるかどうかはわかんないけど、ま、いいよね。【み】