映画の感想文「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」

期待ゼロ、どうせたいしたことないでしょとハードル著しく下がりまくりで見た「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」。日高繁明、 矢島信男監督、1960年公開の第二東映製作のSF映画。主演はなんと梅宮辰夫!
もしも第三次世界大戦が起こったら…というタイトル通りのお話。翌年に公開された東宝の「世界大戦争」とほぼ同じモチーフの映画だったので驚いた。反戦平和運動の機運が世界的に盛り上がっていた1960年という時代ならではの作品。
どうせまるでダメな映画だろうとたかをくくって見たところ、もちろんあちこちダメはダメなのだけれどさすがは日本映画全盛期の作品、それなりに見応えがあり、もしも第三次世界大戦が始まったら市井の人々はどうなるんだろうという緊張感に包まれた映画だった。
「各国首脳が集まって話し合う円形の会議場」とか「狭いブースの中の各国のプレスが各国の言語でニュースを伝える」というこの手の映画にありがちなシーンなし、警察も自衛隊の登場もなしという作りも新鮮。まあ、単に予算の関係かもしれないけど(でも避難する人々を演じるエキストラの人数がやたらと多くてそこも高評価!)。
増田順司演じる「流しの殿村」がこの時代の映画にはあまり見かけないキャラで、アクの強い登場人物の中でワタクシ的には唯一愛せる登場人物だった。見かけはしょぼくれているのだが妻をとことん愛する優しい心根は超イケメン。
初代峰不二子の声優で柳生博の奥さん、二階堂有希子がちょい不良の可愛い女子高生役で出演している。【み】

冷戦による核戦争危機の真っ只中つくられたメッセージ性の強い反戦映画。当時週刊新潮に掲載された特集記事を原案にしているという。
東宝が翌年週刊読売の特集記事をもとに制作したのが「世界大戦争」。各社競合してこういう映画をつくる時代だった。世界的にみても59年には「渚にて」がつくられているし、60年の「タイムマシン」でも核戦争が起きるシーンが描かれている。
韓国北朝鮮間で起きた衝突が米ソ間の戦争に拡大し、日本にソ連の核爆弾が投下されるまでを市井の人々の視点から描いている。
どうせプログラムピクチャーだろうと思って見始めたがそれほど馬鹿にした出来ではなかった。
ラジオから伝わる情報だけをたよりに東京から避難する人々の間に高まっていく緊張が描けているし、大量のエキストラ投入で迫力もある。
ただ音楽は哀調を前面に押し出すだけで安っぽい。メロドラマ風。【吉】

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