東京映画の感想文「銀座化粧」

銀座化粧」成瀬巳喜男監督、1951年公開、新東宝。
出演:田中絹代、香川京子、 西久保好汎(子役)、花井蘭子、小杉義男、三島雅夫 ほか。

「銀座化粧」
左:田中絹代 右:香川京子
新東宝, パブリック・ドメイン, via Wikimedia Commons

銀座のバーで働きながら、一人息子を育てている主人公(田中絹代)を中心に、その妹分(香川京子)や元同僚(花井蘭子)などの様々な女の人生を描いた作品である。夜中にお店に花やお土産を売りに来る子供達も登場し、終戦からまだ間もない頃、子供達も働かなければ生活できなかった時代だということが映像を通じて伝わってくる。しかし、母が働きに出ている間、一人で食事したり、自分で布団を敷いて寝たりする幼い子供も、そして主人公も前向きに明るく生きており、家族のため、夜の銀座で働かざる得ない妹分も、まったく純真で屈託なく、何か心を洗われる映画である。

Amazonより

まだ生活があった頃の銀座の東側、木挽町のあたりを成瀬巳喜男が描く。
雪子(田中絹代)が石川京助(堀雄二)を連れて東京案内をする場面で建設中の東京温泉、埋立中の三原橋が見られる貴重な映像資料。

埋め立て中の三原橋。
この直前のシーンで田中絹代が堀雄二に三十間堀の埋め立てについて説明しており、堀雄二の「これが橋の跡ですね」というセリフが入る。

三原橋
三原橋

建設中の東京温泉(現ヒューリック銀座ウォールビル 銀座6-13-16)。
現場の外にはのぞきからくりのようなものがあり、のぞくと完成予想図が見えるようになっていたようだ。

東京温泉外観
東京温泉外観
東京温泉ののぞき窓
東京温泉ののぞき窓(?)
東京温泉の完成予想図(?)
東京温泉の完成予想図(?)

成瀬巳喜男が東京案内のシーンを挟んだのは、ストーリー上田中絹代が年下の堀雄二に好意を抱くきっかけという重要な意味もあるが、長唄の師匠の家の二階にバーの女給が子供と暮らしているような街であった東銀座界隈の変貌を記録する意図もあったのではないか。登場人物を入れずに風景だけを映す場面が多い。【福】

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