東京映画の感想文「女経」

女経」増村保造、市川崑、吉村公三郎監督、1960年。

「女経」と書いて「じょきょう」と読むらしい。
若尾文子主演「耳を噛みたがる女」(増村保造)、山本富士子主演「物を高く売りつける女」(市川崑)、京マチ子主演「恋を忘れていた女」(吉村公三郎)の3本で構成される“悪女”をモチーフに綴るオムニバス。

私のお気に入りは1話目の「耳を噛みたがる女」。
群がる男達を騙して美しく輝く若尾文子が堪能できる上に、1960年頃の隅田川や兜町近辺の風景をカラーで見ることができて言うことなし。キャバレー勤めの文子のドレス姿が抜群にチャーミング。あの艶々しいセクシーダイナマイトな文子に耳なんか噛まれた日には、どんな男もたまらず陥落するというもの。またキャバレーで嫌われ者の文子を唯一かばってやる同僚役の左幸子のキュートな姉御肌加減も忘れがたい。

3話目の「恋を忘れていた女」の撮影は名匠宮川一夫。世界に誇る日本の吊り目ビューティ京マチ子のこってりと麗しい横顔、そして京都の路地や旅館の廊下の濃い陰影が美しい。

2話目の山本富士子・船越英二コンビのアクの強い独特な演技の競演も大映カラー全開かつ時代の気分ではあるが、私は1話目と3話目だけで大満足。
でも、山本富士子の「この商売はね、少しばかり可愛いぐらいじゃダメ。アタシぐらいにずばぬけて美人じゃないと成り立たないんだよ」の台詞には笑った。日本一の美女にそう言われたらぐうの音も出ないや。よっ、ミス日本!

主演の若尾文子、山本富士子、京マチ子のほかにも左幸子、叶順子という当時の大映が誇る濃厚な美人女優総出演に加え、川崎敬三、根上淳、船越英二、川口浩、田宮二郎と大映独特のヌメっとしたイケメン達も勢揃い。この豪華な顔ぶれを見るだけでも大儲けであった。【み】

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