「カーネーション」糸子とあほぼん

2階をサロン風に改装したので、せっかくだから着物のリフォーム教室を開こうと言い出す糸子。
糸子のスケジュールはいっぱいなのにできるわけないでしょ、と孝枝。
「先生に文句を言うなんて…」などとしおらしかったオバハンはもういない。昌子ばりにズケズケ物を言う優秀な秘書に成長している。

結局、糸子は2階でリフォーム教室を開くわけだが、もちろんこれは戦時中に糸子がオハラの一階で開いたお出かけ用モンペ教室の再現である。
糸子を見ると「マァ、センセー!」と大騒ぎ。岸和田の奥さんというのはああも大仰に喋ったり動いたりするものなのだろうか。
台詞の少ない脇役の俳優さんがここぞとばかりに頑張ってしまうのか、演出家が「はい、もっと元気に!」と励ますのか知らないが、そない張り切った人ばかりではないと思うよ。

金糸の生地屋の孫・佐川満男が亡くなり、ガックリと気落ちしているその息子。名前なんだっけ。マモル? ワタル?
心配した呉服屋のぼんが、ええと、名前なんだっけ、アキラ? トオル? ま、いいや、とにかく、呉服屋のぼんが生地屋のぼんを励ましてやってほしいと頼むのである。

リビングでしみじみと酒を酌み交わす三人。
ほろほろと泣く生地屋のぼん。身につまされ貰い泣きする呉服屋のぼん。
なんかうまいこと人生的なモノを説く糸子。

このシーンがやたらと長いので、「呉服屋は怒り肩だなあ」とか「髪の毛真っ黒にしているけど鬢のあたりに少し白髪を入れるとリアルになるのに」とか「生地屋は誰かに似てるなあ、誰だろう、東野幸治?」とか、余計なことばかり考えていた。
「カーネーション」の放送時間は正味約14分、そのうち4分50秒ちょい使っているんだもの。

ここだけの話だが、私はこの「語り合う三人」シーンが苦手。
たとえば「踊る大捜査線」のスリーアミーゴ、「大奥」でお菓子を食べている奥女中(大奥スリーアミーゴスと呼んでいるらしい)、「風林火山」の今川義元・寿桂尼・雪斎……もっともっとありそうだけれど、大体において話題はしんみりするか悪巧みするか愚痴っているかだし、あるいはここまでのあらすじ紹介だったり状況説明だったりだし、みんな座っているので画面に動きがないし、私のような頭の弱い短気な者はついイラっとしてしまうのだ。

5分弱を費やした三人のしみじみシーンの直後、糸子とオハラの従業員と生地屋のぼんがお持たせのカステラを食べつつ、金箔を何かにたとえながら語り合うシーンが続くのである。
今は金箔がハゲたから、ええと、なんだったっけ、まあ、とにかくちょっといい話的な人生訓的な何かがどうかするという話だったと思う。
そない語り合わなくても、と思うわたくし。

カステラを一切れ丸ごとフォークにズブリと刺し、あんぐりと口をあけて食べる孝枝とフミ子。
わざわざシーンのド頭に持ってきて大写しにしたのだから、見る者はそこに意味を探す。
二人とも食事のマナーを知らずに育った人達なのか、育ちのあまりよろしくない人を選りすぐって採用している店なのか、誰かのコネで働くようになった人達かもしれない、もしや二人は姉妹とか従姉妹だったりして? あるいは単に二人とも大喰らいなのか……などと、また余計なことに思いをはせながら見ていたので、金箔云々の話もあっさり右から左へ通り抜けてしまったのだった。

ちなみに浩二もズブリあんぐり派。元金券ショップの真はお行儀よくフォークで一口ずつ切り分けて食べてたよ。【み】

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