ドラマ「大奥〜誕生〜[有功・家光篇]」#5

柔らかい京ことば、優雅な物腰。
堺雅人は頑張っていると思うのだ。

しかし、重たげなまぶたとぬうっとした鼻、いつも含み笑いをしているような口元がどうしても馴染めず、そしてまったく有功には見えず、うっかり油断をすると「大奥」の世界観に入り込めなくなってしまうところを、予想外の大好演の玉栄に助けられている。

一方、まるで原作から抜け出てきたようなルックスと演技。
田中聖が巧い俳優かどうかと問われたら返答しがたいが、間違いなく当代一の玉栄役者、これ以上ないナイスキャスティングと断言できる。
ワタクシ的には全員間違いとしか言いようがない映画版「大奥」のキャストの中で(あゝ佐々木蔵之介の無駄遣い)、唯一完全なる大正解だった和久井映見級の大ヒット。

そして、登場時には「また原作と全然イメージの違う男性キャストが…」とガッカリさせられた捨蔵役の窪田正孝。
春日局が「イケメンじゃイケメンじゃ」と大喜びしているのだけれど、現代劇ならば雰囲気のある二枚目役が似合いそうなのだが、江戸時代の町人のこしらえでは愛敬のある兄ちゃんがせいぜいではないかと思うのだ。
せめて「風貌が似ているので有功の代わりを務めさせるために春日局にスカウトされた」という原作の設定は生かしてほしかったよねえ。

ところが。
いざ大奥に上がってからの捨蔵が抜群にいいのである。
原作漫画とドラマのあわいを絶妙に漂う演技。特にコミカルなシーンがいい。
これも巧いか下手かと言われると即答しにくいが、捨蔵的にはオールオッケー。

そして、家光役の多部ちゃんは非の打ち所なく、稲葉、村瀬が手堅く脇を固め、現在「翔ぶが如く」の再放送を見ているせいか内藤剛志は本物の剣豪のように見え、ワタクシ的に気になってしまう春日局と有功に現実に引き戻されそうになるのを、見事に大奥の世界へ引き戻してくれる。
窪田正孝には100点を、田中聖には300点どーんと差し上げたい。

さて、来週はいよいよ玉栄が家光の側室になる模様。
さらにこの続きとなる映画「大奥〜永遠〜」では、あの可愛い田中聖クンが西田敏行になっちゃうんだぞ。面影一切なし。時の流れおそるべし。チェストいけー!【み】

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