「孝枝の先週までの年齢不詳の格好は今週のキャリアウーマン風のスタイルへの布石だったのね」とか「88歳糸子の首にはラテックス的な何かを貼ったのかな」とか「生粋の岸和田っ子には見えないけれど長年大阪で暮らしている人に見えるようにはなってきた」とかあれこれ思いながら見ていた月曜日。
いつも通っている総合病院で職員達によるオハライトコファッションショーを開きたいという依頼を快諾する糸子。
院長役の辰巳琢郎は大阪住之江生まれ、京都大学出身。
ゆっくり話しても早口になっても柔らかく耳ざわりの良い語り口、さすがの大阪弁である。
いかにも院長という貫禄あり、さばけたところのある若々しさもあり、ナイスキャスティング。
院長が「桜井さんという糸子先生の同級生が入院している」と言い出した。
「名前は…なんやったけなあ」と言う院長に、「私は女学校を中退しているので同級生の顔や名前はわからない」と応える糸子。
用件が済んだので糸子が帰ろうとすると、院長が「あ、奈津さんや!」
「ハッハッハ、思い出しました。桜井奈津さんです」。
土曜の次週予告で奈津が再登場することは知っていたのに、この院長の台詞で涙がじわっと……。
もうあの奈津はいないのに、孤独で気位高く健気で義理人情に厚い美しいあの奈津はもういないとわかっているのに。
帰りしなに糸子は奈津が入院している病室へ。
窓際のベッドで本を読む奈津の端正な横顔。病室の入口でそれを見つめる糸子。
糸子の視線に気づいた奈津がこちらを見て一言。
なんや。なんか用け。
子役時代の奈津、娘時代の奈津、結婚の前の日に安岡で髪を結った奈津、夜逃げの前に糸子を呼び出した奈津。
街娼に身を落としても、安岡美容室で働くようになっても、結婚式のシーンはなくても、いつどんな時でも美しく糸子の前では威丈高で気品のあった奈津の姿が走馬灯のように思い出されて、嗚呼、涙々……。
くうう、私は奈津に滅法弱いんだよう。
老齢の奈津役は江波杏子。
雰囲気も顔立ちも奈津にピッタリだ。
少女時代の高須瑠香から中年までの栗山千明、そして江波杏子へのバトンは、これ以上ないと思われるキャスティング。
そういえば、オノマチ編では明らかになっていなかったと思うのだが、奈津の再婚相手のラサールの役名は「桜井」だった模様。
これまで「カーネーション」の不幸をほぼ一身に背負ってきた奈津なので、おそらくこの入院も重篤な病なのであろう。
糸子が奈津を看取る、あるいは死に目に会えず慟哭する…といった展開が予想されるのだが、どうかできるだけ長く生きながらえてほしい。
ツンデレ奈津様モード全開で、糸子を罵倒しながら懐かしい娘時代の思い出話に興じてほしい。
糸子は先週よりも老けたし、孝枝は多忙なオハライトコ先生の秘書に変身したけれど、浩ちゃんは先週のまま。髪も髭も黒々。
無言で困ったようにニッコリする癒しの人・浩ちゃんに幸あれ。【み】