「カーネーション」1985年の糸子

本日より、三姉妹以外全取っ替え。
店の神棚に柏手を打ち、やけに立派な仏壇を拝み、たくさんの写真立ての中で微笑む親しい人達に挨拶をするのが、今の糸子の朝の日課らしい。
ウィキペディアによると糸子のモデルの小篠綾子さんはクリスチャンだったそうなので、日曜の朝はこれらの日課に加えてミサに出かけなくちゃならないはず。はあ、いそがしいそがし。

さて、ずっと心配していた夏木糸子の泉州弁。
東京出身の女優さんが方言指導を受けて話している、という感じ? そのまんまか。いや、こんなもんでしょう。
仮に関西弁圏の方が合格点を出そうとも、少なくともこれまでの糸子の喋っていた泉州弁とは全然ニュアンスが違う、と言いたい。
でも、ぎこちない東京ことばで話す長女と毎日のように電話で話していればこんな風になってもさほど不自然ではなかろう、とも思えるレベル。

それよりもっと気になるのは、話している時のトーンとモノローグのトーンが別人のように違うこと。
第一声の「おはようございます、年をとりました」を聞くと、先週末の千代さんぐらいの老い方。
でも、いざ台詞になるとテンポは早いし声は高いし、夏木糸子の扮装通りに元気でオシャレなオバハンのしゃべりになる。
先週までのオノマチ糸子の「モノローグしっとり、台詞荒っぽく元気に」を踏襲しただけかもしれないが、若干やり過ぎだと思う。

もうひとつ気になるのが、声の距離である。
狭い家の中、店の中ですぐそばにいる人と話をしているのに、どんだけ遠くから話しかけてるんだという台詞の距離感。
舞台でも活躍している女優さんなので大きな芝居がつい出てしまうのかもしれないし、慣れない泉州弁で台詞のコントロールがまだうまくキマらないのかもしれない。「千と千尋の神隠し」でおなじみの夏木マリ独特の歌うような台詞回しがほんのり混ざるのも気になる。
まあ、登場二日目から文句ばかり言っちゃいかんね。これからに期待だ。

一方、三姉妹。

長女・優子はマダムっぽくなったけれど、先週とそれほど印象変わらず。
なんとなく上の方からしゃべる癖、お母ちゃんに甘える癖もそのまま。
デザイナーとして大成功しているとのこと。重畳なり。

次女・直子はすっかり垢抜けて美しくなってしまい、先週までの猛獣的な魅力は薄れてしまったのが残念。
服飾の学校に入学以来のぎこちない東京弁で話す優子と違い、直子は今でも泉州弁でしゃべっている。
こちらはパリコレで成功をおさめ、世界を飛び回るデザイナーに。

さて、可愛い三女の聡子。
聡子のモデル・コシノミチコに似た雰囲気のヘアスタイルになり、娘時代から大好きだったロンドンにオフィスをかまえている。こちらも見事大成功。
岸和田の夏木糸子に電話をかけている最中にオフィスにネズミが出て、話もそこそこに「ネズミー」「信じられへんー」と大騒ぎするところはやっぱり可愛い。

ところで、毎日熱演を見せてくれている新山千春には申し訳ないが、優子は沢口靖子が適役だったんじゃないかなあとふと思った。
沢口靖子は若く見えるから、高校卒業あたりから演じてもなんとかなったような気がする。
なんといっても泉州弁が使えるのが魅力的。
そして華やかで優子のイメージにも合うし、1985年の「澪つくし」のヒロインの里帰りになるので話題性もあるし……なんて今こんなことを言ってどうなるものでもないけどね。

今週から、オハラ洋装店には山口、水野という二人の従業員が新登場。
山口は恵に代わる経理担当のようだ。優子の心斎橋の店の売上げまで管理している。演じているのはピンクの電話の竹内都子。
水野は大柄な男性。昌子に代わる縫い子+秘書的な役割だろうか。
この二人がどういうキャラクタなのか、そして今後どう活躍するのか楽しみである。

そういえば、遅れてきた積木くずし・優子の次女の里香。
東京の優子の家から岸和田の糸子の家に送り込まれてきたらしい。夜中に家を出てオートバイの後部座席に乗る習慣がある模様。

1985年といえば、DCブランド流行中。
お嬢さん風のオーソドックスなスタイルも流行っていた記憶がある。白い丸襟のブラウスにカーディガンにフレアスカート、みたいな。リバティープリントとか。
「夕焼けニャンニャン」の影響で若い子達にはセーラーズのトレーナーが流行していた頃でもある。

70年代に大流行したツッパリ、ヤンキー的なファッションは、東京では下火になってきた頃だったと思う。
とはいえ、ドラマ「不良少女と呼ばれて」(1984年)、映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)、「湘南爆走族」(1987年)という時代でもあり、ツッパリ、ヤンキー的なるモノに憧れる少女は少なからず存在した時代でもあった。

母が仕事で忙しく寂しい思いをしていたためつい道を誤りかけている里香が豪放磊落な糸子と一緒に暮らしていくうちに真っ当な生活や優しさに目覚めて「婆ちゃんアタシもデザイナーになるよ」的な展開が予想されるわけだが、里香を通して80年代の若者の風俗・流行が見られたら嬉しい。【み】

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