ツンデレ奈津様健在。
少女時代、娘時代、中年時代の回想シーンが入っても全く違和感なし。
ただ、88歳には見えないよねえ。
都会で芸能活動とか客商売をしている人ならともかく、四国の田舎で一人暮らし、その後も岸和田で一人暮らしをしていて現在入院中の88歳の女性にしては若過ぎるルックス。
逆に言えば、糸子もこの程度の老け方でOKな気はする。
特殊メイクで糸子の老齢を表現するのなら、脇役やエキストラのご老人役の皆さんにも同じように目元と首元にあのメイクを施せばバランスがとれたかもしれない。
糸子は、奈津が四国に引っ越したことを八重子から聞いていた。
そうや、主人の田舎にな。けど主人もとうに亡うなって、広い家の掃除ばっかししてんのしんどなったさかい、こっち帰ってきたんや。
ラサール、何者かもわからないまま、既に亡くなっていた。
劇中で彼のファーストネームが明かされることももうないのだろうなあ。
「いつ?」と奈津が岸和田にいつ戻ってきたかを問う糸子。
10……11年前か。
「こっち帰ってきたんや」と「11年前か」の言い方が絶妙に奈津。
中年まで奈津を演じた栗山千明の台詞回しが耳に甦る。
かといって、無理に若い奈津のモノマネをしている風ではなくて、自然と奈津。さりげなく奈津。
そんな前から帰っていたのなら「なんで連絡せえへんねん」と糸子。
ヘッ…なんでせなあかんねん。
さすがだ奈津。やっぱりこうでなくちゃね。
自分からは何も話してくれない奈津に業を煮やした糸子が、「どこが悪いんよ?」「なんで入院してんよ?」と詰め寄ると、奈津はジロリと糸子の顔を一瞥して一言。
関係ないやろ。
街娼から足を洗って安岡美容室に就職できたのは糸子のおかげだし、実家の借金の保証人にもなって貰っていたし、幼なじみだし共通の知り合いも多いし……関係ないわけがないのだ。
まあ、奈津は昔からこういう物言いをする人なので黙って察してくれればいいのだけれど、糸子もやっぱり糸子のままである。
思うように奈津と会話ができないことに腹をたてて、ふくれっ面で横目で奈津を睨むのだ(目元の皺のメイクのせいか黒目だけギョロリと横に動いて少し怖い)。
あんた、変わらんなあ。
奈津にこう言われて憤慨した糸子、「こっちの台詞や」と怒りにまかせて立ち上がり、そのまま去っていく。
字幕では「こっちの台詞や、フン」と表示されていたが、「フン」と鼻を鳴らすのではなくて、私の耳には「こっちの台詞や、チッ」と弱々しく舌打ちをしたように聞こえた。
舌打ちは糸子の得意技。もし舌打ちならばもっと景気良く打っていただきたい。
BKからの第三の刺客登場。その名も山田スミ子。
三林京子も糸子っぽかったけれど、山田スミ子もいかにも糸子だ。
小篠綾子さんスタイルのショートカットで杖をつきながら歩く姿、従業員や取材相手にポンポン物を言う姿、夜、一人きりの家で寂しさを感じている姿……容易に想像できる。
二宮星から尾野真千子、尾野真千子から山田スミ子の流れはアリだよね。【み】