映画の中で見つけた謎の「大原二重橋」

このところ、「映像の中の渋谷」という当ブログの企画のため渋谷がロケ地となっている映画を見ている。しかし映画のロケ地が全て明らかになっているわけではないので、渋谷が出ていそうな映画を手当たり次第に見ていくことになる。

そんな中で見た映画が「喜劇 東京の田舎っぺ」(1967年/千野皓司監督/日活)だ。主演の東京ぼん太があまり好きではないので、こんな目的でもなければまず見ることのなかった映画だが、思わぬ収穫があった。

東京ぼん太演じる女性下着のセールスマン秋津圭太がライバル社のセールスマン(南利明)と売上を競うシーンで、圭太が橋の下に通された通路を通る。橋の下に通路がある場所はなかなか見かけない。

映画「喜劇 東京の田舎っぺ」より

橋の下から階段を上がると橋の欄干には「 横断は此の橋の下を渡りましょう」と書いてあり、さらに立札には「大原二重橋」とある。

映画「喜劇 東京の田舎っぺ」より
映画「喜劇 東京の田舎っぺ」より

「大原二重橋」でサーチしても該当する橋は見つからない。立札の「大原西町会」でサーチしたところ世田谷区大原がヒットした。さらに地図を見ると玉川上水緑道を環七が越えるところに「大原橋」がある。ストリートビューで確認すると映画に映っている橋と同じ形だ。これが「大原二重橋」だったのだ。

Googleストリートビューより

ではなぜ「二重」なのか。
不鮮明な立札の文字を読み解くと、
「大原二重橋 …号線から交通事…安全に横断出来る…橋です…感謝して渡… 大原西町会長」と読める。「横断は此の橋の下を渡りましょう」というメッセージと考え合わせると。環七を安全に横断するために橋の下に通路をつくるということになったようなのだ。橋と通路が重なっているから二重橋と呼んだのだろう。

この二重橋は現在どうなったか。
玉川上水が緑道化した今、橋の下の通路も埋まったのだろうと思ったがさにあらず。ストリートビューで確認したところ、「玉川上水緑道環七横断地下道」としてかつての二重橋の経路が活用されていたのだ。

Googleストリートビューより

今地下道として使われている場所のもとの姿が映画の中に記録されていたこと、昔地元が行った工夫が今姿を変えて街の中に残っていることに感銘をうけた。【吉】

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