「地平線がぎらぎらっ」土井通芳監督、1961年。
刑務所で同房のカポネ(多々良純)、教授(天知茂)、バーテン(沖竜次)、色キチ(大辻三郎)、海坊主(晴海勇三)の5人が、後から入ってきた生意気な若造マイト(ジェリー藤尾)と一緒に彼が某所に隠したという大量のダイヤモンド目当てに脱獄するジャパニーズ・プリズンブレイク。
モダンでドライで陰鬱なクライムコメディ。泥棒チームのオシャレなコメディ映画「黄金の七人」よりも4年早い。
といってもシャレたかけひきや頭脳戦も痛快さもない。男同士の友情とか美女をめぐる三角関係も一切なし。皆、粗暴で欲深い犯罪者ばかりなので、自分の分け前を増やしたくて衝動的に仲間を殺してしまうし目の前に若い女性がいれば後先考えずに尻を追いかけてしまう。ひたすらカッコ悪い珍道中。
ちなみに「色キチ」というニックネームは刑務所に入った罪状が婦女暴行だったから。ヒドい。
色キチを演じる大辻三郎は香港のコメディスターのような独特な風貌。一度見たら忘れられない顔。
「グロンサン」の宣伝カーを奪い、ジェリー藤尾しか知らないダイヤモンドの隠し場所へ向かう一行。リーダー争いがあったり、殺人があったり、宣伝カーに集まってきた子供達と童謡「夕日」を合唱したり、途中で襲った女の子がジェリー藤尾に犯されたと思い込んでずるずるついてきたり、ジェリー藤尾がマムシに噛まれてしまったり、あれこれドタバタがあって、結局最後まで残ったのは多々良純と天知茂と瀕死のジェリー藤尾の3人。
ジェリー藤尾の指示通り、ダイヤモンドが埋まっているという某所の柿の木までたどりついたが、欲をかいた多々良純が天知茂を銃撃。そして多々良純がダイヤモンドが埋まっている正確な場所を尋ねると「ダイヤか、あれは嘘だ…」と言って事切れるジェリー藤尾。怒った多々良純がジェリー藤尾の頭を石で潰そうとした途端、倒れていた天知茂に撃たれて死亡。柿の木の下に3人の死体。寂寥たるエンディング。
現代を描く映画で確実に時代感が出てしまうのは自家用車と音楽。そして女性の眉の形と口紅の色。
この作品はカット割りやストーリー、台詞回しがモダンなのであまり古めかしさは感じないが、BGMがジャズ調だったり泥棒の一人が浪花節を口ずさんだり宣伝カーの形あたりに60年代の匂いが出ている。というか、試供品や風船を配る宣伝カーって今でもまだあるのかしらん。
ところで、昔の映画でジェリー藤尾を見かけるたび思うことなのだが、若い頃のジェリーで実写版「ルパン三世」が見たい。陽気で機敏で饒舌で色気があってミステリアス。
五エ門役は原作のような長髪ではなくてちょんまげ頭の宮口精二がいい。峰不二子役は若尾文子がいいか京マチ子がいいか逡巡中。南田洋子も捨て難いのよね。【み】