あっぱれ冨永愛! NHKよしなが大奥第1話

好きな漫画や小説の映像化は嬉しい反面、不安もいっぱいだ。
私の大好きな漫画、よしながふみの「大奥」は、これまで2010年の映画版、2012年のTBS連続ドラマ版、2012年のTBSドラマ版と3度映像化されているが、いずれも良いところあり気に入らないところあり。
とはいえ、ドラマを見れば文句ばかり言っているワタクシ的にはおおむね満足の出来だった。

さて、この男女逆転大奥をなんとNHKが連続ドラマ化するという。
潤沢な資金と大河ドラマをはじめとする時代劇のノウハウが詰まっている神南のスタジオで作られる「大奥」は一体どんなドラマになるのか。不安と期待でドキドキの1月10日。

予告編を見て冨永愛の吉宗っぷりに満足していたのだが、本編を見て「これはもう空前絶後の吉宗が登場した!」と心の扇子をズバっと開いて「あっぱれあっぱれ」と大喜びの私。
原作の吉宗には似ていないのだけれど、姿良し声良し所作良し着こなし良しの二重丸どころか四重丸の吉宗だ。
しいて難を言うなら若干線が細いというかシャレオツ吉宗過ぎる気がしないでもないが(原作の吉宗は地味で質実剛健)、NHKナイスキャスティング。あっぱれ冨永愛。あっぱれNHK。

特に声を張るセリフが良い。
①時の将軍吉宗を「田舎者」と見下している間部詮房に対し、「聞こえなんだか? 下がりゃ!」と怒鳴りつけるシーン。
②御鈴廊下を歩いている時に着慣れぬ掻取かいどりに足を取られつまずいた時に聞こえた笑い声の主が名乗り出なかったことに怒って、「今、笑うたのは誰じゃ!」と怒鳴るシーン。

一方、声を抑えた台詞回しは若干聞き取りづらい。でも、字幕もあるわけだしニュアンス的には素晴らしい演技だったし、上様、これ以上は何も望みませぬ。
あ、そうそう、紀州時代のシーンで馬を駆る姿も格好良かったよね。暴れん坊将軍!

2010年映画版で加納久通を演じた和久井映見が風貌も雰囲気もあまりにも原作のイメージにピッタリで彼女以外の久通は考えられなかったのだけれど、 今回の貫地谷しほりも大好演だ。原作の久通によく似ている。
藤波役の片岡愛之助のトゥーマッチな歌舞伎感も悪くない。映画版の佐々木蔵之介よりも貫禄と腹黒さが感じられた点も良し。
杉下役の風間俊介も巧かった。演技の良さだけなら映画版の阿部サダヲよりまさっていたと思うのだが、風間は小柄で可愛らしい顔立ちなので大奥に仕えて10年の古参のパイセン33歳には見えないのが惜しかった(ウィキペディアによると風間俊介パイセン御年39歳だって。なんとまあ若々しい!)。

もちろん、若いタレント達の台詞回しや所作、NHKにしては意外と安っぽいセットなど、気になるところはちょいちょいあるし、1時間という短い尺で吉宗編を描いてしまったため食い足りない感は否めないが(呉服の間の針探しのシーンがなかったし!)、冨永愛という最高の吉宗役者を得たことによって、漫画のドラマ化としては大成功と言って良いだろう。

でもね、ドラマは良かったけど最後にボーカル入りのエンディング曲が流れるのは興ざめだった。
曲がかかる直前の冨永愛の「吉宗、心からの願いである」というセリフが抜群に格好良かったからね。その後、ポップな曲が流れる中、久通VS藤波戦の見事なシーンが繰り広げられたわけだが、何かもったいない。いや、歌は要らなかったなあ。こういう演出は民放に任せてNHKはオーソドックスに徹したほうが良いと思うのよ。

1月17日に放送される第2回は「三代将軍家光・万里小路有功編」らしい。
TBSドラマ編で田中聖が漫画から抜け出してきたかのような素晴らしい玉栄を演じていたので、NHK版の玉栄が気になるところ。多部未華子の上様も良かったよねえ。今度の上様は誰が演じるのかな(あえて次回予告を見なかったよ!)。次週も楽しみ楽しみ(そして不安)。【み】

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