昨今には珍しい端正な時代劇! NHKよしなが大奥第2話

不安と期待で胸高まるNHKドラマ「大奥」第二話(2023年1月18日/NHK総合)。
今週は「三代将軍徳川家光・万里小路有功編」である。

大奥の出来事を記録した「没日録」を読みたいという八代将軍吉宗(冨永愛)と右筆村瀬正資(石橋蓮司)との対話からスタート。今週も凛々しい富永吉宗が見られて重畳重畳。
村瀬によれば、この「没日録」は三代将軍家光の乳母めのと春日局に命じられて書き始めたもの。ということでドラマは家光の時代にさかのぼる。

若い男性だけが罹るという謎の死病「赤面疱瘡」(原作漫画にある架空の病気)で三代将軍家光が命を落とす。すでに成人しているが家光は体が弱いせいで罹ったのだろうと御匙が言う。
家光の乳母めのとの春日局は取り乱して号泣。しかしすぐに「上様は死んではいない」と言い出す。
現在、赤面疱瘡は関東・奥羽において猛威をふるっており、若い男性が次々と死んでいる。しかし、西国では赤面疱瘡が流行していない。もしも徳川家が赤面疱瘡にやられたと知れ渡ったら戦乱の世に逆戻りになってしまう…というのが春日局の主張。

そこで彼女が考えた作戦がこれだ。

  1. 今、赤面疱瘡で死んだのは上様側近の稲葉正勝ということにする
  2. 上様は赤面疱瘡で顔にアバタが出来たので今後は頭巾をかぶって過ごすと発表
  3. 対外的には頭巾をかぶった稲葉正勝が上様として振る舞う
  4. その一方、将軍家光が市中の女性に産ませた娘を引き取り、その娘に男児を産ませて次の将軍とする
  5. 機を見計らって上様の娘には死んで貰う
  6. 上様の娘が産んだ男児を次の将軍に立てる

そして、“種馬”として西国から江戸に呼ばれたのが、公家の子で出家して僧侶になった万里小路までのこうじ有功ありこと
「還俗して上様に仕えよ」と春日局に命じられたが、事情を何も知らない有功は驚いてきっぱり断る。
しかしおつきの僧の明慧をその場で斬り殺され、もし従わなければもうひとりのおつきの僧の玉栄も殺すと脅されたため、泣く泣く還俗して将軍に仕えることになる……。

春日局役は斉藤由貴
なんというか一流デパートのベテラン店員みたいな春日局。風貌は立派だし品格はあるのだが発声が現代的。
だが目のくぼみ方も額や首の皺の寄り方も美しく、これまで映画やドラマで演じた十朱幸代、松尾嘉代、渡辺美佐子、大原麗子、松下由樹らに決して引けを取らない春日局だと思う。
明慧惨殺や「大奥から出る方法は死して魂になること」と言い放つなど、冷酷非道なシーンはかなり良い。

有功役の福士蒼汰は見事な美青年だが、原作のイメージとはちと違う(とはいえ、2012年TBSドラマ版の堺雅人よりは原作寄りだと思う)。
玉栄は2012年TBSドラマ版の田中聖が完璧すぎて誰が演じてもワタクシ的には物足りないのだが、今回の奥智哉はなかなかの出来。原作の玉栄の鼻っ柱が強いが愛嬌のある感じがよく再現されている。
春日局の実子であり家光の死後将軍の影武者となる稲葉正勝役の眞島秀和が渋くて儲け役。ウィキペディアによると母の春日局を演じる斉藤由貴とは10歳しか違わないらしい。道理で貫禄十分なはずだ。
若き日の村瀬正資を演じる岡山天音のいつも笑っているような顔と癖のある台詞回しはなかなか味があっていい感じ。

将軍に侍る中臈3人組に玉栄が襲われるシーンでは、原作にあった直接的なレイプ描写なし(有功の部屋に戻った時に慌てて乱れた着衣を直す仕草をする程度だったよね?)。
中臈3人組の中にジャンポケ斉藤みたいな奴がいる(たぶん角南役の田中幸太朗)。

今週も面白かった。
だけど……やっぱりエンディングに歌がかかるのが邪魔。
女子家光(堀田真由)が有功に心を開いたことをあらわす子猫放り投げシーンにポップな歌をかぶせないでおくれ。この後、原作ではこの子猫は女子家光の心の傷に触れるという大事なシーンでもあるのに。

無駄にコミカルな演出や芝居を壊す大袈裟な演技がなく、昨今では珍しくもありがたい端正な時代劇ドラマ(返す返すもエンディングソングが惜しい!)。よしながふみの原作が空前絶後の大傑作だから、余計な小細工をせずできるだけそのままドラマ化してくれたら嬉しい。
次週の「三代将軍徳川家光×万里小路有功編」の続きが楽しみ!【み】

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