さらば女子家光、綱吉編はゴリさんに期待! NHKよしなが大奥第5話

NHK「大奥」第5話。今回は「三代将軍徳川家光・万里小路有功編」よりスタート。
有功(福士蒼汰)に「頼む」と平伏され、いよいよ玉栄(奥智哉)が上様のおそばに上がることになった。

有功

そなたはかつて『将軍の父となる』と予言されたのであろう。

おお、有功、突拍子もないエピソードをよく覚えていたな。

有功

そなたの子がお世継ぎやったら、何の掛け値もなく大事やと思える気がするんや。それこそ我が子のごとく。

よその子には心動かずとも、自分の姪っ子や親友の子は可愛いみたいな感じか。

早速、家光(堀田真由)と褥を共にすることになった玉栄。
このふたりはいつも口喧嘩している間柄なので、布団の上でも煽ったり言い返したりで意外と仲よし。

そしてまた出た。「たたっ斬るぞ」BY 家光。
前回気になって仕方なかった「たたっ斬るぞ」という言い回し、男性の将軍でもおかしいと思うのに、市井で優しい母に大事に育てられた女性が使うとは思えないのだ。
まあ、「市井で優しい母に大事に育てられた」は原作だけの設定で、もしかしたらこのドラマの家光はガラッパチな母に育てられ口が悪い設定なのかもしれないが、武家に育ち後に将軍の乳母になった女も京都の大きなお寺のお坊様だった男も誰も彼もが「たたっ斬る」と言うのはどうも腑に落ちない。いつか制作陣が「あれ? 何か変かも?」と思ってくれることを祈るばかり。

朝を迎え、静かに語り合う家光と有功。
玉栄と褥を共にしたことを「そなたは本当に良かったのか」と問う家光に、「上様をお支えすると春日様にお約束しましたので」と微笑む有功。

可愛がっている子分を元カノにあてがって、果たしてそれが「お支えする」ことになるのだろうか。
ともあれ、有功が大音声だいおんじょうで般若心経を唱えるシーンがなかったので、家光が自分の知らない男と褥を共にした夜よりは気が楽だったようだ。だが、自分の心の問題なのにここで春日局の遺言を持ち出すのはいかがなものか有功。

さて、前週よりいよいよ本物の将軍となり政治に目覚めた家光の次の一手は「大奥の男100人解雇」。
クビにした男達に退職金は出さないが、新たな役目を与えるという。

家光が命じるそのお役目とは、なんと「吉原で種付け」。
「遊郭に勤めて妊娠したい女性客達と性交渉をする」という、大奥の優雅で贅沢な暮らしに慣れた者達にとってはかなり厳しい仕事。そもそも大奥勤めをしているのは武家の子や裕福な商家の子だからこれは本当に気の毒な話だ。罪人でもないのに、この時期に大奥勤めしていたばかりにこんな目にあうなんて運が悪すぎる。

この時代、若い男性ばかりが罹る架空の死の病「赤面疱瘡」が大流行中なので、とにかく男が足りない(という設定)。跡継ぎがいないと家系が途絶えてしまうから、夫や恋人がいない女は近所の健康な男に頼んで性交渉を行うか、遊郭で男娼を買って妊娠するしかない。

しかし、吉原の値段がバカ高いので、貧しい女はおいそれと男娼を買えない(「種付け」ができない)。
それが前回、家光が市中をお忍びで見回った時に見た吉原の風景だった。
そこで家光が考えた施策は、大奥を解雇した100人の男達を使って「吉原が安全にして健やかに子を得られる場と生まれ変わらせる」というもの。
このような過酷かつ効率の良いアイデアを思いついちゃう原作者よしながふみは天才としか言いようがない。

それにしても、だ。
童顔の可愛らしい堀田真由が「お前がわしに抱かれるのだ」とか「種付け」とかきわどいセリフを連発する超非常事態。昭和時代にテレビや映画で大流行した「大奥」のドラマのイメージで、美しい着物に身を包んだお局達が妍を競う華やかさを期待して見ている高齢の視聴者達が驚いてひっくり返っていないか心配ではある。
せめて、途中参加の原作漫画を読まない層の視聴者向けに、毎回冒頭に「赤面疱瘡」「男女逆転」の説明を入れてあげてほしい。

有功のたてた茶を服む稲葉正勝(眞島秀和)。
名実共に将軍となった家光。これまで家光の影武者を務めていた稲葉は自分は用なしだと言う。「わたくしもで」と応える有功。

そこへやってきたのが村瀬正資(若年期:岡山天音)。
「上様が今宵おそばに上がるようにと」。
村瀬の伝言を聞き、少年のような面持ちでドキドキの有功(家光は徐々にオトナ顔メイクになっているのに、有功は全然老けないのだ)。

有功がお褥で待機していると、バタバタと駆け寄り抱きつく家光。

家光

有功、やっとじゃ! 子ができた。しばし、もうあの者らを抱かずとも良い。やっと、そなたと…

しかし、有功はがばっと平伏してこう言うのだった。

有功

上様、どうか私にお暇をいただけませんでしょうか。

むう、今週もちょくちょく飛び出す現代的な言い回しに閉口していたのだが、さすがにコレはどうなのよ。
このシーンの原作のセリフはこう。

上様
どうかお願いでござります
わたくしめにどうかおしとねをご辞退させて下さりませ…!!

「大奥」4巻より

京生まれであることや、家格、育ちの良さなどがこのセリフで伝わる。
こういうところはおろそかにしてはいけないと思うのだが、テレビを作る人達は「わかりやすさ」や「言いやすさ」を優先してしまうのだろうか。

お褥辞退を申し出た有功に、魂の抜けたような声で「そうか、かように汚れた体は抱きとうないと」と家光。
もちろん有功は即座に「違います!」と否定する。
この人はいつでも誰にでもまず否定しちゃうタイプ。まあ、これを肯定しちゃったらホント最悪だけどな!

曰く「いつ変わるともしれない上様の心にすがって生きていくのがつらい」。
家光と相思相愛という立場に加え、「この世が終わるまで上様を支えてほしい」という春日局のお墨付きを貰っているわけで、もう有功は怖いものなしの言いたい放題だ。

いつ選ばれるかわからず(あるいは一生選ばれることがないかもしれず)毎日ただひたすら待っているだけだったり、好きでもない女将軍と性交渉を持たねばならなかったりする他の御中臈が聞いたら腰を抜かしそうな有功の言葉。
原作の凛とした圧倒的美男子の有功が京ことば混じりに言う分には気にならなかったのだが、可愛らしくて親しみやすい福士蒼汰が現代的な標準語で言うと「あら、これってちょっと有功のワガママなんじゃないの?」と気づいてしまうのだった。

この万里小路有功と「綱吉編」に出てくる右衛門佐という、読者の理想を煮詰めて濾して抽出したような超絶美男子キャラはどうやっても実写化は難しいのではなかろうか。
たとえば日本映画全盛期の綺羅星の如きスター達の顔をあれこれ思い浮かべてみる。
長谷川一夫? 上原謙? 三船敏郎? 市川雷蔵? 津川雅彦? 岡田真澄? ……いやいや、しっくりこない(でも雷蔵はアリかも!)。

有功と右衛門佐に生身の人間が扮するとしたら、女が男を演じたり老人が少女を演じたり人が馬を演じたりする、役柄を「記号」「約束事」として観客が演者と幻想を共有できる「宝塚」や「歌舞伎」のような舞台作品じゃないと無理だと思う。
私は片岡仁左衛門丈の有功と坂東玉三郎丈の家光が抱き合って悲恋に泣く姿が見たい。

お褥辞退の願いが通った有功は、新たに設けられた大奥を統べる役目「大奥総取締」に任命される。
家光に部屋に招き入れられ、「お万好み」の流水紋の裃と何故かつんつるてんの袴を身にまとい就任の挨拶を述べる有功改メお万の方。なんでよ! お万の方といえば長袴でしょ!

「わたくしの恥ばかりの人生、皆もよく知っておることと思う」から始まり、原作にはないセリフが延々と続く。
「え、何? 恥って何? それがし聞いてないよー」という大奥に入って日が浅い人の心の声が聞こえるようだ。ベテランの人に後でこっそり教えてもらえるといいね。

大演説の後、「皆、受け入れてくれるか?」と問いかける有功。
すかさず「はい! よろしゅうお頼み申し上げます!」と元気よく返事するのは有功の秘蔵っ子お玉の方。
それを聞いた一同は姿勢を正し、畳に手をつき平伏するのだった。

きっと素顔はハンサムな俳優さん達なのだろうが、御中臈のカツラをかぶると皆どういうわけかクリクリとした庶民的な顔になってしまっているのが不思議。
あと人数少なすぎない? 原作ではこれから時代が下っていくと「大奥美男三千人」と揶揄されるほどのイケメン集団の大所帯になるのだが、今の時点ではざっと見たところ「大奥クリクリ君二十人」という感じである。

と、ここで富永吉宗公登場!
今日も格好いいぞ!

いつも薄暗い部屋で座ったまま八代将軍吉宗(冨永愛)と話している村瀬正資(老年期:石橋蓮司)だが、今日は大奥の中を歩きながら「家光と有功は大奥の男達にそれぞれの役目を与えた」と説明する。
毎週絵変わりしないから今回はこういうスタイルにしてみたのかもしれないが、原作の村瀬はシワシワに縮んだ97歳のお爺ちゃんなのだ。吉宗と喋りながら畳の上や廊下を元気にスイスイ歩いているのは違和感がある。
細かいことだけど、家光が菊見の宴で飲んでいたのが透明な清酒に見えたのもちょっと気になった。

お楽の方とお玉の方との間にひとりずつ姫をもうけ、家光は27歳の若さで身罷ってしまった。
お玉の方は落飾して再び僧形になるが、有功は剃髪せず大奥総取締のお役目を続けることになる。

そして、後半は五代将軍綱吉の時代へ進む。
芝居好きの町人役で昔風のメガネをかけた阿佐ヶ谷姉妹が登場し、綱吉にまつわるあれやこれやの噂をふたりの会話と映像でざっと説明する。
でもこれはトゥーマッチだと思うのよ。私は姉妹の大ファンだけれどちょっとがっかりした。要らない。こういう“オモシロ演出”は要らない。

綱吉編となり、新キャラ大量投入。
綱吉に仲里依紗、その父で元お玉の方の桂昌院に竜雷太、原作ではお万の方の面影があると評される右衛門佐に山本耕史、綱吉の側近柳沢吉保に倉科カナ、お伝の方に徳重聡、阿久里に吉沢悠、綱吉の御台所鷹司信平に本多力。
大変申し訳ないのだけれど全員納得のいかないキャスティング。びっくりするほど私のイメージからかけ離れた残念キャスティング。この顔ぶれでは「綱吉編」はだいぶ苦しい思いをする予感。
エンディングソング復活。これもまた残念。「綱吉編」は桂昌院ゴリさんに期待をかける。【み】

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