昨年末からちょっとずつ見て2年越しでようやく視聴完了した「志村けんとドリフの大爆笑物語」(2021年12月27日/フジテレビ)。志村けんがドリフのボウヤとして採用され脱退する荒井注の代わりにドリフに入って人気者になるまでを描いたドラマだ。
「8時だョ!全員集合全員集合」や「ドリフ大爆笑」のコントやコーナーをふんだんに再現していて楽しかった。「ドリフ大爆笑」のコントが多めだったのはフジテレビ製作のドラマだからかもしれない。
なんといっても、遠藤憲一と勝地涼をキャスティングした人は大天才!
遠藤憲一はいかりや長介に顔は全然似ていないのだけれど、発声や表情、姿、仕草をよく似せているので、非常にしっくりきた。
ドリフにおいていかりやの役割は「大人」である。他のメンバーが演じるやんちゃな「子ども」達に対し、時には深い愛情を持って接し、また時には容赦なくしごき抜き叱り飛ばす。
たとえいかりやとメンバー達との年の差がほとんど離れていなくとも(荒井注にいたっては3歳年上)、この関係性は崩れない。
遠藤憲一はいかりやの特徴である「大人」の性根を身にまとい、若い出演者の多いこのドラマをきっちり牽引していた。
勝地涼は姿勢や目の使い方がカトちゃんそっくり。
「池田屋の階段落ち」コントの再現シーンはカトちゃんそのもの! 見た目も発声も間も完璧だった。
志村と交代してドリフを脱退してしまうので登場シーンは少なかったのだが、表情や歌い方がよく似ていた荒井注役は意外や金田明夫。こちらも遠藤憲一同様ルックスは似ていないのに、演技と性根でそれをカバーしたパターン。
一方、体操選手出身であるとか学習院大学政治経済学部卒という当時のお笑いタレントとしては破格のアビリティ持ちの雰囲気がまるで再現できていない仲本工事、ぽっちゃりというよりはデカくて体格良すぎる高木ブーはミスキャストだろう。
「ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語〜」(フジテレビ)とか「トットてれび」(NHK)とか「植木等とのぼせもん」(NHK)とか、この手の昭和のテレビ再現系ドラマはたいていひとりかふたり絶妙なそっくり具合の俳優が登場してわくわくするものだが、どのドラマも全員しっくりくる俳優を揃えるのは困難な模様。
昭和のテレビ界はナベプロ一強なので、今も渡辺プロダクション=ワタナベエンターテインメントが存在している以上ワタナベ絡みのタレントを起用せざるをえない的なオトナの事情もあるのではないかと推測する。
そういえば、「ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語〜」で谷啓を演じた我が家の杉山裕之はこの役を演じるためにワタナベエンターテインメントに所属したんじゃないかと思うほどのしっくり感だった。
だが、「トットてれび」では谷啓ではなくハナ肇を演じていたので心底がっかりした。
しかも谷啓役は我が家の谷田部俊だ。いやなんでよ。谷田部のどのあたりが谷啓なのよ! すぐ隣に谷啓役者の最高峰である杉山がいるというのに!
そして植木等役に坪倉ってテキトーすぎるでしょ。我が家の3人でクレージーキャッツをお手軽に割り振るのはやめてほしいよ。
雑なキャスティングに怒ったついでにクレージーキャッツを演じた人達を表にしてみた。
ハナ肇 | 植木等 | 谷啓 | 犬塚弘 | 安田伸 | 石橋エータロー | 桜井センリ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
シャボン玉が消えた日 | 渡辺正行 | 田口トモロヲ | 小倉久寛 | 嶋田久作 | 中村誠一 | 花王おさむ | 小林のり一 |
ザ・ヒットパレード | 阿南健治 | 陣内孝則 | 杉山裕之 | 大滝裕一 | 谷田部俊 | 坪倉由幸 | 斉藤優 |
トットてれび | 杉山裕之 | 坪倉由幸 | 谷田部俊 | なし | なし | なし | なし |
植木等とのぼせもん | 山内圭哉 | 山本耕史 | 浜野謙太 | 深水元基 | 西村ヒロチョ | パーマ大佐 | 小畑貴裕 |
ざっと見た感じ、「何故この人が?」というキャスティングあり「わかる」というキャスティングもあり。大体において「ハナ肇=貫禄・恰幅の良さ、植木等=華、谷啓=丸顔、犬塚弘=大柄、桜井センリ=小柄」という観点から選ばれている感じがする。犬塚弘より桜井センリの背が高かったりしたらさすがにヘンだものね。
また、「植木等とのぼせもん」の浜野謙太(トロンボーン)、西村ヒロチョ(サックス)、パーマ大佐(ピアノ)、小畑貴裕(ピアノ)はそれぞれの担当楽器が演奏できるキャスティング。「シャボン玉が消えた日」の中村誠一(サックス)もそのパターンだ。
まあ、演技さえ良ければ別にご本人に似ていなくたってかまわないのだが、もしも似ていたらより面白くなると思うのだ。いつの日か、ご本人そっくりで担当楽器も演奏でき演技も達者な俳優で全員揃えたクレージードラマ、ドリフドラマが登場するのを楽しみにしている。【み】