面白い番組はあっという間に消えてしまい、また面白い番組は滅多にこの世に姿を現さず、油断すると見逃してしまう昨今。2016年春の新番組で気になっていたのが「万年B組ヒムケン先生」(TBS)と「バナナ ゼロミュージック」(NHK総合)だった。
「バナナ ゼロミュージック」の方はさすがNHKという出来。
ローリーと巻上公一の贅沢すぎる使い方とか、錚々たるミュージシャンを集めておいてシロウトのバナナマンにハンドマイクを持たせて真ん中で歌わせる演出とか、「みんなで桜ソングを作りましょう」というもっさりした企画など、良きにつけ悪しきにつけNHKらしいバラエティだが、今テレビで一番信頼のおけるMCの一人である設楽統が仕切っているおかげでそれなりに楽しい番組だった。
さて、「万年B組ヒムケン先生」第1回(2016年4月26日深夜/TBS)である。
「ヒムケン先生」がいまどきの若者とガッツリ向き合います!!
TBS公式ページより
芸能界でも<B組>と自負するバナナマン・日村、バイきんぐ・小峠、三四郎・小宮がそれぞれ先生となり、“ちょっと応援せざるを得ないイマドキの<B組な>若者たち”とガッツリ向き合う。ロケで見つけた超個性的なB組生徒たちに先生もたじたじ! B組な先生と生徒の化学反応に爆笑間違いなし!
日々の生活が充実している若者、しっかりとした夢を持っている若者は「A組」、そうでない若者が「B組」。
日村の愛称「ヒムケン」を冠に「3年B組金八先生」をモジったタイトル。レギュラーの3人は「金八先生」の教師達のような衣装である。
メインMCのバナナマンの日村勇紀に加え、小峠英二(バイきんぐ)と小宮浩信(三四郎)という今が旬のバラエティ巧者を配置。普段は仕切りを設楽にお任せの日村がメインで大丈夫なんだろうか、でもしっかり者の小峠がいるから問題ないし、そういえばこの3人がしっかり絡んでいる印象があまりないんだけど…などなど否応なしに盛り上がる不安と期待感。
初回の企画は、秋葉原の路上でシャドーボクシングならぬシャドー守備練習をしている謎の青年「ケブ」君(17歳)を日村が密着レポートするというもの。
彼は半年前に水島新司の漫画「あぶさん」を読んで衝撃を受け、プロ野球選手になりたいと思ったのだという。
お金がないので丸めたティッシュをテープでぐるぐる巻きにして作ったボールや金属バット風にペイントしたプラスチック製バットを使って一人で練習をしている。練習着も白いTシャツに自分で南海ホークスのユニフォームの柄を描いたもの。もちろん影浦モデル。
ドラフトにかかりロッテか西武に指名されるのが彼の夢だそうだ。「あぶさん」に影響を受けているのにソフトバンクではなくてロッテか西武を希望しているのは「引っ越しとかでの不安とかが…」という理由。自宅から近い関東のパ・リーグ球団がいいのだという。ちなみに野球経験ゼロらしい。
かつて「リンカーン」(TBS)の「世界ウルリン滞在記」のギャルサー体験で充分に披露していた日村の抜群の素人なじみの良さが光る。今回も変わり者の素人相手に強くツッコんで笑い者にすることなく温かい雰囲気の中で穏やかに密着取材が進行していくのだが、謎すぎる「ケブ」君の予想外の応答にさすがの日村も頭を抱えて苦悶する愉快なシーンが何度かあり。
日村、小峠、小宮の三人の距離感が新鮮だし、その距離感のせいなのかそれぞれの個性のせいなのか互いに雑なイジりをしないのが非常に良い感じ。
「そんなバカなマン」(フジテレビ)の「そんなバカなホームステイ」のような「街の変人を紹介する」系の企画だが、「そんなバカなマン」レギュラーの良い意味で人が悪いバカリズムと設楽に対し、日村と小峠という上品な熱血漢二人が変人達をどう料理するのか期待したい。良い意味で人が悪いのかどうかまだ判断しかねる声の小さい小宮がどう絡んでいくのかも楽しみだ。【み】
【出演】日村勇紀(バナナマン)、小峠英二(バイきんぐ)、小宮浩信(三四郎)
【ナレーション】佐倉綾音
【構成】高須光聖、都築浩、樋口卓治、オークラ、寺田智和、片岡章博
【プロデューサー】江藤俊久、美濃部遥香(シオプロ)
【演出】塩谷泰孝(シオプロ)、井上整