映画の感想文「美人島探險」

美人島探險」(「心臟が強い」より)。大谷俊夫監督、秋田実原作、1937年公開。テレビ初放送(衛星劇場)。

大八足新聞社は売上低迷で今や存亡の危機にある。井口編集長は一気に社運を挽回するために、「美人島探検記」を出すことを重役一同に訴える。美人島は未だに入島後、誰も帰ってきていない島。その探検隊に、下級社員のエンタツとアチャコが抜擢され…。

「衛星劇場」公式サイトより

南方に浮かぶハート型の「美人島」。この島は女性しか入れないという厳しい掟がある。
女性しか入れないならばいつか島人は死に絶えてしまうのではなかろうか、と思ったらどうやら男性や男社会などに絶望した女性達の入島を受け入れているらしい。

この謎の島を新聞記者の横山エンタツと花菱アチャコ(役名も横山エンタツと花菱アチャコ)が潜入取材するという軽い喜劇映画。
花菱アチャコのウィキペディアによると「1930年、当時吉本興業で総支配人の座にあった林正之助の勧めに従い、横山エンタツとコンビを組む」とあるので、エンタツアチャコ人気絶頂の頃だろう。頻繁に挿入される二人の漫才的なかけあいのシーンは大きな見せ場だったと思われる。

島民の家にしのびこんで着物とカツラを盗んだエンタツアチャコは、女装して島のパーティに潜り込むことに。着物とカツラは一組しかなかったのでアチャコが和装の女性に化け、ヒゲの生えたエンタツは頭にスカーフ、体には毛布、口元をベールで隠してトルコ人女性に扮する。
ちなみに、着物とカツラを盗まれた島民の女性はどういうわけかスキンヘッド。単にツルッパゲの女性で笑わせようとしたのか、あるいはリアルタイムで見ていたらわかる大笑いのネタだったのか。

さて、「君、トルコ語を使わなければいかんで」と言うアチャコに対し、「僕はトルコ語は知りませんよ」とエンタツ。スペイン語もシャム語もエチオピア語もできないというエンタツに、「困ったなぁ、そんなら、あの…寝言を言え、寝言を」。そしてパーティ会場でデタラメなニセ外国語で喋るエンタツ。藤村有弘、タモリの大先輩だ。

なお、美人島の島民は皆ジャングル探検風の制服姿。短パン姿の沢村貞子29歳というレアすぎる映像に驚く。

後ろ姿の女性が沢村貞子。若い頃からすでに形が沢村貞子。
若き日の貞子はおめめパッチリの名コメディエンヌ。
島民達がオシャレして集うパーティシーンの貞子は和装。着物の柄が可愛い。

てんやわんやの末にエンタツアチャコは島をこっそり脱出しようとするが、島民達に見つかり崖っぷちまで追い詰められてしまう。そしてリーダーの号令で一斉に銃撃! 絶体絶命のピンチ!

と思ったら次のシーンでは回る輪転機、美人島潜入記が掲載された新聞、そして会社で表彰されるエンタツアチャコ。あれよあれよでめでたしめでたし。
キツネにつままれたような幕切れ。いや何がどうしてそうなった。
よくわからないけど何か愉快なものを見た、という満足感あり。【み】

目次