「カーネーション」再び奈津と糸子

実にあざといシナリオ、心憎いまでにあざとい演出なのだ。
末期がんの美しい女性患者。自らの病状を把握していながらも前向き、積極的で元気。
ハンサムな夫と可愛い男の子二人に愛されている。

この女性が美しく装って笑顔でランウェイを歩いてくるのだ。
これで泣くなと言う方が無理。
ショーが始まってからはもう涙々。年をとると涙腺がゆるんで困るのことよ。

涙で言葉を詰まらせ、モデル紹介の原稿が読めない糸子。
今まで糸子と敵対することが多かった厳しい総婦長がその様子にいち早く気づいて駆け寄り、糸子の代わりに原稿を読む。
このくだりも毎日見ている視聴者にはぐっとくるポイントである。

おおいに盛り上がっているショーをうしろの方で見ている奈津。
そして、糸子に挨拶することなく一人で帰ろうとしているところを辰巳琢郎院長に捕獲されてしまう。
お気に入りの院長に「院長室でハーブティーでも」と誘われたら、そりゃ喜んでついていくしかないじゃないねえ。
院長に誘われた時の嬉しそうな顔が栗山奈津にそっくり。

その後の院長室での奈津の仏頂面は想像に難くない。
「なんや」「なんでアンタがおるんや」と超ご機嫌な糸子に向けてツンデレ砲が炸裂したはずである。
いや、院長の前だから品よくニコニコしていただろうか。

結局、今、奈津が岸和田でどう暮らしているかはわからなかったけれど、とにかく元気で良かった。
糸子のファッションショーを見にきてくれて本当に良かった。

難病の美しい母、家族愛、健気な男児、少年漫画における喧嘩をした後の男同士的な婦長との友情、そして奈津。
思いがけない伏線の回収、繊細な展開で泣かされた“オノマチネーション”時代に比べると、このファッションショーの巻はやけにわかりやすかったような気もするが、やたらと泣けるのはあと一週間でお別れだからかもしれない。寂しい。

もう一度善作やハルに会いたい。パッチ屋の大将や生地屋のオバチャン達に会いたい。
美しくもつっけんどんで可憐な奈津に会いたい。

今すぐにでも「カーネーション」の再放送希望。【み】

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