映画の感想文「黒い賭博師 悪魔の左手」

黒い賭博師 悪魔の左手」(中平康/1965年/日活)。
小林旭の「賭博師ギャンブラー」シリーズの第8作でシリーズ最終作。

パンドラ王国の国王(大泉滉)は、野心に燃える「賭博大学」の教授(二谷英明)に操られ、ギャンブルで富を増やし水爆を購入する計画のため来日する。二谷英明は「賭博大学」の3人の成績優秀者、盲人(天坊準)、少年(ジュディ・オング)、催眠術使いの老婆(原泉)を送り込んだ。
これを迎え撃つのは無敵のギャンブラー氷室浩次(小林旭)とヤクザの蒲郡郷平(神田隆)。

……という誠に荒唐無稽な話だが、中平康監督の手腕で楽しい映画になっている。

小林旭に惚れている時子(横山道代)は相変わらずガチャガチャうるさいし(単なるコメディリリーフかと思えば小林旭と同衾しているシーンがある)、小林旭の子分チョンボ(横山やすし)はいつもバタバタしているし、ジュディ・オングは長い髪をキャスケットに押し込んで男装丸出しなのに特に説明もなく役名は「少年」だし、原泉は催眠術でどうやってギャンブルに勝つのかわからないし、王様の大泉滉は期待通りのドッタンバッタンの大活躍だし、パンドラ王国の大使館は特撮ものみたいなアジトになっているし、まあ一言で言うなら漫画。非常に愉快な漫画である。

特に子供じみたやくざを演じる神田隆の楽しそうなこと!
大皿を抱え込んで口の周りにケチャップをつけてスパゲッティをガツガツ頬張るコミカルな神田隆に大笑い。「警視庁物語」の捜査一課の主任刑事とは全く違う神田隆の一面を見た。
そして、二枚目の二谷英明がラストに錯乱してあんなことになってしまうのも楽しい。この感じの二谷英明は初めて見たので新鮮だった。

少年(ジュディ・オング)
ギャンブルの天才少年、ジュディ・オング。可愛い!

パンドラ王国の公用語は英語らしく、王様以下家来達も皆インチキではない本当の英語のセリフを話す(セリフには日本語字幕が入る!)。
大泉滉の「非英語圏の人が喋るような英語」が巧い。
また、家来の郷鍈治も発音はともかくアクセントやブレスがちゃんとしている感じ。実際に英会話がイケる人なのではなかろうか。
もちろん「同志社大学文学部英文学科中退「ラジオ佐世保(のちにラジオ長崎と合併し長崎放送と社名変更)に開局と同時に入社。3年間、司会や英語放送のアナウンサーを務めた(ウィキペディア)という二谷英明も流暢な英語を披露するシーンがある。

今回、小林旭の子分のチョンボ役は鈴木やすしだったが、6作目の「黒い賭博師」では野呂圭介が演じていた。他の作品はどうなっているのか調べたところ、7作目の「黒い賭博師 ダイスで殺せ」では天坊準がチョンボ役だった。今回、エキセントリックな盲人のギャンブラーを演じた天坊準が、一体どんな風にチョンボを演じているのか気になる。
ちなみに野呂圭介のチョンボと鈴木やすしのチョンボは同じタッチで演じられている。チョンボコンパチビリティ。

せっかく調べたので「賭博師ギャンブラー」シリーズの一覧を作成した。
それにしてもこのシリーズはタイトルがデタラメすぎると思う。せめて「賭博師」というワードは必ず入れてほしい。

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公開年タイトル監督チョンボ役
1964さすらいの賭博師牛原陽一
1964黒いダイスが俺を呼ぶ井田探
1964ギター抱えたひとり旅山崎徳次郎
1965投げたダイスが明日を呼ぶ牛原陽一
1965さすらいは俺の運命井田探
1965黒い賭博師中平康野呂圭介
1965黒い賭博師 ダイスで殺せ江崎実生天坊準
1966黒い賭博師 悪魔の左手中平康鈴木やすし

大泉滉の第一王妃は戸川昌子、第二王妃は冨士真奈美(いずれもカメオ出演)。ワンシーンだけの出演なのでどうぞお見逃しなく。もし見逃しちゃってもストーリーにはたいして影響はないので大丈夫。【福】

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