宮益坂ビルディング|映像の中の渋谷

古い映画やドラマの中から
昭和の渋谷の風景を探しています。

宮益坂ビルディング

東京都渋谷区渋谷2-19-15

1953年に東京都により分譲された11階建の日本初の分譲マンション。当時珍しかったエレベーターやセントラルヒーティングを備えた高級アパートであった。現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」。

目次

映画「プーサン」(1953)

野呂(伊藤雄之助)と家主の金森風吉(藤原釜足)がパチンコをし、自宅近くの代議士の五津(菅井一郎)を眺めるシーンの前に渋谷の駅前の風景がインサートされる。渋谷駅前交差点。後方に宮益ガード。左の足場が組んであるビルが「三千里薬品」の前身「三千里食堂」。ガードの後方「富士銀行」は現「みずほ銀行渋谷支店」。中央の高層建物は「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」)。

作品データ
映画「プーサン」
監督:市川崑

1953(昭和28)年/東宝

出演:伊藤雄之助、越路吹雪、藤原釜足

野呂(伊藤雄之助)は善人で気弱な予備校教師。
妻を亡くした彼は金森風吉(藤原釜足)、らん(三好栄子)宅の下宿でつましく暮らし、娘のカン子(越路吹雪)にほのかな想いを寄せている。ある日教え子の左翼学生から誘われメーデーに参加した野呂は暴動に巻き込まれ逮捕されて職を失い、職探しに奔走する日々が始まる。
不器用な野呂と、スキャンダルを逆手にとって焼け太る代議士の五津(菅井一郎)、五津の後ろ盾を失い予備校を辞めてもしたたかに生きる学生泡田(小泉博)、挫折して故郷に帰る左翼学生古橋(山本廉)、医師をクビになり警察予備隊に入る手塚(木村功)らとを対比して描く。外食券を売り買いしたり、メーデー、警察予備隊など当時の風俗が色濃く描かれている。
原作は毎日新聞に連載されていた横山泰三の4コマ漫画「プーサン」と同じ作者の「ミス・ガンコ」。横山泰三と兄の横山隆一(「フクちゃん」「おんぶおばけ」などの作品がある漫画家/アニメーション作家)が警官役で1シーン出演している。【福】

映画「穴」(1957)

タクシー運転手(浜村純)を利用し千木(船越英二)を連れ出した北(京マチ子)は、人気のない場所で千木に彼の命が狙われていると忠告する。
背景左端は「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)、中央左に「東急文化会館」(現「渋谷ヒカリエ」渋谷2-21-12)と屋上の「五島プラネタリウム」、中央の大きなビルは看板から「日本生命渋谷支店」(現「日本生命渋谷ビル」神南1-21-1)、右に「東急百貨店東横店」、「渋谷松竹」(現「西武渋谷店A館」宇田川町21-1)のタワーが見える。
これらの建物の位置関係から撮影場所は現「日本生命渋谷ビル」の北側と推定する。1957年当時この場所は戦災復興区画整理事業のため道路(パルコ前からタワーレコードに抜ける道路)を建設中であったことから、道路建設のため空地になった場所を撮影に使ったと推定される。

なお本作では「第億銀行渋谷支店」が登場するが、銀行の周辺が映るシーンで「池袋公共職業安定所」の看板があることから実際には池袋と判断した。

作品データ
映画「穴」
監督:市川崑

1957(昭和32)年/大映東京

出演:京マチ子、船越英二、山村聡、菅原謙二、北林谷栄

警官に関する記事が問題となり「文芸公論」をクビになったライター北長子(京マチ子)。友人の赤羽スガ(北林谷栄)は、一か月間身を隠し彼女を懸賞つきで読者に探させ、その間のルポルタージュを書く企画を勧める。話に乗った北長子はスガの紹介で第億銀行の白州(山村聡)に資金を借りにいく。部下の千木(船越英二)らと共謀して預金を横領していた白州は、この企画を利用し北長子に罪をかぶせようと画策した。【福】

映画「夜の牙」(1958)

おじの莫大な財産をひとりで相続し身を隠している弟の行方を調べる杉浦健吉(石原裕次郎)に、おじの執事の加納(西村晃)が密かに連絡をとり、本当のことを話すという。
杉浦と加納が待ち合わせるのが「東急文化会館」。屋上から、銀座線をはさんで向かいにある日本初の分譲マンション「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)が見える。

作品データ
映画「夜の牙」
監督:井上梅次

1958(昭和33)年/日活

出演:石原裕次郎、岡田眞澄、月丘夢路、浅丘ルリ子、白木マリ

小さな診療所を開いている杉浦健吉(石原裕次郎)は自分が死んでいることになっており戸籍が抹消されていたことを知る。届出人は空襲時に生き別れた弟。検死を行った医師を尋ねると「杉浦健吉」はトラックに轢かれ、その時4人の男と気の違った女がそばにいたという証言を得る。一方弟のことを調べると伊豆のおじが死んだときにその莫大な遺産を相続したことを知る。遺産を独占した弟のことを調べに彼はスリの三太(岡田眞澄)と共に伊豆に向かい、寺の和尚卓然(森川信)、おじの執事の加納(西村晃)、謎の女(月丘夢路)に会う。
20代の岡田真澄がオシャレかつとんでもない美青年。現代でも通用しそうな見事な着こなし。ヒロインの月丘夢路の美貌も特筆に値する。この二人の姿を見るだけでも価値のある作品。【福】
日活
夜の牙 | 映画 | 日活 莫大な遺産を横領した四人の奇怪な影なき男たちと対決、美貌の女が秘める謎に殺気はらむ異色サスペンスアクション篇。

映画「どうせ拾った恋だもの」(1958)

看護師の小野(コロムビア・ローズ)が洗濯物を干しながら歌うシーンの前に渋谷の街がパンで映し出される。中央に「東急百貨店東横店」、左は「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)。
当時の航空写真と照らし合わせると、「交通局病院」(現「国際連合大学本部」神宮前5-53-70)からの撮影と推定される。

作品データ
映画「どうせ拾った恋だもの」
監督:関喜誉仁

1958(昭和33)年/日活

出演:安井昌二、香月美奈子、コロムビア・ローズ、高品格

腹を刺された男伸次(三島謙)が子分(高品格)に連れられ医師が不在中の病院に担ぎ込まれる。看護師の石川道子(香月美奈子)は伸次の顔を見て驚く。彼は昔道子の恋人だったのだ。彼女は止血剤をうって応急処置をするが、医師の秋山(安井昌二)が到着した時には男は死んでしまう。実はこの止血剤は婦長の佐藤のぶ(新井麗子)がブローカーから買った粗悪品であった。発覚を恐れた佐藤は男の死を道子の処置のミスのせいにしようとし、秋山との結婚を望む院長の娘高野佳代子(千葉麗子)に秋山と道子の関係を匂わせたり、子分から買った伸次と道子が付き合っている頃の写真を使って病院を追い出そうとする。医師の秋山は道子に結婚を申し込むが、伸次と交際していた過去がある道子はこれを断り、病院も辞めてしまう。
初代コロンビア・ローズの同名の曲をベースにした歌謡映画で彼女自身も看護師を演じ、歌う(意外と演技も巧い)。非常にシンプルなメロドラマ。婦長役新井麗子がわかりやすい悪役を好演。【福】
日活
どうせ拾った恋だもの | 映画 | 日活 過去の暗い影に悩み、酷な運命に堪えてひたすら愛する人への思慕に幸福の夢を追う乙女の姿を描いた歌謡哀愁篇

映画「太陽をぶち落せ」(1958)

タイトルの直後、渋谷の風景が朝、昼、夜景と移り変わる。渋谷一丁目方面からの風景。一番左が「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)、その右に「東急文化会館」(現「渋谷ヒカリエ」渋谷2-21-12)のプラネタリウムが見える。右側が「東急百貨店東横店」。

作品データ
映画「太陽をぶち落せ」
監督:野口博志

1958(昭和33)年/日活

出演:川地民夫、菅井一郎、南田洋子、宍戸錠、水島道太郎

大須賀禎蔵(菅井一郎)の息子吾郎(川地民夫)は謎の自殺をとげた母親のことが忘れられず、新しい母親蘭子(南田洋子)に異性としての愛情を感じつつことごとく反抗していた。蘭子の昔の恋人で、蘭子を奪い返す機会をうかがっていた禎蔵の部下青野洋介(宍戸錠)はある日二人の過去をばらすと脅し蘭子と料理屋で密会した。たまたまカップルを脅迫するため写真を撮影するバイトをしていた仲間からの連絡を受け、吾郎は蘭子と青野が密会する旅館へ乗り込む。吾郎はそこで青野から禎蔵は吾郎の実の父親ではないと聞かされ、激しく動揺する。吾郎は父親の日記から古市(水島道太郎)という男の存在を知り、古市を探し始める。【福】
日活
太陽をぶち落せ | 映画 | 日活 真実の愛を求めて彷徨し、苦悩する少年の叫びと姿を通して、現代のモラルと多感な思春期の群像を描くもの

映画「浮気の季節」(1959)

オープニングで、「渋谷駅東口」から「ハチ公前広場」までの風景がパンで映される。
左側が「東急百貨店東横店」、その後ろに「渋谷東口駅前広場」と「銀座線」、「銀座線」越しに「東急文化会館」が見える。遠方に延びているのは宮益坂、遠方にある高層ビルは「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)。

作品データ
映画「浮気の季節」
監督:阿部豊

1959(昭和34)年/日活

出演:益田喜頓、岡田真澄、赤木圭一郎

桐野省三(益田喜頓)は早くに妻をなくし、男手一つで道子(吉行和子)、マキ(中原早苗)、桃子(沢村みつ子)の三人の娘を育ててきた。娘たちは省三にお見合いをさせようともくろんでいた。ある日省三は社長の印藤(小川虎之助)から社員の宮本(岡田眞澄)の首切りを命ぜられる。社長は宮本が息子の良平(赤木圭一郎)にダンサーの原田(白木マリ)を紹介したことに腹をたてていたのだ。しかし宮本は道子のボーイフレンドだった。【福】
日活
浮氣の季節(浮気の季節) | 映画 | 日活 現代三人娘の陽気な恋愛模様と老サラリーマン課長の悲哀、そして風俗を爆笑とユーモア、ペーソスで描く超娯楽喜劇篇。

映画「けものの眠り」(1960)

会社の歓迎会の連絡を受け家を出た植木順平(芦田伸介)は、それからしばらくの間失踪してしまう。
会社の連絡のシーンの後インサートされる渋谷の夜景は、「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-4)前から渋谷駅方向をみる角度。右側の「大阪屋証券」(現「渋谷たくぎんビル」渋谷1-13-9)、左側の「日興証券」(現「日本空輸江東流通センター」渋谷2-20)を当時の住宅地図で確認した。「国民相互銀行渋谷支店」等が入っているビルは2016年に「宮益坂ビルディング」を見学した時の写真から同ビルと特定した。

事件の舞台のひとつ「バー・エメラルド」。エメラルドのネオンが光るのは「宮益坂ビルディング」。同ビルの地階にある設定だ。他のシーンで映るビルの外観と2016年に「宮益坂ビルディング」を見学した時の写真から同ビルと特定した。

失踪した植木順平(芦田伸介)の行方を追う娘の啓子(吉行和子)とその恋人で新聞記者の笠井正太郎(長門裕之)は、バー・エメラルドで、失踪した夜順平と一緒にいた男を見つけ車で追う。
場所は宮益坂。「国民相互銀行渋谷支店」「大和證券」が入っているビルは「宮益坂ビルディング」(現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-4)。他のシーンで映るビルの外観と2016年に「宮益坂ビルディング」を見学した時の写真から同ビルと特定した。

作品データ
映画「けものの眠り」
監督:鈴木清順

1960(昭和35)年/日活

出演:長門裕之、吉行和子、芦田伸介、西村晃、小沢昭一、草薙幸二郎、下元勉、信欣三、山岡久乃、楠侑子、初井言栄

定年を迎え赴任先の香港から帰国した植木順平(芦田伸介)は、会社の歓迎会の後退職金300万円の小切手を手にしたまま失踪した。後日自宅にバーのホステスあけみ(千代侑子)から電話があり、順平は失踪した夜数人の男と彼女の店を訪れ、その際彼女に指輪を預け連絡がなかったら自宅に電話するよう依頼したという。
数日後何事もなかったかのように帰宅し温泉に行っていたと言った順平だったが、娘の啓子(吉行和子)の恋人で新聞記者の笠井正太郎(長門裕之)は、バーで順平と一緒にいた男が旅館で心中をしたこと、その男が順平が乗っていた船の船員、王(野呂圭介)の知人であることまで突き止めており、順平の行動の裏に何か大きな暗い影があることを察知していた。【福】
日活
けものの眠り | 映画 | 日活 ふとしたことから人生の岐路を見誤ってしまう人間の心情を、事件を追う敏腕記者を通して描く。新興宗教を題材に取り入れた鈴木清順監督のサスペンスで、長門裕之が清順作品...

映画「にっぽんGメン 摩天楼の狼」(1960)

オープニングに渋谷の街が映る。渋谷駅前から山手線越しに宮益坂方向を見る。中央に延びるのが宮益坂、右の「東横」のネオンが「東急百貨店東横店」、その背後に「東急文化会館」(現「渋谷ヒカリエ」渋谷2-21-12)のプラネタリウムが見えている。宮益坂の奥の高層建物は「宮益坂ビルディング」(現「現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」渋谷2-19-15)。左端手前に「渋谷東映劇場」(現「渋谷東映プラザ(渋谷TOEI)」渋谷1-24-12)が映っている。

作品データ
映画「にっぽんGメン 摩天楼の狼」
監督:伊賀山正光

1960(昭和35)年/第二東映

出演:梅宮辰夫、三田佳子、波島進

親友の刑事大隅(滝沢昭)が風俗嬢と心中したことを怪しんだ不破竜太郎(梅宮辰夫)は上京して捜査にあたる。彼は大隅が目撃されたバーに向かい、彼がしていたように胸に花をつけるとコールガールを紹介された。彼はコールガールから組織のボス「ブラック・ジョー」の名やシステムを聞き出し、組織に近づいていった。【福】

映画「青春前期 青い果実」(1965)

河合奈津子(太田雅子 / 現・梶芽衣子)を襲った大学生を見つけた椎ノ木武志(太田博之)が相手を追い詰める。場所は「金王東宝有料駐車場」(現「渋谷ヒカリエ」渋谷2-18-3)。背後の「第2奥野ビル」も現在「渋谷ヒカリエ」の一部、右側の「宮益坂ビルディング」は現「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」(渋谷2-19-15)。

作品データ
映画「青春前期 青い果実」
監督:堀池清

1965(昭和40)年/日活

出演:太田博之、太田雅子(現梶芽衣子)、吉村実子、山岡久乃、初井言榮、高橋とよ、佐野浅夫、内藤武敏

広島から転校してきた椎ノ木武志(太田博之)は無口で笑顔を見せない影のある少年。同級生の河合奈津子(太田雅子=梶芽衣子)はそんな彼に惹かれていた。やがて親しくなった二人は、武志の叔父中瀬安芸男(内藤武敏)が働く乗馬クラブへ馬を見に行く約束をする。母親(山岡久乃)に夜間の外出を厳しく止められた奈津子は家を抜け出して約束の場所へ向かうが、そこで3人の大学生に暴行されてしまう。奈津子は事件を忘れようとするが、教師(初井言栄)から親たち、親たちから生徒たちに噂が広まっていく。【福】
日活
青春前期 青い果実 | 映画 | 日活 セックスによる激しいショックを受けた二人の男女高校生の心の交流をクールなタッチで描いた異色純愛大作。

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