テレビをこじらせた東京福袋が書いたノンキなテレビコラム集。

映画の感想文「リアリティのダンス」

サーカス

アレハンドロ・ホドロフスキー監督、2014年日本公開。

1920年代、幼少のアレハンドロ・ホドロフスキーは、ウクライナから移民してきた両親と軍事政権下のチリ、トコピージャで暮らしていた。権威的で暴力的な共産主義者の父と、アレハンドロを自身の父の生まれ変わりと信じる母に愛されたいと願いつつも 大きなプレッシャーを感じ、また、ロシア系ユダヤ人であるアレハンドロは肌が白く鼻が高かったため、学校でも「ピノキオ」といじめられ、世界と自分のはざまで苦しんでいた…。
青い空と黒い砂浜、サーカス、波が運んだ魚の群れ、青い服に赤い靴。ホドロフスキー監督は映画の中で家族を再生させ、自身の少年時代と家族への思いを、チリの鮮やかな景色の中で、現実と空想を瑞々しく交差させファンタスティックに描く。(映画『リアリティのダンス』公式サイトより)

金髪の巻き毛のウィッグをかぶった美少年が出てくる。サーカスのテントが出てくる。台詞はすべてオペラ調で歌い上げる巨大なバストの女性が出てくる。男性器丸出しの放尿シーンが出てくる。小さい俳優が出てくる。白塗りの行者が出てくる。手足が欠損した俳優がわらわら出てくる。少年達の疑似自慰シーンが出てくる。盛大な葬式が出てくる。その様子をガイコツ達が眺めている。女性器丸出しの放尿シーンも出てくる。靴墨で全身を真っ黒に塗った裸の母と息子が出てくる。犬の群れが出てくる。ナチスによる拷問シーンが出てくる。

ハイメは男らしく育てるために息子を思いきり殴りつけたり、麻酔なしで歯の治療を我慢させたりする激烈な父親だ。また、女性用のストッキングやレースのショーツに頬ずりし恍惚となってその勢いで店のシャッターを降ろしてグラマーな妻に挑みかかる男であり、自分が育った悲しい環境について馬に愚痴る男でもある。
神を信じないエキセントリックな男ハイメが、地獄めぐりの果てに自らがキリストのような姿になって家族の元に帰ってくるお話。

ハイメを演じたブロンティス・ホドロフスキーはアレハンドロ・ホドロフスキー監督の長男で、カルト映画の金字塔「エル・トポ」(1969年)の息子役の人。あの裸の子が立派なおじさんになっていた。

鮮やかな映像に奇天烈なストーリー。わけがわからないけれど楽しい。わけがわからないけれどちっとも退屈しない。
このシュールで美しい作品をただ「面白い」としか表現できない自分が恥ずかしい。古風だがとても風変わりなレストランで、目に美しく舌にも美味な豪快な肉料理をたっぷりと味わったような満足感がある。ああ、なんと楽しいエログロナンセンス。鮮烈な色彩感覚。現代の寓話。きわめて愉快なおとぎ話。【み】