古い映画やドラマの中から
昭和の渋谷の風景を探しています。
渋谷川
山手線の東側に沿うように流れていた川。
渋谷川は、元々、新宿御苑に水源を持ち、渋谷区・港区内(港区内は「古川」と呼ぶ。)を通って東京湾に流れ込む全長約10kmの川でした。
(中略)戦後、昭和25年の「東京都市計画下水道」の告示、昭和35年の「東京都市計画河川下水道調査特別委員会答申」を経て、渋谷川は宮益橋から上流の区域を暗渠化して、下水道幹線として使用することが決まりました。(中略)昭和40年代初頭までには、渋谷川上流(稲荷橋以北)と支流のほとんどが地表から姿を消すことになりました。(渋谷川って、どんな川だったの?)
映画「狂熱の季節」(1960)
明(川地民夫)と勝(郷鍈治)とユキ(千代侑子)が宮益橋を通りかかると勝の知り合いの子供が渋谷川で鉄くず拾いをしているところに出くわす。
渋谷川に浸かって鉄くず拾いを手伝う勝(郷鍈治)。
1960(昭和35)年/日活
出演:川地民夫、郷鍈治、松本典子、千代侑子、長門裕之
富裕層の描き方がカリカチュアライズされすぎで、明の過剰に奔放な演技と併せて滑稽に見えてしまう点はあるが勢いのある映画だ。戦災復興とオリンピックで建設まっさかりの渋谷、いたるところが工事中だ。【福】
映画「東京アンタッチャブル」(1962)
隠しておいた宝石を取り戻した川本五郎(丹波哲郎)だが、バーテンを射殺した銃声を聞きつけた警官に追われ、銃撃されて負傷する。負傷した川本は「渋谷川」沿いに逃走する。
渋谷川沿いに「東急百貨店東横店」方面を映すシーン。正面が「東急百貨店東横店」、中央の橋は「稲荷橋」。右側の足場は「渋谷川」の改修か。
1962(昭和37)年/東映
出演:三國連太郎、高倉健、渡辺美佐子、三田佳子、丹波哲郎、筑波久子
映画「黒い太陽」(1964)
明(川地民夫)は車を盗み、住み着いている教会の廃墟へ向かう。途中、稲荷橋で殺人事件で人だかりができており、MPが「渋谷川」から遺体を回収している。
殺人を犯した脱走兵ギル(チコ・ローランド)が「渋谷川」を逃走するシーン。
1964(昭和39)年/日活
出演:川地民夫、チコ・ローラント、藤竜也
登場人物の名前とキャスト、ジャズをベースにした点など「狂熱の季節」の兄弟的な位置づけの作品だが、前作に比べ暴力的な要素は少ない。【福】
映画「妻二人」(1967)
永井利恵(江波杏子)との結婚をもくろむ小林(伊藤孝雄)は利恵の姉道子(若尾文子)と話し合うため電話で呼び出す。
二人が話しているのは宮下公園。右手に渋谷川が見える。「虎ノ門タイピスト学院」の看板は現「百瀬ビル」(渋谷1-24)。
1967(昭和42)年/大映
出演:若尾文子、三島雅夫、江波杏子、伊藤孝雄、岡田茉莉子
映画「コント55号 人類の大弱点」(1969)
宮下第1歩道橋をわたり宮下公園側から明治通りを渡る大垂欽一(萩本欽一)。後方右に宮下公園、中央に渋谷川。左側のビルは明治通り沿いの現「トラスティ渋谷ビル」(渋谷1−24-1)。
1969(昭和44)年/東宝
出演:萩本欽一、坂上二郎、岡田可愛、小林夕岐子、宮地晴子、白川由美、いしだあゆみ、チコとビーグルス
当時多くの国民が感じていたコント55号への愛着があってはじめて成立するドラマ。意外と萩本欽一が愛嬌に乏しく楽しみにくい。【福】
映画「やくざと抗争 実録安藤組」(1973)
十文字組と対立する矢頭(安藤昇)は、ライフルを持ち単身渋谷川側から橋場組に乗り込み、橋場(諸角啓二郎)と互いに縄張りを侵さないことを約束させる。
1973(昭和48)年/東映
出演:安藤昇、袋正、江守徹、北川恵一、安岡力也、小林稔侍、諸角啓二郎、今井健二、佐藤蛾次郎、深江章喜、室田日出男、佐藤晟也、郷鍈治、内田朝雄、渡辺文雄、藤浩子、山本麟一、八名信夫、松井康子、丹波哲郎
矢頭と幼馴染早苗のエピソードが並行して語られるが、とってつけたような話。話の展開も妙におセンチ。【福】
映画「実録・私設銀座警察」(1973)
米国兵を傷つけて逃亡した渡会(渡瀬恒彦)は盛り場(のんべい横丁)を逃げ、渋谷川をつたって池谷(安藤昇)らが経営する「BAR キティ」に逃げ込む。渡会がのんべい横丁から渋谷川へ降り、暗渠へ向かうシーン。
「のんべい横丁」のそばの暗渠の入口といえば宮益橋の下だが、「狂熱の季節」(1960)に映っていた宮益橋周辺とは様子が違うので渋谷川の別の場所の可能性もある。
渡会(渡瀬恒彦)が「のんべい横丁」から渋谷川へ降り、暗渠を抜けたシーン。
「のんべい横丁」側から暗渠を抜けた側といえば稲荷橋の下あたりだろうが、画面の上に見切れている橋の構造が近年の稲荷橋とは違うので渋谷川の別の場所の可能性もある。
「のんべい横丁」から渋谷川へ降り、暗渠を抜けた渡会(渡瀬恒彦)がはしごを見つけ昇るシーン。「のんべい横丁」側から暗渠を抜けた側といえば稲荷橋の下あたりだろうか。
なお、この映画と同年に同じ佐藤純彌が監督した「やくざと抗争 実録安藤組」では橋場組へ乗り込む矢頭(安藤昇)がこのはしごを昇る。
1973(昭和48)年/東映
出演:安藤昇、梅宮辰夫、佐藤蛾次郎、小林稔侍、三上真一郎、葉山良二、室田日出男、渡瀬恒彦、待田京介
映画「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」(1976)
妻の家に潜伏しテレビを見る安藤昇(本人)。テレビに映る渋谷新宿明朗化協会理事の演説に都内で次々に逮捕される暴力団員の映像が重なる。
暴力団員が逃げているのは渋谷川。背後に見える緑の橋は稲荷橋(渋谷3-18-1)。
渋谷川を逃げる暴力団員の行く手から警官が向かってくる。背後に見える緑の橋は金王橋(渋谷3丁目)。
1976(昭和51)年/東映
出演:安藤昇、中島葵、ひろみ麻耶、石橋蓮司、蟹江敬三、近藤宏
映画「十代 恵子の場合」(1979)
渋谷川八幡橋(渋谷3-22と3-23の間)。渋谷川金王橋に出た鉄(三浦洋一)が下流側を見たシーンであることからひとつ下流の八幡橋と特定。
1979(昭和54)年/東映
出演:森下愛子、三浦洋一、風間杜夫、殿山泰司
恵子が想定内の流れで身を落とし想定内の結末が待っている、何もひねりのないストーリーに音楽も安っぽいムード音楽ながら、1979年の渋谷の風景をふんだんに観ることができるありがたい作品。つかこうへいの「熱海殺人事件」で木村伝兵衛を演じた三浦洋一(初代)と風間杜夫(二代目)が出演しているのが演劇ファンにとってはちょっと嬉しいポイント。【福】
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