「カーネーション」優子の失敗

千代の看病の甲斐あって、すっかり元気になった直子。
同期の男子学生3人組の写真やデザイン画を見せ、彼らがどれだけ才能に満ちあふれているかを熱く語る。
「ふんふん」「へええ」「そうなんや」と、誠にいい間合いで相槌を打つ千代は聞き上手。
千代の前にいる直子はとても可愛らしく見える。
善作、糸子、直子と三代に渡って猛獣を手なずけてきた千代おそるべし。

一方、小原家の跡取り娘としてオハラ洋装店を継ぐために東京から帰ってきた優子。
帰ってきた当初はオツに気取った東京弁で挨拶して常連客を驚かせたりしていたが、だいぶ物腰が柔らかくなっている。
糸子を「先生」と呼ぶようになっているのも洋装店勤めが板についてきた証拠だろう。

「頃合いや良し」とみた糸子、優子に客のドレスのデザインを任せてみる。
今回のお客さんは妊娠4ヶ月の若い女性。
友人の結婚式で着るためにお腹が目立たぬようサックドレスを作ってほしいという。
糸子に「サックドレスなら出来るやろ?」と言われ、「サックドレスなら自信があります」と言い切る優子。さすがは万年主席。頼もしい。

万年主席娘は完璧主義なので、「出産後も着られるようにしてほしい」という客の注文と今の体型で綺麗に見えるデザインのどちらを優先したらよいのか悩むが、それを見て糸子は「頭で考え過ぎるな」と苦言を呈す。
妊婦さんの採寸をする時も「体調を崩したら大変だからさっさと済ませよ」と優子に釘をさすのだが、ホラ、あの子は完璧主義だからね、つわりで痩せてしまった妊婦さんを見てまたあれこれ難しいことを考えるわけですよ、なんせ東京の有名服飾学校を主席で卒業してますから。

妊婦さんと二人で採寸ルームにこもったきり、掛け時計の針は30分、40分、1時間…と進んでいく。 どんだけ計ってるんだ優子。大丈夫か妊婦さん。
ああ、なんだかまた優子がメソメソ泣く予感がするよ。

で、予想通り長い時間をかけた採寸に疲れた妊婦さんバッタリ倒れる。糸子を始めオハラ一同大慌て。
小原家の座敷に敷いた布団に横になって休む妊婦さんに、泣きながらひれ伏して謝る優子。
幸い穏やかな人柄の優しい客だったおかげで泣きべそ優子は逆に慰められるが、その様子を見た糸子は「厳しい客にこってり絞られた方がかえって良かったのでは?」と思うのだった。

そして、その後、改めて糸子が優子を殴ったり怒鳴ったり説教を喰らわしたりするシーンはなく、従業員の恵と昌子がしょんぼりする優子に「最初は誰でも失敗するもの」「どんどん失敗すべき」「失敗する子の方がむしろ伸びる」みたいなことを言ってまた慰めるわけですよ。
甘い。甘いぞ。優子に甘過ぎやしないかオハラ洋装店。
糸子にしたって厳しい客に絞られるのを期待する前に自分できっちり絞ればいいじゃないの。ぎゅううっと。
自分が善作にされていたように、あるいは修行時代にパッチ屋の先輩やロイヤルの大将に鍛えられていたように接すればいいじゃないの。
しかし、妊婦さんが帰った後で気が抜けて、ヘナヘナっと壁に手をついて「ああ、良かった」とばかりに大きなため息をつく糸子なのだった。
自分の苦労は我慢できても我が子の苦労はまた別だよね。

さて、優子が今回の失敗を今後にどう生かすか。
「感情のある生身の人間相手の商売なのだから学校で学んできた理論だけでは通用しない、ケースバイケースで融通を利かせていかないと街の洋装店はやっていけない」と覚醒するのか、あるいは「アタシみたいな実力のある優秀な洋裁師がこんな田舎でヌルい仕事やってらんないわよ」的にケツをまくってしまうのか。
直子がなにやら大きな賞を貰ったのが刺激になったか、次週予告を見る限りケツをまくる方向に進む模様。
受賞した直子は直子で首のまわりにカゴみたいなモノを巻きつけてたりして、いよいよサイケの女王誕生の予感。

カモン60年代! 待ってるぜ70年代!

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