テレビをこじらせた東京福袋が書いたノンキなテレビコラム集。

NEXTお笑い第七世代イチ推し芸人「ぼる塾」

笑う少女

人気タレント達が互いを「短足」だの「ブス」だのと罵り合って雑に笑いを取っていた昭和時代をテレビっ子として過ごし、トークの達者な毒舌芸人達が「ブス」「ブサイク」「チビ」「バカ」「ハゲ」「メガネ」といった荒っぽいフレーズで相手を叩きのめす様子を見てゲラゲラ笑っていた平成時代を経て、令和時代を迎えた私である。

平成時代によく見かけた「ゲームに負けると不美人な女芸人のキスが罰ゲーム(あるいはゲームに勝った女芸人のご褒美が嫌がるイケメン芸人のキス)」とか「ゲイのタレントはイケメンを見ると必ず興奮し、興奮された男性は怯えて逃げ惑う」といった演出にはさすがに当時から嫌悪感を覚えていたものの、誠に遺憾ながら差別的な笑いが体の芯から染み込んでいると思う。
手足の短い太った女芸人がドタバタしていたり、不美人な女芸人が「いい女」を気取っていたりすると、ただそれだけでうっかり笑ってしまう自分が恥ずかしい。

いや、そもそも、「女芸人」という呼称がイヤだ。
人間が「男」と「女」の2種類に明確に区別できないことは、今どき、子どもでも知っている。
「芸人」を2種類に区別するとしたら、それは「面白い芸人」と「面白くない芸人」だろう。
まあ、「人類」と「サル」くらいなら2種類に区別してもかまわないと思うが、それが可能な漫才師はゆりありくしか知らない。

 

ネタにしてもトークにしても「食と肥満」「旺盛な性欲」「強い結婚願望」の3本柱で強引に突破していく「女芸人」達を見るのはしんどい。
昭和〜平成の使い古されたルッキズムとジェンダー観のくびきから解き放たれた、斬新な発想や巧みな話術で勝負する女性の芸人を私は見たいのだ。

たとえばAマッソ安藤なつ(メイプル超合金)はら(ゆにばーす)はネタの中で女性性をくどくどしく押し付けてきたりしない上に漫才力も高く、かねてより贔屓にしている人達なのだが、女性の芸人はテレビで売れてくると美容だの食レポだのショッピングだの育児だのというお笑いと関係ない仕事ばっかり増えてしまうのがファンとしては悩みの種。

そんな昨今、ぼる塾という漫才トリオが気になっている。
ウィキペディアによると、本当はしんぼる(きりやはるか、あんり)と猫塾(酒寄希望、田辺智加)が合体した4人組だが、現在は猫塾の酒寄が育休中のためトリオで活動しているらしい。

芸人的にはオイシイとされる「デブ」で「ブス」のあんり(中央)がツッコミで、はるか(下手しもて)と田辺(上手かみて)がボケ担当。
田辺のもったりとした調子の「ハーァーイ」「まぁーねぇー」「ハイー!」という3つのキラーフレーズを軸に、あんりが幼馴染のはるかは雑に扱うのに年上の田辺の突飛な発言に対しては褒めたりいなしたり小馬鹿にしたりと慇懃無礼に接するスタイルが楽しい。

ぼる塾のYoutubeチャンネルで公開されている漫才「幸せになりたい」の冒頭部分はこんな感じ。

あんり

えー、あたしたちですね、小学校からの幼馴染のはるちゃんとあんりと、私の食べ放題仲間の田辺さんです。

田辺

ハーァーイ。
こないだもワタシとあんり、焼肉食べ放題行ったわよね。

あんり

ええ、あたしたちの食べっぷりに店員が震えてましたねえ。

はるか

あたしたち、こんなに仲良しなんですけどぉ、あたしとあんりは25歳でぇ、田辺さんだけぇ、36歳なんですよー。

田辺

ハイ! 出たあー! すぐ若さアピールする女ぁー!
あのね、ワタシは東京ディズニーランドと同い年なのよ。

あんり

さすが田辺さん。

はるか

田辺さん、ミッキーだ。

あんり

違えーよ、ハンプティ・ダンプティだよ。

田辺

バカー!

あんり

(田辺を掌で指して)ハンプティ(自分を指して)ダンプティです。

田辺

フフフフ。

はるか

まあ、ちょっと聞いてくださいよー。

あんり

なによ。

はるか

私ね、早く幸せになりたいんですよね。

あんり

ちょっと、そんなクチだけで幸せになれるわけないじゃん、甘ったれてんなあ。

田辺

ワタシも幸せになりたーい。

あんり

なれるといいですねー。

この続きは以下の動画をどうぞ。

とにかくあんりのツッコミの間合いが素晴らしい。
「デブ」で「ブス」という「武器」には頼らぬ本寸法のツッコミ。
「さすが田辺さん」とか、このネタには出てこなかったが「でかしましたねぇ」というセリフのチョイスも言い方も最高である。

……とかだらだら書いていたら、「アメトーーク NEXTお笑い第七世代」(2010年3月19日 / テレビ朝日)に登場し、変わり者の先輩の松本竹馬(そいつどいつ)をけちょんけちょんにやっつけ、深々と爪痕を残したあんりである。
フジモンの「お前ブスやなあ」という古式ゆかしいイジりに対しても、「これ聞いたら藤本さんは何も言えなくなりますよ」と静かに言い返し、「父が元暴走族、母が元レディース、兄二人が元ヤンキー」というコワモテの一家であるという強めのファミリーエピソードで返り討ちにする。

ところで、「不細工」な男性芸人は若手時代に容貌をイジられることはあっても、ある程度売れたり賞レースで結果を残したりすると、いつの間にか「容貌イジり無用」になっていることが多い。
現在バラエティ番組で活躍している中堅〜ベテラン芸人達の顔は、「女芸人」なら「ブス」扱いされるレベルの者が少なくないと思う。
たとえば、今さらロンブー淳を「出っ歯」イジりで笑いをどうこうしようとする芸人はいないだろう。
でも、芸歴28年のオアシズ大久保はいまだに「ブス」が売り物だし、相方のオアシズ光浦は「ブス」で「モテない」キャラでイジられるのである。

そういえば、全盛期の山田邦子と野沢直子はほぼ「容貌イジり無用」という立ち位置で活躍していた気がする。
山田邦子のいただきまで昇りつめなくとも、ぼる塾には「女芸人→セクハラいじり→売れる→情報バラエティ番組」というお定まりのルートをぶち壊し、さらに「芸人/女芸人」という枠を取っ払って大暴れしてくれそうなパワーを感じるのだ。
終始ちょこまかヘラヘラしているはるかと独特の間合いで流れをクラッシュさせる田辺という難しい二人を操る、サーカス団の団長的な風格を持つあんりの今後の活躍が楽しみでたまらない。

ただし、今後バラエティ番組や取材等で必ず言うであろう家族のエピソードが、反社会的勢力に敏感になっているこのご時世にマッチしづらいことと、育休明けの酒寄希望が戻って4人組になった時のネタの構成がどうなるのかが心配ではある。
上下かみしもを切ってツッコむ現在のバランスが絶妙なだけに、酒寄には本当に申し訳ないが、今のトリオのままで今年のM-1決勝を狙ってほしいと思うのだった(2019年は3回戦敗退)。
ガンバレぼる塾。NEXTお笑い第七世代を牽引していってくれ。【み】

 
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