映画の感想文「マンハッタン無宿」

ドン・シーゲル監督、1969年日本公開のアメリカ映画。

北部から南部へバイクで走っていった「イージー・ライダー」のラリった二人は憧れの地南部で差別を受けた挙句いとも簡単に撃ち殺されたが、逃亡犯護送の任務で南部から北部へ飛行機で飛んできた「マンハッタン無宿」の保安官補は北部のラリった犯人一味に酷い目にあう。

勤務中に巨乳の人妻とイチャイチャしたり、犯人の手がかりを得るためにラリった可愛い女の子をハメようとしてハメられたり、犯人に関わる資料を盗むために接近したツンデレ心理学者に惚れられたり。隙あらば若い女性とチューしまくるクリント・イーストウッド。 でも年増の売春婦の誘いは断固拒否するのだった。

地元アリゾナでも荒っぽい仕事をして保安官に目の敵にされているイーストウッドは、ニューヨークでも我が物顔で大暴れしてニューヨーク市警に迷惑をかけまくる。
市警の指示を無視して犯人の母親のマンションにいきなり乗り込むが、この乱暴な捜査のおかげで長い間風呂にも入らず浮浪者風のスタイルで張り込んでいたという市警の担当刑事の苦労も水の泡。
犯人一味を殴ったり殴られたり刑務所に拘留されたり犯人護送の任務を解かれたりあれこれあったけれど、離れた場所にいる犯人に急に接近できるという特殊能力(?)を駆使して無事犯人確保。ここのバイクチェイスのシーンがとても格好いい。
厄介なアリゾナカウボーイに迷惑かけられっぱなしにもかかわらず、イーストウッドのお手柄を認めてやる男気あふるるニューヨーク市警の警部補リー・J・コッブのおかげで、無事獲物を連れて帰ることができたのだった。

カウボーイハットにブーツ姿のイーストウッドに出会う人出会う人皆「テキサスから?」と尋ねるくだりに笑った。イーストウッドが「アリゾナだよ」といちいち律儀に言い返すのも楽しい。
「テキサス」の他にも「牧童カウボーイ?」とか「ロデオ王?」と声をかける台詞が何度も出てきて、当時のニューヨークっ子のカウボーイに対する雑なイメージが面白い。

決してダメな映画ではないのだけれど、痛快というには若干モヤモヤする一作。「ダーティハリー」のドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドのコンビの第1作というので、見る前に若干ハードルをあげすぎてしまったのが敗因かも。

ウィキペディアによると、この作品がテレビドラマ「警部マクロード」シリーズに繋がったとのこと。「クリント・イーストウッド演ずるアリゾナ州の保安官補クーガンが、ニューヨークで大活躍する内容だったが、これがヒットしたため、同映画を制作したユニバーサル映画は、テレビドラマ化を企画する。だが、イーストウッドの『ダーティハリー』(1971)出演が決まったことから、主役をデニス・ウィーバーに変更。『マンハッタン無宿』の脚本を書いたハーマン・ミラーが、ニューメキシコ州の保安官補に設定を変えて誕生したのが、サム・マクロードのキャラクター」という事情らしい。
ニューヨーク市警で毎週派手に暴れまくるイーストウッドの「警部クーガン」も見てみたかったが、この作品から「ダーティハリー」と「警部マクロード」という2つの傑作が生まれたのだから、結果的には良かったよね。【み】

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