映画の感想文「ブリムストーン」

銃を持つ女性(ダコタ・ファニング)のポスターを見て、てっきり「開拓時代にならず者から家族を守るためたくましく戦う女性を描いた映画(もしかして実話ベース?)」だと思っていた「ブリムストーン」(1971年/マルティン・コールホーヴェン)。

アメリカの西部開拓時代。言葉を話せず村の助産婦として生活する主人公。村にやってきた新しい牧師の姿を見た彼女は恐怖におののく。
なぜ彼女は牧師を恐れるのか、なぜ彼女は口をきけなくなったのか。なぜ彼女は名前を変え、そのことにより何を免れ、逆にどんな災厄を背負うことになったかが時代を遡りながら語られる。

と、見てみたらまるで予想外の展開にびっくり。
確かに銃を持って戦う女性の話ではあったのだが、教会の存在感が大きい地域で男尊女卑の時代に妻子を虐待する牧師の実父から逃げるため必死に戦う発話障害の女性の話だった。
時系列がいったりきたりする4部構成の西部劇×サイコサスペンス。穴はあるものの整理の良いシナリオとタイトな演出で148分間目が離せない。歪な映画だと思うけれどその歪さもコミで面白かった。
西部の町に中国人がたくさん住んでいたとか娼婦達の酷い扱いとか、これまで西部劇ではあまり描いてこなかった描写が多かったのもポイント高し。

映画「狩人の夜」を思い出させるシーンあり。そもそも「逃げる子ども(女性)」と「追う残酷な牧師(ニセ牧師)」というモチーフはそのものズバリ「狩人の夜」だ。「狩人の夜」の逃げる子ども達はリリアン・ギッシュに助けられたけれど、この「ブリムストーン」にはリリアン・ギッシュはいない……。

男性が圧倒的な力で支配する当時の社会に抵抗を続けた主人公の姿を描いているのだが、敵役が特殊すぎて少しぶれている感じ。だがそれを差し引いても脚本がよくできている。
少年を銃殺するシーンや幼児を鞭打つシーンがあるのだが各国でちゃんと上映できたのだろうか。【福】

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