映画の感想文「BECKY ベッキー」

父と娘、父の婚約者とその子どもの4人が別荘で凶悪な脱獄囚達に襲われるスリラー映画「BECKY ベッキー」(2020年/カリー・マーニオン、ジョナサン・ミロ)。

1年前に母親が亡くなり父と二人暮らしの少女ベッキーは、父親と何となくうまくいっていない。父に連れられ別荘に行ったところ、突然婚約者とその幼い息子を紹介されショックを受け、家を飛び出し森の中へ。
そこへやってきたのが脱獄囚でネオナチのいかつい4人組。この別荘に隠してある「鍵」を探しにきた4人組は父と婚約者親子を人質に取る。

細かい伏線も巧いし、凶暴な脱獄囚に知恵を働かせて反撃するベッキーの暴れっぷりも痛快。ただしベッキーがあまりにも強すぎるのが難点といえば難点か。
父の恋人は機転が利く賢い女性。その子もおとなしい良い子(人質に取られソファに座らせられていた間ずっとぐずりもせず走り回りもせず静かにしていた奇跡の坊や!)。
だが父親がボンクラ。1年前に母を亡くしたばかりの思春期の娘に何の説明もなくだまし討ちのように恋人とその子どもを対面させてしまうとか、幼い頃のニックネームと思われる「リスちゃん」と呼びかけ続けて娘に嫌がられる(この伏線は回収された)とか、悪い人ではなさそうなのだが頼りない人ではある。

脱獄囚のひとりを演じたWWEレスラー、ロバート・マイエ(身長213cm)が非常に格好よかった。
刑務所から逃げる道すがら襲ったファミリーカーの後部座席に座っていた幼い子ども達の始末を任されたことが深く心の傷になってしまった陰影のあるキャラクター。リーダーのドミニクの指示に逆らうようになる。
「パシフィック・リム」でロシア人パイロット、サーシャ・カイダノフスキーを演じた人。

ベッキーが隠した「鍵」をネオナチ達が手に入れるとどうなるのが気になった。
この鍵があると秘密の部屋に入れるとか宝箱が開けられるとか、あるいはお守りのように身に着けているだけで何らかの効果を発揮するとか、この鍵を持っている者こそがネオナチのリーダーとして君臨できるとか。
Wikipediaによるとあの鍵は「バルクナットのシンボルの形」らしい(she retrieves a large key, the bow of which is formed in the shape of a valknut symbol.)。
「バルクナット」というのは北欧神話に由来するシンボルで、現在では白人至上主義者が使用することもあるのだという(The valknut has seen some use by White supremacists.)。【み】

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