本当に怖ろしい「白雪姫」

クリスマスにちなんで放映されたと思われる「白雪姫」(NHK総合)。
白雪姫に安達祐実、魔女に山本陽子、王に大和田伸也という微妙に豪華な吹き替え陣もこのドラマの売りであるらしい。

さて、今日は祝日。明日はクリスマスイブ。一家揃ってのんびりとロマンティックな童話を楽しもう……などと思った家庭にはとんだ災難であった。
さすがにそのものズバリのスプラッタな場面はなかったものの血なまぐさいシーン続出、性的なイメージをふんだんに散りばめ、そしてどういうわけか7人の小人ではなくて6人の小人と1人の大男なのだった。
ちなみにこの大男、「モンティパイソン」のエリック・アイドルにちょっと似ているのだけれど、吹き替えは広川太一郎ではなく野沢那智であった。

魔女の魔法で陶器の置物に変えられた小人・サンデーは、物語の途中で魔法が中途半端に解けて半分人間半分陶器という恐ろしげな姿で仲間のもとに帰ってくる。最後に白雪姫が蘇ると、魔女は醜い老婆(これが本来の姿という設定らしい)になり、美しい王妃の姿に戻れなくなってしまう。
ふと振り返ると半魚人のような魔女の兄貴が立っていて、妹に向かって渋い声(大友龍太郎)で「おまえには望むものを全て与えたのにおまえは一体何をした? 白雪姫に怯え、自分を追いつめてしまったではないか」などと、半魚人らしくない説教をする。去っていく半魚人。絶望する魔女。

そこへ彼女が魔法で陶器の置物に変えてしまったノーム(地の精=小人の仲間と思われる)の集団が陶器の姿のままで襲ってくる。魔女の魔力は消えたはずなのに、なぜノームたちだけは元に戻れなかったのかは謎。

……といったグロテスクなイメージやシュールなシーンが次々と登場して、まるで「ツインピークス」でも見ているかのような気分にさせられる珍作であった。

「NHKで白雪姫だから」と、安心しきって子どもと一緒にドラマを観賞してしまった一家の狼狽が目に見えるようだ。油断して見てしまった子どもらが夜泣きしないことを祈るばかりである。

ところで、柴咲コウに魔物が憑依したような顔だちのテンションの低い姫(クリスティン・クルック)の声を演じた安達祐実は、低い声で喋っていてもキンキン声に聞こえるという不思議な声質で、声優という仕事には向いていないのではないかと思った次第である。【み】

目次