名司会者・原田伸郎

日本ものまね大賞」に伸郎が戻ってきた。
8/22の19:00からフジテレビ系でオンエアされた「第28回・発表・日本ものまね大賞」。今回は、清水國明、榊原郁恵、清水アキラ、そして、原田伸郎が恒例の赤い上着に身を固めての司会である。
この番組は素人がものまねを競うもので、当初は、清水國明と原田伸郎の「あのねのね」の2人が司会を務めていたのだが、いつの頃からか、原田は司会から降ろされてしまっていた。その代わりに研ナオコや明石家さんまや「フジテレビ衣装部の保沢さん」などが、清水・榊原と共に司会を担当していたと記憶する。

しかし、どの司会も今ひとつだったように思う。
なにしろ相手は素人だ。しかも、ものまね自慢の目立ちたがりの素人さんである。中には見る者を唸らせるような玄人はだしの出場者もいるにはいるのだが、たいてい、何か大きな勘違いをしているような奴や線がぷっつり切れているような奴ばかり。こいつらを仕切るのは並大抵のことではない。下手につっこめば調子に乗ってかえって訳のわからない方向へ飛んでいってしまうし、だからといって、返答に困るほどのキツイつっこみをすれば「素人相手にそんなにひどいこと言わなくても」などと視聴者に思わせてしまう。また、当たり障りのない会話だけでは素人の悲しさ、ちっとも面白くならないのだ。

その点、原田は見事にこの難しい仕事をこなす。
鼻にかかった野太い声は、どちらかといえば悪声のうちに入るのだろうが、不思議と耳障りがいい(それを証拠に、原田はCMのナレーションをいくつか担当している)。体格がよく顔も大きいので見た感じは少々クドイ印象を受けるが、語尾が微妙に裏返るくねくねとした口調がその印象を中和させ、案外押しつけがましくない。
アイドルのものまね(しかも全く似ていない!)をするオタクっぽい青年に対しては「君、男と女だったらどっちがスキ? 女? そんならもっと男らしゅうしっかりせなあかん」と叱咤し、演歌を上手に歌う小学生の女の子に対しては「かわいいねえ、上手やねえ」とやさしく誉め、頭の線がぶち切れているようなデタラメな芸を披露して場の雰囲気を滅茶苦茶にしてしまった若い娘に対しては「君、今、この会場全員を敵にしたで。でも、だいじょぶ、がんばっていこうな」と励ます。
つまらないネタはさりげなく適当なところで切り上げさせ、ちょっとでもウケたネタは繰り返させる。どんな素人が出てこようとひるむことなく、無視せず、しかも意地悪をしないのが見ていて気持ちがいい。

普通、悪ノリをしている素人を見ると、たいていのタレントは無視するかペチャンコにへこませてしまうものだが、原田はそれをしない。素人に対抗するわけではなく、また、素人を無駄に調子に乗らせない。また、それが非常に自然なのである。
原田の過去の仕事である深夜放送のパーソナリティや「魚屋のおっさんがおどろいた、ギョッ」も「いたぁ〜い、なにすんの〜」も「ねこにゃんにゃんにゃん」も大して評価していない私だが、この「ものまね大賞」の司会に関しては別である。原田以外にこれほど見事にものまね素人どもを仕切れるタレントはいないのではないか。これはもう才能であろう。
フジテレビは今後もこの番組を続けるのなら、ぜひとも必ず原田を司会にキャスティングすべきだと声を大にして提言したい。【み】

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