テレビをこじらせた東京福袋が書いたノンキなテレビコラム集。

ローテンションでふざける男、有吉弘行

ピエロ

品川庄司の品川祐はスゴイ。
バラエティ番組の雛壇に座っている時は、話の流れをさえぎって大声を出してワンショットで映るのが得意だ。
相方の庄司が身体を鍛えてマッチョを売り物にするようになると、なぜか自分も身体を鍛えてしまう。
雑学本に載っている雑学を必死に覚えた結果、高学歴ではないのにクイズではインテリ枠で出演する。
コアなマニアではないのにも関わらず、ガンダム、ドラゴンボールといったアニメの特集企画にマニアとして呼ばれる。
小説を書けばそこそこ売れるし、芸人仲間の写真を頻繁に載せたブログをまめに更新してそこそこ評判になる。
芸人に唄わせる企画が流行すると、ボイストレーニングまでして歌の巧い芸人としての自己アピールを忘れない。

…と、品川のスゴイところを挙げていけばキリがないのだが、品川が頑張れば頑張るほど痛々しい。バラエティ番組が彼を重用すれば重用するほど鬱陶しい。もう勘弁してほしいと切に思う。
「イヤなら見なければいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、いかにも面白そうな番組にその他大勢のうちの1人としてちょくちょく顔を出すのが困る。「品川の頑張りは勘弁してほしいが、この番組は見たい」という状況が非常に多いのである。

そんなたまりにたまった鬱憤をたった一言でスッキリさせてくれた男、それが有吉弘行だ。
昨年の8月に放送された「アメトーーク」(テレビ朝日)の「夏の売れっ子SP」で「一発屋芸人BIG3」の1人として登場した有吉。
「一発屋にならない為にはキャラを固定しないこと」とかいう話になり、たとえば時東ぁみならメガネ、夏川純なら……と、その日のゲストの「夏の売れっ子」達のキャラのポイントを一言ずつコメントしていったのだが、段々面倒くさくなっちゃったのか、品川に対しては
「おしゃべりクソ野郎」
と身もふたもない事を言い放ったのだった。一同爆笑、困り顔の品川。
さらに10月の同番組「先輩・後輩ハッキリさせようSP」でも品川と有吉が共演。司会の雨上がり決死隊・宮迫に「有吉、品川はなんやったっけ?」と聞かれ、淡々とした表情で「おしゃべりクソ野郎です」と答える有吉。品川に「やめてくださいよー」と話をさえぎられると、有吉、ニヤニヤ笑いながら小さな声で「じゃ、おしゃべり様」。いいぞ、有吉!

「電波少年」で猿岩石として一世を風靡してから10年あまり。
当時は好きでも嫌いでもなく、まあ、どうでもいいタレントの1人だったのだが、その後「内村プロデュース」(テレビ朝日)で、芸人宅にロケする度に必ず風呂場で全裸で待機していたり、「笑わせ王」なる企画ですぐ笑ってしまうにもかかわらず「笑わないキング」と奉られていたり、大喜利企画での予想外にシャープな回答をしたりといった活躍で、すっかりファンになってしまった。
また、日本テレビのモノマネ番組で披露する「石原軍団の新年会でスピーチする渡哲也」とか「世間話をする哀川翔」とか「深夜放送のDJをする桃井かおり」など、目の付けどころが独特なネタ選びもポイント高い。

バラエティ番組に出演する時は、他の芸人と比べ、圧倒的にテンションが低く、いつも笑いをこらえているような顔をしている。誰かがボケた時にはうつむいてクックックと笑っている。ボケだのツッコミだのかぶせだの天丼だのといったお笑い芸人的な言動は一切しない。
「ずっと黙って笑いをこらえているが、話をふられるとふてくされた態度で身もふたもない事を言う」という他に類を見ない系統の雛壇芸人なのである。
朝礼で整列して校長先生の話を聞いている時に聞こえるか聞こえないか程度の小さい声でくだらない冗談を言って自分は笑いをこらえながらもまわりを笑わせて笑った奴が先生に叱られるのを見て喜ぶタイプとでも言おうか。ってたとえが長いよ。

さて、1月31日の「アメトーーク」は「方向性迷ってる芸人」という企画で、出演は有吉、カンニング竹山、インリン・オブ・ジョイトイ、小島よしお、ダンディ坂野、アンバランス山本、ペナルティ・ワッキーという面々。
今後進んでいきたい方針として「愛されるような感じ」と言う有吉。
曰く、基本的に何もしたくない、雛壇の上の段の端っこにただ座っているだけ、感情のおもむくままに笑いたい時には笑いつまらない時には黙っている、クシャミをするだけでウケる、それだけでまわりからいじってもらえる……そして、行き着く先は「マスコット的」な存在のタレント。

そして、「愛されるにはどうしたらいいですかね」と問う有吉に対し、「人の悪口はもう駄目だよ」「悪口を言うキャラを生かしていっそニュースの辛口のコメンテーターになってはどうか」という意見が出る。
すかさず小島よしおが「辛口クソ野郎コメンテーター」
「おしゃべり糞野郎」がツボにハマっている様子の宮迫、新たに登場した身もふたもないニックネームに喜び、「辛兄や」とか「辛クソ兄さんや」と大はしゃぎする一方、当の有吉は「辛クソ兄さんなんてないですから」などと否定しながらも、満更でもなさげな表情で笑っているのだった。

少なくともこれまで私が見てきた「内村プロデュース」「アメトーーク」「くりぃむなんとか」では、有吉が理想とするスタンスはほぼ確立されているような気がするし、レコード大賞新人賞まで受賞したミリオンセラーのヒット曲を持つ輝かしい過去はいわゆる「一発屋芸人」の中でもひときわ華やかな「一発」である。
ぜひ、笑いをこらえながらローテンションで身もふたもない事を言う不思議な芸人という道を迷うことなくこのまま突き進んでいってもらいたい。そして、場を盛り上げたナイスコメントの小島よしおに10点さしあげる((C)高橋洋二)。【み】