「報道特捜プロジェクト」(日本テレビ/8月20日13:30〜15:00)を見た。
この番組ではこれまでも朝霞市のリサイクル業者の不正を東北まで後をつけて暴いたり、埼玉県議の海外視察におけるタイでの買春を隠しカメラで暴いたりと、ねちっこい執念ある取材方針で次々と不正を報道している。
朝霞市の件ではその後市が虚偽の報道として抗議、ところが日テレ側に隠し球を見せられて認めざるを得なくなる。
1回の報道では全部見せず、隠し球を持っている粘着質が素晴らしい。ビバ粘着。朝霞市から日テレへの謝罪はまだないようだ。
しかし何と言ってもこの番組の見どころは一連の架空請求への追求である。視聴者から寄せられた架空請求の請求先にディレクターのイマイ氏が電話取材をする。
最初イマイ氏はあくまで騙されているふりを装う。彼の朴訥とも思える語り口に業者側は騙されマニュアル通りの対応をする。曰く通信料、曰く延滞金、曰く請求額50万円。
しかしその裏では日テレの綿密な取材が開始されているのだ。請求会社の住所が架空であることをつきとめ、会社の登記簿を調べ、責任者の住所までつきとめる。
その上でイマイ氏はまた電話をかける。しかし今回は調子づいている相手に少しづつ疑問を投げかけ始める。
「住所に会社がないようなんですが。」「アクセスした記録がないんですが。」 次第に説明が面倒になった相手は請求を諦め電話を切る。
しかしここからが粘着王イマイの腕の見せ所だ。彼は切られた直後にリダイヤルを繰り返す。しかも2回や3回ではない。今回にいたっては300回、30時間にわたって電話をかけ続けるのだ。
イマイ氏はその間声をあらげるでも警察への通報を匂わすでもない。相手への質問をくり返すのだ。次第に音をあげる業者。「おまえは妖怪か」「そのうち電話口からでてくんじゃねえの」
今回の業者の不運なところは日テレ所有の携帯に請求をしてしまった点。
粘着イマイ氏のふところに自ら飛び込んでしまったのである。結局今回は請求会社の責任者も明らかになり、銀行により振込先の口座が閉鎖され、業者の名は東京都の不正請求業者リストに載せられてしまった。これまでに被害者があれば責任者の逮捕もありうるということだ。
まさにサスペンスをみるような面白さ。ぜひ一度ご覧あれ。
またこれまでのイマイ氏の活躍が1冊にまとめられた。「イマイと申します。—架空請求に挑む、執念の報道記録」(ダイヤモンド社刊)がそれだ。イマイ氏の活躍を目にしたことがない方は必読。【吉】