確か「ドラえもん」大山のぶ代の夫の俳優砂川啓介の著書「カミさんはドラえもん」で読んだのだと思うが、大山は一生ドラちゃんの声を演じたいと思っているわけではないらしい。
「そのうちオーディションでも開き、自分も審査員となって、新しいドラえもんの声優を選びたいと思っている」というような記述があったような記憶がある。
さあ、次は誰だ。
林原めぐみか、千葉千恵巳か、戸田恵子か。
あ、この3人にはコレといった根拠はなくて、ふと頭に浮かんだ名前を羅列しただけなのであしからず。
いや、なにも女性にこだわることはないのである。
初代のドラえもんは、キング・オブ・おっさん声優の富田耕生だったというではないか。
が、これだけ大山の声が世間に浸透してしまった現在、今さら全く違うイメージで出直すのは難しかろう。
そこで、私が推したいのは、松竹芸能所属・T.K.Oの木下隆行である。若い頃の山田吾一を大きくしたような風貌の男である。
コントや漫才で「ドラえもん」ネタを演じるチームは数あれど、中でも木下のドラえもんは絶品だ。
のび太に扮した相方の木本が「ドラえも〜ん、○○してくれよ〜」と言えば、「あららら、のび太くんったら、もう、いっつもいっつも」と大山の声帯模写で応えるのだが、この台詞を言う間がおそろしく長い。中国三千年、悠久の間と言っても過言ではない。いや、過言だけど。
そして、極め付きなのが、「いっつもいっつも」の部分だ。
これは「いっつもいっつも」ではなく、「イッチュモイッチュモ」と発音する。
この「イッチュモイッチュモ」というフレーズのみで、私は木下を次代ドラえもん声優として認めても良い。
「とはいえ、コレってお笑いコンビの単なるモノマネじゃん、演技が出来なきゃ声優は無理」だって?
思い出してほしい。ルパンの悲劇を。
軽妙洒脱な演技とルックスで、これぞ生けるルパン、ルパン三世は一世一代のものと思われていた山田康雄が亡くなった後、一体どうなったか。
あまたいるプロの声優たちを起用せず、モノマネ番組で「オ〜レ、ルパァ〜ンしゃ〜んしぇ〜ぃ」などとルパンのモノマネを持ちネタにしていたモノマネタレントの栗田貫一が二代目ルパンになってしまったではないか。
未だに納得できない「ルパン」ファンも少なからず存在するようだが、どうやら一般的にはすっかり認知され、栗田ルパンの新作もどんどん作られている。
さらに栗田は、NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の二代目ドン・ガバチョ声優だった名古屋章氏が急逝した後、三代目ドン・ガバチョとしても活躍しているのである。
このように、ものまねをする芸人が後を継いでも問題ないのだから、私はT.K.Oの木下を次代のドラえもん声優に推す。
そして、スネ夫に、おなじみの台詞「のび太のくせに生意気だぞ」ではなく、「おい、ドラえもん、お前、松竹芸能のくせに生意気だぞ」と言ってもらいたい。【み】