テレビをこじらせた東京福袋が書いたノンキなテレビコラム集。

バラエティ界の明日を担う「お笑いゆとりスリー」

スマホを見る女性

「お笑いゆとりスリー」(2016年3月25日/フジテレビ)。

お笑い界、そこはかつて上下関係や礼儀作法などに非常に厳しい世界だった。しかし、時代は移り変わり、上下関係も希薄になり、怖い先輩も消え続けている。そんな環境で甘やかされて育ってきた芸人たち、それがお笑いゆとり世代。
– オープニングナレーション(アルコ&ピース平子)より

若手芸人の狩野英孝、澤部佑(ハライチ)、カズレーザー(メイプル超合金)の3人を「お笑いゆとり世代」、田中卓志(アンガールズ)とカンニング竹山の二人を厳しい先輩芸人である「お笑い団塊世代」と設定。業界のルールや先輩後輩の礼儀等について団塊世代がゆとり世代にお説教するというトークバラエティ。

番組冒頭のゆとりスリーのトークは、「先輩に対するタメ語とか粗相はよくやります。でもね、ボク、後輩にタメ語使われても全然オッケーなんですよ」(狩野)とか「ウチの事務所はやるせなす中村さんで怒る人ストップしちゃったんで、もういないんです」(澤部)とか、もう終始こんな感じのゆるさ。
そこへ厳しい先輩という名目で出てはいるけれど、頻繁にドッキリに引っかかったり後輩にしつこくからかわれたりするたび大きな笑いをとる効率の良いいじられ役として大活躍中の竹山と田中である。彼らがいくらゆとりスリーに説教したり怒鳴りつけたりしても、結局は失礼すぎる後輩達にナメられてしまうという構図を楽しむ番組なのである。

特に前半の田中による紅茶についてのレクチャーの時間が面白かった。
レクチャーに入る前にまずゆとりスリーが紅茶についてフリートーク。その様子をモニタリングする田中。ところが3人とも紅茶にはまったく興味がないということでまるで話が弾まず、ひたすらだらけているところへ田中が乱入。

紅茶をバカにすんじゃねーよ! 紅茶をちゃんと入れないからちゃんと飲めねえんだろう」と3人を怒鳴りつける田中。ナンナンスカ、ナンナンスカイキナリ…などと3人がブツブツ文句を言うと、澤部の頭をひっぱたいて「オレはやるせなす中村さん以来の怒る先輩だぞ!」。ああ、素晴らしきナベプロの連携プレイ。

というわけで、田中のレクチャー開始。
実は田中はNHK教育テレビの「極める!」という番組で「田中卓志の紅茶学」(2011年6月度)という講座を担当していたほどの紅茶通なのだ。「紅茶の旬は今頃である」とか「ダージリンのファーストフラッシュとセカンドフラッシュを飲み比べる」とか、笑いの要素一切ゼロのガチ紅茶教室。

また「紅茶といえばティーパーティ」であり、ティーパーティではクスクス笑い程度のトークが良いのだと言う田中。ティーパーティは紅茶好きが集まる大人の社交場なのでテレビのような爆笑ネタは要らないというのだ。

そこでゆとりスリーが順番にティーパーティトークにチャレンジ。
一番面白かったのがカズレーザーの「ワタクシいつもこういう赤い服を着させていただいてるんですけど、妹と会う時だけ、妹が恥ずかしがるんで黒い服を着るようにしてます」 という話。案の定、田中から「ちょっとオモシロ過ぎる!」とダメ出しをくらっていた。
ちなみに田中の評価が高かったのは、狩野の「ここに来る時に、あのー、電車で、来たんですけど、乗ろうと思ってた電車を、乗り遅れまして」というもの。ティーパーティ的にはこの程度がちょうどいいらしい。

和やかなこと風の如く、緊張感なきこと林の如く、無礼なこと火の如く、緩きこと山の如し。明日のバラエティ番組界に革命をもたらすお笑い風林火山が送る愉快な1時間。

生意気だけど可愛げがあってポンコツに見えるけど実際は勘所をしっかり押さえているこの3人ならではの好企画。先輩芸人をチェンジして今後シリーズ化希望。いや、多趣味な田中にはお笑い団塊レギュラーとして毎回あれこれレクチャーしにきてほしい。

なお、この番組での「ゆとり世代」とは、先輩に対して敬語を使わなかったり酒席に誘われても気が進まなければ断ったり厳しく叱られても骨身に堪えないという、無礼かつ無邪気な若手芸人達を指している。
一方、彼らの先輩世代の芸人を「お笑い団塊世代」と呼んでいるのだが、この呼び名がどうしても気になってしまってナレーションが入るたびに集中がそがれるのだった。
細かいこと言って申し訳ないのだけれど、そもそも「団塊の世代」というのは「1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれて、文化的な面や思想的な面で共通している戦後世代」なのだし、本来の意味の「ゆとり世代」は「狭義では1987年4月から1996年3月生まれ」を指す。

「団塊世代」じゃなくて「中堅世代」とか「ニュー中堅世代」とか、何か他にもっといい呼び名がありそうだよね。【み】