ミーンとなる声、ビーンとなる声

突然ですが、皆さんは「好きな声」がありますか?
私はあります。

かつては少年ヒーロー役時代の神谷明、その後、五エ門・ハーロック時代の井上真樹夫の声をこよなく愛する時代などを経て、現在は國村隼の一択。
國村隼がヒロインの夫役で出ずっぱりだった「芋たこなんきん」が再放送されていた今年上半期は毎日幸せだった。

一択と書いたけれど、漫才コンビ「大自然」のロジャーの声も本当に良い声。
芸人の中には自称他称を含め「美声」とされている人が少なくないが、真の美声はロジャーだけ。ケンコバも麒麟川島もライセンス藤原も私に言わせれば偽美声である。

とはいえ、子どもの頃から耳のトラブルが絶えなかったので、私の「美声」判断はもしかしたら間違っているのかもしれない。

幼い頃から耳が弱かった。
金属音や甲高い音が苦手だった。耳の奥にキンキン響いて不快だった。
母や近所のおばさん達がおしゃべりの合間に大笑いしていると、あまりの騒がしさについ耳をふさいで母に叱られた。

高校生の時に甲高い音が頭に響くのがつらすぎて耳鼻科に行ったところ「耳管が詰まっている」と診断され、鼻の穴から金属の管を押し込まれ勢いよく風を吹き込まれたことがあった。これがもう非常に痛い治療で治ったのか治らなかったのか覚えていない。金属の管が怖ろしくてその後通院しなかったと思う。

二十代になって代々木体育館で行われたエアロスミスのコンサートに行った夜、酷く耳鳴りがした。でも、こういう耳鳴りはいつも一晩寝れば治っていたのでたいして気にせずほったらかしにしていたら、3日たっても4日たっても耳に違和感がある。ぐわんぐわんとやけに音が響くのだ。
面倒だったが職場の近くの耳鼻科に行ったら「片方の耳のある音域が聞こえなくなっている」と言われた(右か左か忘れてしまった)。「もっと早く病院に来ればステロイドを使って治せた」とも言われた。
耳の不快な響きに関しては、「聞こえない部分を補おうとして反対側の耳が音を反射させているので音が大きく響く」と言われた気がする。「聞こえない音域がある」と言われたのがショックでよく覚えていないのだけれど。

ショックといえば、この耳鼻科で聴力検査をする時にイヤホンのサイズが合わなくて「耳の穴が小さい」と言われたのもショックだった。
「ケツの穴が小さい」みたいで情けないし心細いではないか!

というわけで、耳に関してははなはだ怪しい私だが(どうせ耳の穴も小さいし)、どうかこの意見だけは聞いてほしい。

世の中には「ミーンとなる声」と「ビーンとなる声」がある。

たとえば、平田真菜とよこざわけい子と金田朋子と高木ひとみ○は耳の奥がミーンとなる声で、加藤精三とかまいたち濱家は耳の奥がビーンとなる声である。

ちなみにチョコプラ松尾がコントで多用する高音の作り声は、人工的にミーンを発生させている。
もひとつちなみに高木ひとみ○は「ぽんぽこ」という男女コンビのひとり。「○」までが芸名。伏せ字ではない。読み方は「たかぎ ひとみまる」だ。

頭に「ミーン」と響く声と頭に「ビーン」と響く声。
どうですか、伝わってますか? 意味わからないですか?
誰かの声が脳にミーンと刺さったり、声を聴くたび脳がビーンと震えたりしませんか?

で、これは「世の中」にはそういう人達がいるというだけであって、「人間はミーンとなる声とビーンとなる声の2種類しかいない」という話ではないのでどうか誤解なきよう。
もうひとつ誤解しないでもらいたいのだけれど、「ミーン」も「ビーン」も「美声」「悪声」とは別の方向の感覚であって良し悪しとは関係なく、ここにあげた人達の声を褒めてもけなしてもいないのでどうぞよろしく。【み】

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