佐野史郎で本当にいいのだろうか

生放送!シンガーソングライター夢の名曲集」(NHK衛星2)。
20時から4時間にわたって主にライブ映像を中心にフォーク・ニューミュージック系のミュージシャンのクリップをオンエアする企画である。フォーク・ニューミュージック全盛の時代のラジオ番組をイメージしているようで、NHKのラジオ用スタジオから佐野史郎と中川緑アナウンサーがDJ風に電話やFAXのリクエストを読みながら番組を進行していく。
この企画、今回で3回目らしいが、司会はずっと佐野が務めているようだ。佐野は自身もライブハウス等で活動しているミュージシャンの顔もあるし、そのせいかフォーク・ニューミュージック系のミュージシャンとの親交もあるようだ。また、フォークに関しては一家言ある“マニア”でもあるらしい。番組中、「僕はファンですから」とか「佐野さんはマニアですもんね」といった発言を何度か聞いた。あるグループのメンバーの名前を間違えて言った後、「いや〜、僕でも何でも知ってるというわけではないんですよ」などという不遜な言い訳もしていた。
ラジオ番組風のセット、電リク形式、司会がフォーク通の佐野……と、番組の企画に非常にマッチした構成ではあるのだが、このようなマニアックな企画の場合、かえってその工夫が邪魔になったりもする。
マニアというのは趣味が細分化されている上に思いが深い。
「フォークに詳しい佐野サイコー!」と感じる人間がいる反面、「こんな程度でマニア面する佐野ってどうよ?」と思う人間も同じくらい、いや、それ以上にいるのではなかろうか。いや、佐野自身、そして佐野の知識やフォークに対する愛情を否定しているわけではない。マニアとはそうしたものなのだ。
映画、アニメ、車、ミリタリー、鉄道、ジャンルを絞った音楽など、コアなファン層をターゲットにする企画なら、MC抜きでひたすら映像を流すとか、アナウンサーによる定時のニュースを読むような無味無臭の進行の方が見ていて楽だ。
ちょっと詳しいからとかすごく好きだからといった理由で起用されたタレントの司会はマニアックな番組には不向きだと思う。他のファンの蘊蓄や自慢ばなしを一方的に聞かされるのは、マニアにとってこれほど辛いことはない。
いっそそのジャンルに全く無関係なバラエティタレントが賑やかに番組を進行していってくれた方が余程マシかもしれない。【み】

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