「ひょうたん島」は本当に日本一なのか?

今日オンエアのテレビ放映開始50周年の記念番組「今日はテレビの誕生日」(NHK総合)内で、片山総務大臣がNHK会長に記念切手の初刷を贈呈するシーンが放送された。
この記念切手は、「テレビ局タイトルの鳩と街頭テレビ」と「『ひょっこりひょうたん島』の人形と放送開始当時の家庭用テレビ」の2種類の図柄がある。片山総務大臣は「ひょうたん島」の切手を指して「これが日本で一番人気のあるキャラクタ」と言っていた。
果たして本当なのだろうか?
おそらく郵政事業庁かNHKの関連機関あたりが実施したアンケートの結果なのだろう。だが、考えてみてほしい。貴方が「好きなキャラクタ」のアンケートを実施しようと思ったら、どんな形式で作成するだろうか。

■あなたの好きなキャラクタは?

私ならこんなスタイルのアンケートは作らない。記入式のアンケートは答えにくいからだ。

■あなたの好きなキャラクタは?(複数選択可)
ひょっこりひょうたん島
ブーフーウー
鉄腕アトム
宇宙戦艦ヤマト
機動戦士ガンダム
その他

このような選択式のアンケートにすれば、回答率がぐっと上がるはずだ。だが、この場合、選択肢にないキャラクタをわざわざ記入してくれる回答者は少ないと思われる。そして、アニメやキャラクタに興味のない者や詳しくない者は、選択肢の中から自分が「好き」なものではなく、自分が「知っている」「聞いたことがある」タイトルを選ぶのではないだろうか。つまり、アンケート作成者が選択したキャラクタが有利になるわけだ。


「ガンダム? 知らんなあ。ヤマト? 戦艦大和か。ああ、ひょっこりひょうたん島なら儂も知っとるぞ。これにしておくか」「ブーフーウーはないの? しょうがないわね、じゃ、ひょうたん島にしときましょう」……実際、どのような形で「日本で一番人気のあるキャラクタ」を決定したのかはわからないが、こんな状況が展開されたとしてもなんら不思議ではない。
カラーのリメイク版が制作されている上、DVDがリリースできるほどオリジナルの映像が残っていること(人形劇クロニクルシリーズ「ひとみ座の世界 ひょっこりひょうたん島」「ひとみ座の世界2 新諸国物語・笛吹童子」アミューズソフト販売)、当時のファンが克明な記録を残していること(「ひょっこりひょうたん島熱中ノート 」伊藤悟著/メディアパル刊)という好条件に加え、オリジナル放映時の脚本家だった井上ひさしが小説家・劇作家として今も健在なこと、サンデー役の声優・中山千夏の知名度(特に中高年層)、メインキャラの声優が現在も第一線で活躍中なこと(残念ながらドン・ガバチョ役の藤村有広は亡くなってしまったが)など、NHKがプッシュしやすい条件、NHKをよく視聴すると思われる中高年層にアピールするのに有利な条件が揃っている。


「ひょっこりひょうたん島」が日本一人気のあるキャラクタなのではなく、NHKが一番人気を上げたいキャラクタだということではないのか。
それはともかく、大臣から会長への贈呈シーンなんてNHKの社内報にでも掲載しておけばいいことで、わざわざ貴重な生特番中に時間を割いて放映する必要はあるまい。せいぜい定時のニュースで「本日、片山総務大臣がNHK会長にテレビ50周年記念切手の初刷を贈呈しました」と一言アナウンスすれば済むことだ。限られた時間の中でいかにも慌ただしく司会を務めた黒柳徹子や久保純子が気の毒だし、そんなものを見せられた視聴者の身にもなってほしい。【み】

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