粉モノのジンクス ―「おかあさんといっしょ」のヒット曲―

キテるらしいじゃないか、たこやき。

7月19日にリリースされたCD 「かっぱなにさま?かっぱさま!/たこやきなんぼマンボ」(ポニーキャニオン)の売れ行きが好調らしい(7/31付スポーツニッポン)。
コドモたちはマンボのリズムに合わせてこぞって腰をふり、その母親たちは歌のおにいさん(杉田あきひろ)の濃厚な笑顔や体操のおにいさん(佐藤弘道)の赤く塗られたほっぺたにうっとりしている、らしい。
無論、歌のおねえさん(つのだりょうこ)のほんわかはんなりした関西弁のセリフや「デ・ポン!」のおねえさん(タリキヨコ)の潔い腰の振りっぷりにハートをわしづかみにされている父親たちも少なくないだろう。
スポーツニッポンの記事によると、「かっぱなにさま?かっぱさま!/たこやきなんぼマンボ」の初回プレスは7万枚で、あの「だんご3兄弟」と同じなのだという。

思えば、1999年は「だんご」で明け(「だんご3兄弟」は「おかあさんといっしょ」の1999年1月の歌)、「だんご」で暮れた(先代の歌のおにいさん・速水けんたろう、先代の歌のおねえさん・茂森あゆみが、大晦日のNHK「紅白歌合戦」に「だんご3兄弟」で出場)。

普通、“NHKの幼児番組の歌”というと、「ピアノかエレクトーンの伴奏」「澄んだ歌声」といったイメージがあるのではなかろうか。
しかし、「だんご」も「たこやき」も“NHKの幼児番組の歌”という一般的なイメージを覆すユニークな曲。
無表情に唄う「だんご3兄弟」。感情をこめずに唄うのは、「だんご3兄弟」をプロデュースした佐藤雅彦氏の指示だったらしい。NHKの若者向け音楽番組「ポップジャム」やNHK教育テレビ40周年の記念イベントに登場した「だんご3兄弟」は、華やかな衣装を身にまとったおにいさん(速水けんたろう)、おねえさん(茂森あゆみ、松野ちか)が華麗なタンゴを唄い踊った。

「おかあさんといっしょ」史上初の関西弁をフューチャーした曲「たこやきナンボマンボ」。
袖にフリルがこってりとほどこされたシャツに体にフィットするパンツという正統的なマンボ仕様のコスチューム、そして、頭にはたこやきのかぶりものである。ラテンを意識した濃いめのメイクでマラカスをふりつつダイナミックに踊るおにいさん(杉田あきひろ、佐藤弘道)とおねえさん(つのだりょうこ、タリキヨコ)。
「おかあさんといっしょ」には、「サっちゃん」とか「あめふりくまのこ」といった穏やかな歌しかないと思いこんでいる人が見たら、腰を抜かすような光景である。
実際には、これまでも「おかあさんといっしょ」をはじめNHK教育テレビの幼児番組では、突拍子もない歌が結構オンエアされているのだが、その中でも「だんご」と「たこやき」は群を抜いてインパクトがあるのは間違いない。

さて、「おかあさんといっしょ」から生まれたインパクトのある歌、という以外の、「だんご」と「たこやき」の共通点とはなにか。
何を隠そう(何も隠しちゃいないが)どちらも“和風の粉モノ+ラテンのリズム”なのである。
粉モノ、つまり、粉からこしらえた食べ物。

となると、「たこやき」の次にブレイクするのは、やはり粉モノか。
和風の粉モノというと、まんじゅう、うどん、もんじゃ焼き、お好み焼き、すいとん…。
いやいや、餃子、春巻、焼売といった中華の粉モノも捨てがたい。
というわけで、「だんご」「たこやき」に続く「おかあさんといっしょ」のヒットソングを大胆に予想してしまおう。

本命:餃子
対抗:もんじゃ焼き
大穴:すいとん

チャイナ風のメロディラインで点心たちの友情を唄う「餃子の歌」。
「たこやき」の関西弁に倣って、江戸っ子風の巻き舌が炸裂する「もんじゃ焼きの歌」(サビはきっと「どんなもんじゃ〜」だろう)。
おじいちゃんおばあちゃんの世代には悲しい思い出がある食べ物だけど、今は野菜たっぷりヘルシーでオイシーと唄う「すいとんの歌」。
人形劇「にこにこ、ぷん」の中で唄われた「お風呂がすきなスパゲッティー」という曲があるが、ラザニアもマカロニも全部まとめて「パスタの歌」というのもアリか。髭をつけたら日本一の歌のおにいさん(杉田あきひろ)に、立派なつけ髭を装着してカンツォーネ風に朗々と歌い上げていただきたい。

と、思わず興奮して予想してしまったわけだが、実は私が粉モノに目がないのだった。ホットケーキもクレープもドーナッツもピザもパンも大好き。醤油味よし、ソース味よし、しょっぱくても甘くても美味しい。
嗚呼、粉モノソングよ、永遠なれ。【み】

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