「おかあさんといっしょ」9月の歌の不思議

「おかあさんといっしょ」の9月の月の歌「みなみのしまのこどもたち」。月の歌のクリップとしては異例の野外ロケものだ。沖縄民謡調のメロディで、サビの部分のはいだの巧みなコブシ回しが光る。ちなみに作詞は小室等というビッグネームだ。
沖縄と思しき美しい海辺で、沖縄風味の衣装に身を包んだ歌のおにいさん・今井ゆうぞうと歌のおねえさん・はいだしょうこが唄い踊る。青い空、青い海、白い砂。ああ、沖縄っていいな。……といった雰囲気のまるで沖縄県のプロモーションビデオのようなクリップなわけだが、でも、なぜ今沖縄?
いや、これが沖縄じゃなくて奄美大島でも伊豆熱川でもグアムでもサイパンでも、やはり「?」なのである。
だって、どう見たって夏のイメージなんだもの。
そういえば、かつて「おかあさんといっしょ」が地方局でも収録していた頃、8月になると沖縄でスタジオ収録かコンサートが行われていた時期があった。既に地方局での収録はなくなってしまった今でも「おかあさんといっしょ」の夏といえば沖縄…という印象がある。「仕事にかこつけて海水浴とは」なんて野暮な事は言わない(実際、仕事の合間に彼らが沖縄の海で遊んでいたかどうかは知らない。単なる沖縄=海というイメージなので誤解なきよう)。「おかあさんといっしょ」のキャストやスタッフが真夏の沖縄の美しい自然の中でリフレッシュしてくれるのであれば、それにはなんの文句はない。
だから、現在のメンバーで沖縄にロケに行き、海辺で歌のクリップを収録するというのもアリだろう。
でも、月の歌のクリップとなると、話はまた別だ。
沖縄はまだまだ暖かいのだろうし、関東地方だって9月の半ば頃まで残暑が続くのだから、夏っぽいクリップが流れていても、それほど違和感はないかもしれない。
しかし、あっというまに秋風が吹く。9月の終わり頃には、すっかり涼しくなっているはずだ。
でもなー、一番の問題はクリップの出来なのかも。
「子ども向けの番組にこそ季節感を大切にしてほしい」なんて言うつもりは毛頭ない。真夏にスキーウェアを着ていようが、真冬にスキューバダイビングの歌を唄おうが、クリップが面白ければきっと気にならないはず。むしろ斬新と感じたかもしれない。
「みなみのしまのこどもたち」は、せっかくの野外ロケだというのに、ただ海辺で二人が楽しそうに唄ったり踊ったりするだけ。なんか中途半端で、インパクトに欠けるクリップなのだ。
「イカイカイルカ」や「たこやきなんぼマンボ」や「おすしのピクニック」みたいなインパクトソングをこよなく愛する私としては、こういうおとなしめのクリップにはついつい点が辛くなってしまうんだけど、せめて衣装替えくらいしてくれればいいのにと思う。
今年度は、ここまで「いっしょにつくったら」「木もれ日の歌」「パパパ」「すごいぞ!じゃがいも」と、派手なクリップが続いたから、余計にそう思うのかもしれない。
先々代の速水けんたろう&茂森あゆみ時代に、番組初の野外ロケクリップという「ヒーローくんとアイドルちゃん」「しんゆうになろう」の2本が突然オンエアされたことがあった。唐突に登場し、その後、ほとんどオンエアされなかったレアなクリップだが、「なるほど、スタジオ収録だけでなくて、こういうクリップも作れるのか」と非常に新鮮に感じたものだった。
今回の「みなみのしまのこどもたち」も月の歌ではなくて、単発のクリップとしてオンエアされていたらファンの間でも高く評価されたのではなかろうか。
それはそうと、どうせだったらもっと本格的な琉球舞踊の衣装を着せてほしかったなあ。紅型を着たしょうこおねえさん、綺麗だろうになあ。カチャーシーを踊りまくるゆうぞうおにいさんも見たかったぞ。【み】

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