「テレビまつりだ!ぐ〜チョコランタンとともだちいっぱいコンサート」見聞記

8月3日土曜日。照りつける夏の日差しの中、渋谷・NHKホールへ。
テレビ放送50年記念・NHKホール30年記念 NHKチャリティーコンサート「テレビまつりだ!ぐ〜チョコランタンとともだちいっぱいコンサート」というイベントの初日である。初日の午前の部を鑑賞。怖ろしいほどに長いタイトルだ。長いにもほどがある。

これは、NHKの開局50周年とNHKホールのオープン30年記念を兼ねて開催される子ども向けのイベント。NHK50周年のキャンペーンキャラクター「ひょっこりひょうたん島」のドン・ガバチョとNHKエデュケーショナル制作の乳幼児番組の出演者の面々に加え、NHK大阪からストレッチマンを迎えた豪華なショーである。
「いないいないばあっ!」「つくってあそぼ」という乳幼児に絶大なる人気を誇る番組のキャラクタが登場するということで、客席の平均年齢が低い。「おかあさんといっしょファミリーコンサート」の客層よりも2〜3歳若い感じ。
保護者の膝にがっちりキープされている小さな観客が多いせいか、意外と場内が騒がしくないのが嬉しい。とはいえ、場内撮影禁止にもかかわらず、あちこちで盛んにフラッシュが焚かれ、げんなり。

さて、「ぐ〜チョコランタン」の4匹が唄う「席に着け」「もうすぐ始まる」といった歌詞の1ベル代わりの曲が流れ、いよいよ開幕。

さて、突然ですがここでクイズ。

ワンワン、ゴロリ、ジャコビ、JBの中で一番大きいのは誰でしょう?

答えは一番最後に!

もくじ

みっつの玉さがそう

テーマ曲「ともだちいっぱいカーニバル」で、出演者たちが賑やかに登場。
ワンワンがいる。ズズがいる。ワクワクさんがいる。エリックがいる。ステージにおもちゃ箱をひっくり返したような華やかで楽しいオープニングである。
お久しぶりの「いないいないばぁ!」りなちゃん。テレビで見ていた印象よりもかなり大きい。
そして、ビックリするほどふうかちゃんは小さい。りなちゃんの半分くらい。小さすぎて顔の造作がわからないほどだ。動力は電池。嘘だけど。

番組ごとに自己紹介した後、ドーモくんとドン・ガバチョ登場。ドン・ガバチョ人形、顔は人形劇そのままなのだが、身体は人間。半端なサイズでコワい。
ドン・ガバチョの声は先頃決まったばかりの3代目・栗田貫一。先代の名古屋章ではなく、初代の藤村有弘に近い発声である。そつなくこなしてはいるが、これなら何も栗田じゃなくてもいいような気がする。もっと個性的な声、演技の持ち主を起用しても良かったのではなかろうか。
デイリースポーツに載っていた記事によれば、「ひょうたん島」の作者・井上ひさしがテレビで栗田の真似を見て起用を決めたということだが、どうして藤村風の演技なんだろう。井上やNHKは名古屋章の声に納得していなかったということか? なんだか失礼な感じ。

さて、今回のテーマは「50年に一度しか見つけられない3つの玉を集めれば、なんでも願い事が叶う」という、ドラゴンボールみたいなおはなし。
赤い玉は“花さく野原”、青い玉は“青い海”、緑の玉は“緑の森”に。出演者がチームに分かれて別々に探しにいくというあたり、「おかあさんといっしょファミリーコンサート」の「あ・い・うをさがせ」と似た構成。

赤い玉みつけた

まずは赤い玉を探す「おかあさんといっしょ」チーム。
軽快に唄い踊りながら登場した歌のおにいさん・今井ゆうぞうと歌のおねえさん・はいだしょうこ。歌はおなじみ「ピクニックマーチ」。

続いて、体操のおにいさん・佐藤弘道と「デ・ポン」のおねえさん・タリキヨコが、大荷物を担いでよろよろ登場。
タリのリュックサックには巨大なおにぎりやらドーナッツやら食料がギッシリ。佐藤が引っ張ってきたのは、家財道具一式を乗せた大八車。「単身赴任でも大丈夫な冷蔵庫もあるよ」と余計なことを言う佐藤。
と、軽いボケをかまして、4人で「あ・い・う・え・おにぎり」「たまごまごまご」の2曲を唄って、おなかいっぱいになったところでひとまず幕。

幕間に登場したのは「にほんごであそぼ」の神田山陽。番組でおなじみの、背中に椅子がくっついたスタイルである。山陽が「痛快! にほんご劇場!」と言った後、観客に「待ってました!」と無理矢理声をかけさせるコール&レスポンスあり。
赤い玉を探す秘密「うたをうたいましょう」を明かして山陽は退場。

続いて登場は「ぐ〜チョコランタン」の4匹衆。
発明王ジャコビが今回開発したのは、玉を集める装置。客席のパワーを集めると赤い玉がゲットできるという摩訶不思議なマシンである。
今井、はいだ、佐藤、タリも加わり、イベント定番曲の「てをたたこ」「おーい!」を客席と共に唄ってパワーを集めるというセオリー通りの展開。無事パワーが集まって赤い玉ゲット。

緑の玉みつけた

神田山陽再び登場。もちろん今回も「待ってました!」を客に強要。客席から今ひとつ大きなかけ声が飛ばなかったものの、山陽、あっさりOKを出し、緑の玉を探す秘密「なまえをこたえよう」を提示して退場。
続いて、緑の玉担当の「英語であそぼ」班の出番だ。

客席通路から「What do you like to do?」を唄いながら「英語であそぼ」のエリックが登場。オレンジと黄色の鮮やかな衣装が照明に映え、生エリック登場に場内のテンションが高まる。
その後、エリックはMAYAとJBのいるステージ=英語の森に上がり、英語で名前を答えるクイズに挑戦。

以前の「英語であそぼ」は、お姉さんが中心になって歌やドラマを構成していたが、現在はお姉さんにあたるMAYAがあまり活躍していない為、エリック、JB、MAYAがステージに揃っても、今いち雰囲気が盛り上がらないのが痛い。
とはいえ、DOGだのMONKEYだの大声で叫んで、小さな観客たちはそれなりにストレスを発散できていたようだ。
そして、「英語であそぼ」チームはクイズを順調にクリアして緑の玉獲得。

青の玉みつけた

またしても神田山陽、幕間に登場。もちろん、観客に「待ってました!」を言わせるのはお約束である。
鋭い「待ってましたッ!」ではなく、「まぁ〜ってまぁ〜した〜」というゆるゆるのかけ声ながら、今回も山陽はあっさりOKを出して、青の玉を探す秘密を提示…するはずが、「青の玉を探す秘密はない」という新展開。

さて、小さな観客お待ちかねのワンワンの登場だ。
青の玉を探すのは、「いないいないばあっ!」「つくってあそぼ」合同チーム。ワンワンとワクワクさん(久保田雅人)のWおっさんキャラ大活躍。

「わあ、この海、ざわざわしてる〜。アハハって言ってる」「じゃ、こんにちは〜(客席から「こんにちは〜」)。海なのに山びこみたい。んふふ、面白い」と、のっけからワンワン節炸裂。
さらに「にほんごであそぼ」で野村萬斎が踊る「ややこしや」を一節唸り、「あ、みんなもやる? せ〜の」と観客を誘って、小さな人たち大喜び。
ステージを駆け回って息を切らして「ここちょっと広すぎるよね…」と呟いてみたり、元気に踊るりなちゃん(斎藤里奈)に「さすが陸上部だけあるよね」などと余計なことを言ってみたり、相変わらずの暴走機関車ぶり。

元気いっぱいではあるがどこかギリギリの感も漂っていた赤玉チームと緑玉チーム。
しかし、ステージ慣れした大ベテランのワンワンとワクワクさんを擁する青玉チームは安定感抜群。安心して見ていられる。
ステージで見るのは初めてのりなちゃん。番組を卒業してまだ半年もたっていないのに、すっかりオトナっぽくなっていた。テレビで見ていた頃は、「まだ若いのに何でもそつなくこなして立派なものだ」と感心していたのだが、元気いっぱいの先々代・かなちゃん(田原加奈子)、あどけなさ爆発のふうか(原風佳)に比べ、少々弾け方が足りない感じも。

1階席最前列から最後列に向かって青い布を観客に広げさせ「客席に海を作る」という趣向で、観客のテンションさらにアップ。観客が大喜びで布を揺らしているうちになんとなく青い玉ゲット。

キングアイアイの祭壇

幕間にまたまた神田山陽……かと思ったら、山陽の格好をしたどーもくんがドン・ガバチョを伴い登場。「あたしの出番をとるなんて酷い」と後から山陽が出てきておいかけっこ、というミニコント。どーもくんは「どーも」としか喋らないんだけど(喋るというより鳴くという感じか)、その声がキャラのイメージと合わなくてちょっと気持ち悪い。

さて、場面変わって、神殿風のセット。
願いを叶えてくれるキングアイアイの祭壇である。
今回、たった8回のステージなのに、豪勢なセットに凝った小道具、美術に相当金をかけているとみた。

坂田おさむの名曲「わっしょい」にのせて、出演者一同、サンバ風の衣装で華やかに登場。
最初から飛ばしっぱなしの今井、ここでも突出したテンションで盛り上げる。
歌が終わると、一同サンバ風のコスチュームを脱いで、カジュアルな衣装にチェンジ。ちなみに脱いだサンバ衣装はワクワクさんが上手かみて、佐藤が下手しもてに素早くかたづけていた。

見事集めた3つの玉。
赤玉をタリ、緑玉をエリック、青玉をふうかとりなちゃんが祭壇に供える。

すると祭壇の中央のモニタに巨大なサルのCGが現れる。これがキングアイアイらしい。声は玄田哲章。
キングアイアイ曰く、願いを叶えるにはさらに3つの試練をクリアしなければいけないという。

ひとつめの試練

最初の試練は「みんなの元気を見せてくれ」。
巨大な丸い石がステージに登場し、この石を向こうに運べばクリアである。
力といえば、体操のおにいさん。佐藤が石にチャレンジするが、あえなくはね飛ばされ下手しもてにハケてしまう。
筋肉もりもりの佐藤が動かせない石である。万策つきたか。
いや、あの人がいるではないか! さあ、声を揃えてあの人を呼ぼう!

ストレッチマーン!

お待たせしました、ストレッチマン。
「ぬは、ぬは、ぬは、ぬは、ぬはははははっ」とおなじみの笑い声と共に参上。
困った時も困ってない時もとにかくなにがなんでもストレッチをするのが、この人の流儀である。ストレッチマンのコールに合わせて、舞台も客席も全員で筋を伸ばす。

パワーが貯まった出演者一同、石を必死に押す。客席は「よいしょよいしょ」と声で応援だ。
それを見守るストレッチマン。って、見てるだけかよ!
無事に石を運ぶことができ、ひとつめの試練をクリア。

ここでストレッチマン、あっさり退場。えええ〜。
「今日はおそらく空を飛べないだろう」と言って歩いて帰るストレッチマン。

ふたつめの試練

二番目の試練は「みんなの知恵を見せてくれ」。
何をさせるのかと思えば、なんとなぞなぞ。脱力である。
「最初は緑、次に黄色、その次に茶色になって、最後に黒くなるものなあに?」答えはバナナ。
なぞなぞを説いたのは、バナナ好きのスプーであった。

みっつめの試練

最後の試練は「わしを喜ばせてみなさい」という突飛な命題。
「そんなの簡単よ〜」と言い出すタリ。えっ、「デ・ポンをすれば喜ぶに決まってるわよ」とか言うんじゃなかろうな? いや、まさか「私のお色気で喜ばせてあげるわ」だったりして。「さあ、しょうこおねえさんも脱いで脱いで」とか言い出したらどうしよう。わくわく。

そんな私の思いをよそに、タリの提案は「モニタに映ったキングアイアイの顔をこちょこちょすればいいんでしょ」というもの。ちぇ。
ところが、高い位置にあるモニタに手が届かない。高いところといえば…ということで、さあ、皆さんご一緒に!

イチジョウマーン!

イチジョウマンのテーマソング「飛べ!飛べ!イチジョウマン」と共に現れたのは、佐藤扮するイチジョウマン。「やぁ!」「おう!」とかけ声も景気よく、イチジョウマンのテーマを大はしゃぎで唄う今井が可笑しい。
佐藤がひとつめの試練であっさりはね飛ばされたまま戻ってこなかったのは、つまりイチジョウマンのコスチュームに着替える為だったというわけだ。イチジョウマンは身軽に祭壇に登り、キングアイアイのモニタの中に飛び込む。
おどけた顔をしてみたり、ぐるぐる回転したり、モニタの中で延々と繰り広げられる佐藤弘道ショー。佐藤ファンにとっては至福のひとときであっただろう。

で、佐藤のミニコントコーナーが終わっても「わしを喜ばせてみなさい」というお題をクリアできない一同。
ふと、祭壇の玉座に触ると「アイアイ」の1フレーズが流れたため、一同は「アイアイ」を唄い踊ることに。
キングアイアイの大好きな歌ということで、無事「わしを喜ばせてみなさい」クリア。バンザイ。

さて、願いを叶えてやろう…となった時、スプーが「ここにいるみんなの願いをちょっとずつ叶えてほしい」と提案。
キングアイアイに「大きな願いは叶えられないぞ」と念を押されたが、アネムも「小さい願いでいいの。ここにいる全員の願いを叶えてちょうだい」。
すると、子どもたちの願いがちょっとずつ叶う魔法の金色の粉が授けられる。
ドン・ガバチョは魔法の粉を携え、子どもたちに配るべく、飛行機に乗って世界へ旅立つ。めでたしめでたし。

50年のおまつり

3つの玉の願いが叶ったので「50年ぶりのおまつりをしよう」というわけで、ここからは番組ごとにミニコーナー。
「おかあさんといっしょ」の今井とはいだは、「虹のむこうに」をデュエット(また坂田おさむソング!)。
続いて「いないいないばあっ!」チームは、今放送中の体操「ぐるぐるどっか〜ん!」。「そのままのお席でね」とワンワン。しかし、この体操、ハイハイしたり床を転げ回ったりするんだよなぁ。どうしろっていうんだ、ワンワン。
「英語であそぼ」チームは「Look For ABC」。
「つくってあそぼ」チームは、プログラムに挟み込まれていたワクワクさんの顔がプリントされた紙を使って、みんなで簡単な工作。紙をくるくる丸め、何カ所か切れ目を入れてから真ん中の部分を抜き出すと「ほ〜ら、お花ができましたぁ」…って、ワクワクさん、これ、クリスマスツリーの工作じゃないの?

ここで再び「おかあさんといっしょ」の今井とはいだの歌。4月の月の歌「このゆびとまれ」。先程作ったクリスマスツリー、じゃなかった「お花をふりながら唄ってね〜」ということで、客席一面の色とりどりのクリスマスツリー、じゃなくてお花が揺れる。
そして、いかにもお祭りらしい「月夜のポンチャラリン」を全員でお賑やかに。
はいだの確かな音程の澄んだ声がNHKホールに響きわたり、ワンワンが踊る、エリックが踊る、山陽が踊る、そしてストレッチマンまで頭を尖らせたまま踊っている。カラフルな出演者が輪になって踊るさまはETVファンにとってまさに夢の盆踊りだ。

今井とはいだのリードで「弘道おにいさーん!」と観客がコールすると、ステージに1本のライトの筋が伸びる。
上手かみて後方から景気よくバク転しながら飛び出してくる佐藤。
ここ数年の「おかあさんといっしょファミリーコンサート」では、ここでキャーッというママさんたちの黄色い声が飛びかうシーンなのだが、今回の客層は「おかあさんといっしょ」ファンだけではないせいか、黄色い声はほとんど挙がらず、静かな「うぉー」という驚きの声が場内を包む。
「おかあさんといっしょ」の体操「あ・い・うー」から、全員揃ってエンディングテーマ「スプラッピ スプラッパ」で幕。そして、アンコールは、今井とはいだによる「おまつりすんだはらっぱに」。これにて全編終了。

小さな観客たちを退屈させないスピーディな展開。っていうか、ぐ〜チョコランタン、ワンワン、ゴロリ、JBというラインナップで退屈してしまうようなコドモは、このイベントに連れてきちゃいかんだろうという豪華な出演者陣。
3つの体操「ストレッチマン体操」「ぐるぐるどっか〜ん」「あ・い・うー」、大きな青い布やボールを触らせる演出、紙を使った工作など、小さな観客たちが発散できるコーナーをふんだんに取り入れていたことも、場内が騒がしくならなかった勝因であろう。
幕間にスパイスのように登場した神田山陽の使い方も巧みであった。
見ていて心配になるほどに張り切っていた今井の健気さに胸を打たれたし、着実に歌とダンスシーンを支えていたはいだの底力も見逃せない。
異なる番組の出演者やスタッフのスケジュール調整は難しいだろうが、これからもこのような形式のイベントをしばしば開催してほしいものだ。

学校放送のイベントも見てみたい。
たとえば、「うたっておどろんぱ」「まちかどド・レ・ミ」などの音楽の番組チームに、いつもここから、幹てつや、ダンディ坂野といったお笑い系出演者を絡め、緒方賢一、長島雄一、久保田雅人といったおっさん系出演者が好き勝手に暴走しまくる…というイベント。イベントの最後ははせみつこの「あいうえお体操」でキマリだ!(キマリなのか!?)

さて、冒頭のクイズの答え。正解はジャコビ。ちなみに一番小さかったのはゴロリだった。
こんなイベントでもなければわからないETV豆知識。これだけでも見にいった価値があるというものである。【み】

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