1999年春「ファミリーコンサート」見聞記

「おかあさんといっしょ」が4月にリニューアルされてから初めてのファミリーコンサート。今回は、先代出演者と現役出演者が共演する豪華な企画である。これはどうあっても見逃すわけにはいくまい。

「おかあさんといっしょ」のファミリーコンサートは、往復ハガキで申し込んで抽選で当たった者だけがチケットを購入できるというシステム。ハガキは「一人一通」という制限がかけられている。昨年度、コンサート、イベント、スタジオ収録、ことごとく抽選にハズれた運のない我ら東京福袋(みやした・吉野)。我が家には落選ハガキが100枚以上つくねてある。
そして、99年春のファミリーコンサート。案の定、落選である。落選ハガキによると、応募総数56,010通だったという。NHKホールは3,000人程度の定員のはずだから、全6公演で18,000席。単純計算すれば、約10分の3の確率か。

しかし、今回も、神も仏も我々をお見捨てにならなかったのである。
結論をいえば、5/1午前(2階B席)、5/1午後(2階B席)、5/3午後(2階A席)と、みやしたは3回もコンサートを観覧する機会に恵まれたのであった。
ゴールデンウィークは、連日、快晴が続き、他にこれといって出かける予定のない私にとっては、まさに“ファミリーコンサート日和”。千秋楽にあたる5/3午後は、当サイト常連で日頃より懇意にしていただいているA氏にご一緒願ったわけだが、オトナ二人連れ、少々会場の雰囲気から浮いているような気もしつつ、席につく。2階センター席の2列目。ただし、すぐ前の席の客が来なかったため、実質的には最前列である。ステージが一望できる絶好の席だ。

会場で配られるパンフレットには、歌のおにいさん(杉田あきひろ)、おねえさん(つのだりょうこ)、体操のおにいさん(佐藤弘道)、「デ・ポン」のおねえさん(タリキヨコ)、先代の歌のおにいさん(速水けんたろう)、おねえさん(茂森あゆみ)、「トライ!トライ!トライ!」のおねえさん(松野ちか)に加え、ぬいぐるみのスプー、みど、ふぁど、れっしー、空男の総勢12名がひしめきあっている。前回のパンフレットは、速水、茂森、佐藤、松野、古今亭志ん輔、みど、ふぁど、れっしー、空男の9名だったわけで、比べてみると、いかにも狭苦しい。

「どーなっつ」4匹衆が唄う1ベル代わりの曲(「席はわかるか」「排泄は済ませたか」などの確認ソング)に続いて、開演ベルにあたる「おまたせしました」の曲が流れると、いよいよ開幕である。

幕があがると、上手かみてから、風船を左手に持ったふぁど、みど、れっしー、空男が並んでいる。会場から地鳴りのような歓声があがる。軽くダンスを披露すると、「おにいさ〜ん、おねえさ〜ん」と、叫んでさっさと退場。ええっ、それだけかい? いわゆる“前説”みたいなものか?
ずいぶん粗雑な扱いを受けているなぁ、と「どーなっつ」たちに同情していると、ステージに、杉田、つのだ、佐藤が登場。

あ、いや、もう1人。誰かいるぞ…タリだ!
「デ・ポン」の衣装を着ていないタリは、一瞬、誰だかわからないのであった。

というわけで、4人が元気よく登場。1曲目は「お〜い!」。そのまま、「アイアイ」「パンダ・うさぎ・コアラ」と、イベントでおなじみの歌が続く。この系統の曲は、おにいさんやおねえさんが、曲の合間に客席に向かっていろいろと声をかけながら唄うわけだが、早口の杉田、声がうわずっているつのだ、いずれも何を言っているのか聞き取りづらい。「パンダ・うさぎ・コアラ」といえば、先代・速水の「おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、お医者さんも学校の先生も一緒に!」という決まり台詞が印象深い。杉田の「今度はおとうさんとおかあさんだけでやってみましょう」の声は、会場のほとんどの子供に無視されたようで、チビスケどもは喜々として踊っていたのであった。

初のコンサートで緊張の深い杉田、つのだに比べ、7年目の佐藤はさすがの貫禄である。見慣れた佐藤独特のくねくねとした柔かい動きは、見る者をほっとさせる。
タリは、「デ・ポン」とはうってかわった快活なイメージ。かたときもじっとしていない。よく言えば元気いっぱい、悪く言えば落ち着きのない動き。スタミナありあまってる感じである。

番組のエンディング曲「スプラッピ スプラッパ」の前奏が流れ、「このラッパは?」「スプーだ」といったやりとりがあり、ここでスプー登場。現在のメインキャラクタであるにもかかわらず、意外と会場は盛り上がらない。
そして、「ボクも唄いたい」と言い出すスプー。「なにが唄いたいのか」と問われ、いきなりつのだに抱きつく。つのだの細い腰に手をまわし、「ムギュー」。いきなりオイシイじゃねえか、スプー。

というわけで、曲は当然「ムギューだいすき」。先代チームの振付をほぼ踏襲しているが、スプーが参加しているため、多少振りが違っている。
「イヌにムギューと抱きつく」という歌詞の箇所では、杉田と佐藤がものすごい切れ味でクルリと振り返ったので、スプーと一緒に私までビックリする。
スプーが退場すると、続いて「バナナのおやこ」。
タリは「踊るのが楽しくてしかたない!」といった感じが好感がもてるが、リズムの取り方が少々独特で、80年代のディスコを彷彿とさせるような重たいステップを踏む。

ここで「どーなっつ」4匹衆が再登場。
番組では、「みど、ふぁど、れっしー、空男」とコールする時、どういうわけか指を折って数える仕草をする杉田。しかも、名前を呼ぶのと指を折るのが微妙にズレるのが気になってしかたない。5/1午前の部では、謎の“指折り”を見せた杉田であるが、5/3午後の部では指は折らず。
先代の数年前のファミリーコンサートでは、「みど」で右手を口の前、「ふぁど」で左手を口の前(これで両手が口の前にかざされ、「おーい!」のポーズになる)、「れっしー」で両手をそれぞれ輪っかにして目の前にあて(れっしーの飛び出した眼球をあらわしているものと思われる)、「空男」で両手で力コブを作るようなポーズ、という振付がなされていたのだが、最初はおにいさんとおねえさんが揃ってやっていたのに、いつのまにかなしくずし的にやらなくなってしまった。不評だったか?

タップダンス風振付の「いつもいっしょに」を唄った後、みどがしょんぼり。皆が心配すると、「だって、歌のおねえさんがりょうこおねえさんにかわっちゃったでしょ? アタシ、今度こそはって思ってたのに」と心情を吐露。慰める3匹。昨年までは、「おかあさんといっしょ」のメインキャラクタだった「どーなっつ」、今や、番組の中の単なる1コーナーの扱いである。「ボクたちは4人一緒に唄うからいいんだぁよね」というふぁどの台詞が哀しい。次に「リズム君・メロディちゃん」を唄い踊って、またしてもあっさりと退場。

ステージにスプー再登場。こやつ、携帯電話なんか持っているんである。
「どーなっつ」のスケッチだったら、きっと「アタシ、携帯電話、欲しいのよね」「でも、パパとママが絶対ダメって言うんだぁよね」「ちょっと見て〜、ママが携帯電話送ってくれました〜」「あ、れっしー、いいなあ」「ボクも欲しいなー」「おぉらは携帯電話はいらないだよ、用事があったら、自分で歩いていくだよ」なんていうやりとりがあって、結局、「僕、携帯電話、ママに返しちゃいました」「アタシもいらない!」「ボ〜クも」「携帯電話より糸電話の方が楽しいだよ」なんていうシンプルなオチになるんじゃないかと思うのだが、スプー、なんのエクスキューズもなしに携帯電話持参である。

電話の着信音。
「もしかして、ガタラットかな?」結局、このコンサートでは、ガタラットに触れたのはこのスプーの台詞だけであった。
「カンタロウさん? カユミさん? ボクの知らない名前だけど、まあ、いいか」こうなると、次に出てくる人物は明らかである。いやがおうでも高まる期待。

「こんにちは〜」ステージの奥から懐かしい声が聞こえる。
下手しもてから速水、続いて上手から茂森が手を飛び出してきた!

会場からは大歓声。歌は、速水作詞作曲の99年2月の歌「あつまれ!笑顔」である。
淡い色のベストとパンツが似合う速水。薄いブルー系の茂森のワンピースの丈の短さとノースリーブの袖口から露になっている腋の下に思わず頬がゆるむ。

「あつまれ!笑顔」が終わると、現役チームもステージに集合。5/1午前の部では、挨拶で速水が台詞をかんでしまったが、即座に「いやぁ、緊張しちゃって」と、難なくフォロー。6年のキャリアは伊達ではない。
ひとしきり先代と現役兄姉が挨拶をかわしていると、佐藤が「りょうこおねえさんってピアノが上手なんだよ」と唐突に言い出す。先代の時代なら、「弘道おにいさん、突然何を言い出すんだ」「いや、急に言いたくなったんだよ」「そうか、でも、あんまり唐突だったので驚いたよ」とでも、つなぐところだろうが、ここでは何もフォローなし。 「カンタロウさんとカユミさんって、けんたろうおにいさんとあゆみおねえさんのことだったのか〜」というスプーのノンキな台詞が続く。

舞台の演出や脚本にかかわったことのある人ならわかると思うが、3人以上の登場人物が同時に登場すると、台詞の分担が非常に難しいものである。
このシーンでは、速水、茂森、佐藤、杉田、つのだ、タリ、スプーの7名が同時にステージにいるわけで、自然なトークをしているように台詞を割り振りするのはさぞ大変だとは思うのだが、会話がちぐはぐな印象は否めない。先代と現役が互いに遠慮しあっているように見えるし、現役チームのコンビネーションのまずさも強く感じる。現役チーム、「仲が悪い」とまではいわないが、「あまり仲よしじゃない」風に見えるのである。たとえば、佐藤あたりが「昼飯食いにいこうか」と声をかけると、「いや、俺、弁当持ってきましたから」「あたし、友達と約束があるんです」などと断られてしまっているようなイメージがある。

「ムギューだいすき」では、つのだの柳腰に思いっきり抱きついたスプー、今度は茂森にキスされるという僥倖に見舞われる。
のんびりした語り口に惑わされがちだが、おっとりしているように見えて、なかなかのやり手である。
ちなみに、5/1午前の部では「ちゅっ」という音をたててスプーの頬にキスしていた茂森、5/1午後はキス音聞こえず、5/3午後は「ほちょ」といった不明瞭なキス音であった。

さて、今回のコンサートのテーマは「NHKホールを“うたのまち”にしよう」というなんとも抽象的なもの。“うたのまち”という概念が今ひとつ明らかにならぬまま、コンサートは進行していく。
ここで、今回のテーマソングにあたる「Sing Sing うたのまち」。速水、茂森、杉田、つのだの4人による、割と大人っぽいアレンジの曲である。
速水の声の調子が今ひとつだったようで、歌の面だけでいえば、杉田はまったく遜色なく感じられたが、いかんせん動きの堅さは気になるところである。ごつい体でぎくしゃくと動く杉田。速水の無駄のない動きに比べ、余計な動作が多すぎるように見える。特に、唄い終わって、ステージ奥に歩いていく時の動きを見ると、先代2人のダンスに対するセンスの良さが強く感じられる。

先代と現役の挨拶絡みのトーク、そして、大人っぽい新曲と続き、会場内の小さな観客たちはそろそろ飽きてきたようだ。走り回る者、保護者に何事かを訴える者、奇声を発する者。私の真後ろに座っているコドモは盛んに私の座席の背を蹴っている。この頃、隣席のA氏は、背後の小さな人にしきりと首筋をまさぐられて難儀していたらしい。

またしてもスプーが登場。スプーがラッパを吹くと、ステージ奥からアヤシゲな物体がしずしずと現れる。
エスニックな雛壇といった感じである。雛壇が中央に停止すると、その背後に色鮮やかなこれまたエスニックな幕が下りてくる。
雛壇の上にはタリ。
タリは、「デ・ポン」の衣装(黄色ベースの初期バージョン)にお色直ししている。そして、テレビでおなじみのガムラン風のメロディが流れ、挨拶抜きでいきなり「デ・ポン」に突入。
テレビでは、スタジオの子供とスプーとタリの3人で行う「デ・ポン」のコーナーだが、このステージではタリ一人だけである。そのため、演出を変更せざるをえないのはわかるが、あまりにもテレビのバージョンと違う。
テレビでは、両手の人指し指を上に立てる決めのポーズで、「はい、デ・ポン」と声をかけているが、ステージ版では「デ・ポン」だけ。「はい」抜きである。「植物の芽が伸び花が咲く」という仕草をするシーンでの台詞と、途中、虫の羽音のようなSEが入ると「なにかきた、蜂だ」という台詞もなし。ひたすら無言で踊るタリ。テレビ版とは振付も違う。

コンサートのエンディングの挨拶で、タリが「『デ・ポン』早く覚えてね」と言っていたが、これでは覚えろという方が無茶である。テレビ版でも振付が何度かマイナーチェンジしている上に、コンサート版という新たなバージョンまで出された日にゃ、一体どうしたらいいものやら。
タリファンにとっては、スプーや子供に気をとられることなく、彼女のソロダンスを堪能でき、喜ばしい「デ・ポン」コーナーだったわけだが、タリに興味のない者にとっては、おそらく妙な時間が流れていたはず。小さな観客たちの「飽きた」という心の叫びが会場いっぱいに渦巻いているのがひしひしと感じられる。ここらで「どーなっつ」でも投入しておかないと、暴動が起きるぞ。

という、私の思いをよそに、タリを乗せたエスニック雛壇がしずしずと去っていくのと入れ換わりに、グランドピアノが2台登場。上手のピアノに茂森、下手のピアノにつのだが座っている。つのだはミディ丈の白いドレス、茂森は目にも鮮やかな真っ赤なロングドレス。赤といえば茂森、茂森といえば赤。

まずは、2人で「あかちゃん」「げんきひゃっぱい」「こんなこいるかな」「ぞうさんのあくび」「スプラッピ スプラッパ」という、「おかあさんといっしょ」でおなじみの曲をメドレーで連弾。先の佐藤による「りょうこおねえさんってピアノが巧い」という唐突な台詞は、このシーンのための伏線だったわけである。
その後、茂森が「りょうこおねえさんのピアノって最高ですね」と、これまたどうにもとってつけたような台詞が入るんだが、茂森も一緒に弾いていたわけで、できればここは「いえいえ、あゆみおねえさんこそお上手ですよ」「そんなそんな、りょうこおねえさんにはかないませんよ」「とんでもない、あゆみおねえさんの方が」「なんのなんの、私は所詮声楽科卒ですもの」「いやいやいや、声楽科でこれだけお上手に弾くなんてさすがです」「いいえ、私は声楽科ですから歌には自信がありますけど、ピアノは全然」「そんなご謙遜を」「りょうこおねえさんは器楽科のご出身ですものねえ、声楽科じゃなくて。やはりピアノの腕は一級ですね」「それほどでもありません。あゆみおねえさんこそ、ピアノも歌もお上手で」「なにをおっしゃいますやら、りょうこおねえさんはピアノはお上手じゃないですか」「いえいえ、あゆみおねえさんこそお上手ですよ」…といった無限ループに突入して欲しかった。嘘だけど。

「りょうこおねえさんにお願いがあるんですが」と、茂森。
「なんでしょうか」と応じるつのだ。
「私、唄いたい歌があるんです、弾いてくださいますか?」と言うなり、有無を言わさずつのだに楽譜を受け取らせる茂森。さすがである。

そして、つのだに伴奏させ、茂森はクラシック風の発声で、「この道」「ゆりかごのうた」「子鹿のバンビ」「野ばら」という、懐かしい童謡をメドレーで唄う。5/1午前の部では、少々照れたような表情に見えたが、5/3午後は、堂々とした態度で華麗に唄っていた茂森。じっくり丁寧に唄わせると茂森はやはり巧い。張りのある高音にしばしうっとりと聞き惚れる…のはいいんだが、いかんせん、会場は騒然としているんである。今のコドモにはおそらく馴染みのない曲のメドレー、そりゃ飽きるだろう。斜め前の席では号泣しながら暴れるコドモを母親とおぼしき女性が必死に押さえつけている。

童謡メドレーの後、茂森がピアノに戻ると、速水、杉田が登場して「風のバラード」。これまた静かな大人っぽい曲である。
茂森とつのだの伴奏で、速水と杉田がデュエットするという豪華なこのシーン、今回の見どころの1つだとは思うんだが、頼むから座席を蹴飛ばすのはやめておくれよ、後ろの小さな人。キミの気持ちはよくわかる。だが、きっともうしばらくの辛抱だ。落ち着いてくれ。

私の思いが通じたか、続いて「もしも季節がいちどにきたら」。
ステージが明るくなり、軽快なメロディにのって踊る4人、会場の空気が盛り上がる。

ヒールの高いサンダルで景気よく踊る茂森、小学校の上履きみたいな白いペッタンコ靴でぎこちなく踊るつのだ。おそらく歴代歌のおねえさん中で最高のジャンプ力を誇る茂森の威勢のいい跳ねっぷり、これと並んで踊らせるのは、つのだに少々気の毒な感じがする。大きな体をチマチマと動かすつのだや、相変わらず無駄に力が入っているように見える杉田と比べると、速水と茂森のメリハリの効いたダンスが見事である。

唄い終わると「ありがとう〜!」と叫んで、駆け足で退場する4人。ここで、またまたスプーの出番である。
「今日はもう一人おともだちが来ている」と紹介するスプー。えっ、“おともだち”? “おねえさん”とか“ゲスト”でいいんじゃないの? なんとなく得心いかぬものの、期待に胸はときめく。

さあ、お待ちかね、松野の登場だ!

ここから、「トライ!トライ!トライ!スペシャル」と銘打たれた、松野のコーナーである。水色の華やかなコスチュームに身を包んだキュートな松野が、新体操のリボンを操る。そこに「やっほー!」という声がかかり、空中高くジャンプをキメて、上手から佐藤が登場。佐藤もやはり水色のラテン風の衣装である。

先代チームにまだ未練を残す私、この2人が組んで演技を披露してくれるというだけで目頭が熱くなる思いがする。
棍棒を使って、華麗な動きを見せる松野。2本の棍棒を佐藤に向かってパス。受け取った佐藤は、棍棒を投げあげ、後ろ手で見事にキャッチ! …しなかった5/1午前の部。すとんと落として、そそくさと下手に退場。ただし、5/1午後と5/3午後は、しっかりキャッチして満場の拍手を受けていた。
最後は輪を使った演技。佐藤の肩に仁王立ちになった松野が、輪を自分と佐藤の体を通して下に落としてポーズ(5/1午後の部は、輪を落とさずに、松野が頭の上にかざしてポーズをキメていたように思うのだが、記憶違いやもしれぬ)。

松野が退場した後、現役チームが登場。
腹が減ったと訴えるスプーに、「いいものがある」「みんながだいすきなもの」と応じるおにいさんとおねえさん。

「そう、だんご!」

へえ、そんなに“いいモノ”かね。いや、これだけヒットしているんだから“いいモノ”なんだろうけど、自分で言っちゃいかんだろう、NHK。「だんご」は腹一杯って思っている人間だって少なからずいるんだぜ。
それはともかく、現役チームによる「だんご3兄弟」の初めてのお披露目である。
先代は、速水と茂森と松野が“3兄弟”に扮するイメージでの振付だったが、新しい振付は4人で踊るせいもあるだろうが、“3兄弟”というよりも、「だんご3兄弟」アニメーションに登場するバックダンサーのイメージである。
旧振付、新振付、どちらがいいかは個人の趣味の問題であろうが、こんなことなら先代の時も佐藤を加えて4人で踊っていればよかったのに、などとぼんやりと思う私であった。

先程までNHKホールを支配していた「退屈」という空気も、華やかな「トライ!トライ!トライ!」、人気曲の「だんご3兄弟」と続くラインナップで、かなり緩和されてきたようである。ここで、さらに「どーなっつ」が登場。コドモたち大喜びである。「野原がぼくらの遊園地」を唄うと、またしてもあっさり退場。私は「どーなっつ」には思い入れは全くなく、というよりも、正直な話、苦手なのだが、こうまで粗雑に扱われると、「過去の栄華」とか「窓際」などという単語がつい脳裏を去来してしまうのであった。

さて、ここで、今回のコンサートの一番の見どころ、先代チーム復活の「サラダでラップ」だ。
5年間チームを組んでいた速水、茂森、佐藤、松野による、熟練の技。速水、茂森の華やかさ、佐藤、松野のキレのいい動き。

そうそう、これだよ、これ。私が見たかったのはこれなんだ。5年たてば今のメンバーもこんな風になるのかもしれないけれど、少なくとも、今は比べものにならない。「おかあさんといっしょ」を単なるエンターテインメント番組としてとらえている私にとって、ベテランも新人もないのだ。今がすべて。楽しければ面白ければそれでよし。「サラダでラップ」の完成度を見せられた後では、現役チームのおぼつかなさが際だつばかり。罪な演出、罪な構成だなあ。

ピンクの愛らしいワンピースを着たつのだの「もしもし」という囁きで始まる「はるかぜ電話」、先代と現役共演の「しゃぼんだまいっぱい」「ゆめをひとさじ」「てをたたこ」と続き、体操「あ・い・うー」。「さあ、みんな立って〜!」と言った後に「2階、3階のおともだちは危ないから座ったまま体操してね」と言うのはいかがなものか。先に言ってやれよな。

そして、現在、番組のエンディングで流れている「スプラッピ スプラッパ」を全員勢揃いで。しかし、毎回踊っている現役メンバーより、先代の速水、茂森、松野の方が、「スプラッピ スプラッパ」のダンスがこなれているのはどういうわけだ。修練や慣れだけではどうにもならないこともあるということか。
さらに、3月の北九州、幕張でのイベントでも唄われた「バイ バイ バイ」で幕。一番最後の音を高らかに唄いあげる茂森の美声が耳に残る。

いったん下りた幕が再び上がると、ステージには、杉田とつのだ。曲は「いつまでもともだち」。
途中、上手上方にスポットが当たると、NHKホールご自慢のパイプオルガンのスペースに速水と茂森が立っている。そして、速水と茂森に向かって、杉田が「6年間ありがとうございました」と挨拶。曲の途中で速水と茂森への照明は消え、最後は杉田とつのだ2人になる。番組では新旧バトンタッチのシーンがなかったわけだが、このコンサートがその代わりを果たしたといえる。この新旧交代のシーンのために、今までの1時間強があったといっても過言ではなかろう。悪くない演出だと思う。だが、これで先代と本当の別れかと思うとやはり寂しい。

今後、ファミリーコンサートが開催されるごとに、エンディングは上方の張出しステージに速水と茂森が立ち、杉田が「ありがとうございました」と挨拶するのが恒例になったらいいのに、などと無茶なことを思いつつ、NHKホールを後にしたのであった。【み】

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