佐藤弘道の運動神経

「おかあさんといっしょ」のエンディングをご覧になったことがあるだろうか。
体操のおにいさん(佐藤弘道)が指揮をとる「あ・い・うー体操」、続いて、歌のおにいさん(速水けんたろう)、おねえさん(茂森あゆみ)、「トライ!トライ!トライ!」のおねえさん(松野ちか)、人形劇の4匹(みど、ふぁど、れっしー、そらお)が登場し、「ドレミファ列車」という歌でしめる。その際、人形2体が手で作ったアーチをトンネルに見立て、汽車ごっこのように一列につながり、次々にアーチをくぐるのが慣例だ。

なんといっても、子供たちが主役である。3歳児の顔を映すために、カメラはかなり低い位置を狙うことになる。子供たちを誘導しつつ、アーチをくぐりながらも、おにいさん、おねえさんたちは、カメラが自分の方に向くと、すかさず腰をかがめて、画面に顔が映るようにする。カメラ目線でニッコリと笑顔を作りつつ、手をふるのである。

初期の「ドレミファ列車」では、このような風景はなかったように思うのだが、私の勘違いだろうか。
確か、初めは、佐藤、速水が、しゃがんで画面に入るようになり、そのうち、茂森と松野もそれにならったと記憶するが、松野はこの「しゃがんで笑顔」がなかなかできず(できなかったのか、意思をもってやらなかったのかは定かではないが)、いつも胸元から下しか映っていなかったものである。

余談だが、松野は、遠慮深いのか要領が悪いのか、速水・茂森・佐藤・松野の4人が勢揃いするシーンで、よく画面からはみだしてしまったり、端に寄ってしまったりしている。速水・茂森・佐藤は同じ年に「おかあさん」に登場した、いわば「同期」であり、松野だけが1年遅れで参加している「後輩」だ。これは単なる推測にすぎないのだが、3人の先輩たちに遠慮してつい端っこの方にいってしまう、あるいは、ノンビリとした性格のせいで気がつくと画面から顔がはみだしてしまっているのか…。いずれにしても、松野の人柄の良さをそこはかとなく感じることができ、好感が持てるというものだ。

それはともかく、エンディングでは、カメラがおにいさん、おねえさんを狙うと、必ず腰をかがめてニッコリ手をふるというのが最近の傾向なわけだが、5/19の放送では、さらに新手の技が登場した。
番組の最後に「おかあさんといっしょ」という番組タイトルが、画面にかぶさるのだが、この時、中央に立っていた佐藤弘道が、さりげなくしゃがんだのである。そして、タイトル文字の下から、ニッコリと笑顔で手をふっていたのだ。不確かではあるが、今までこのようなことはなかったのではないか。もしかしたら、5/19は、子供に何か話しかけられたなどの理由でしゃがんだのかもしれないと思い、翌20日の放送のエンディングも注目していたのだが、やはり佐藤は同じタイミングでしゃがんでいた。

普段から愛敬たっぷりの佐藤だが、こんな細かいところでも愛敬をふりまいていたとはさすがである。無論、佐藤が自分で言い出したのではなく、スタッフからの指示に従っただけかもしれないが、絶妙のタイミングでしゃがむあたりに、体育会系の運動神経の底力を感じる。【み】

もくじ