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神々のふるさと・出雲神楽

神々のふるさと・出雲神楽

このブログでは、主に昭和期に製作された英映画社 (1927-2009) の作品およびチラシの画像を紹介しています。古い資料が多く文字がつぶれて読みにくい箇所があるため、文字起こししたテキストを添えています。
なお、当時と現在では考え方やさまざまな環境が違うこともあり、今見ると非常識に思える部分がありますが、歴史的な資料として、誤字や旧仮名遣い等も含めできるだけそのままの形で掲載しておりますことをあらかじめご了解ください。また、掲載されている住所や連絡先は当時のものですのでご注意ください。

目次

データ

2002

「神々のふるさと・出雲神楽」
シリーズ〈民俗芸能の心〉

2002(平成14)年
企画:ポーラ伝統文化振興財団
製作:株式会社 英映画社
カラー41分

優秀映画鑑賞会推薦
日本産業映画ビデオコンクール文部科学大臣賞
キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位
優秀映像教材選奨優秀作品賞

監修高橋秀雄
製作宮下英一、内海穂高
脚本菅野均
演出松川八洲雄
撮影小林治、小幡洋一
撮影助手藤原千史、中山憲一
照明前田基男、北沢保夫
録音弦巻裕、松本修、南徳昭
選曲山崎宏
ネガ整理長沼ヨシコ
タイミング三橋雅之
タイトルシネブレーン
録音東京テレビセンター
現像IMAGICA
語り北村昌子
協力佐太神社
佐陀神能保存会
鹿島町教育委員会
鹿島町立歴史民俗資料館
見々久神楽保持者会
有福神楽保持者会
奥飯石神職神楽保持者会
島根県教育庁
島根県古代文化センター
島根県立博物館

チラシ

神々のふるさと・出雲神楽
神々のふるさと・出雲神楽

チラシのテキスト(文字起こし)

出雲神楽は身体で描いた古事記

松川八洲雄(映画監督)

 語り部が代々言葉で伝えてきた日本人の歴史・“世界観”を、古事記は、墨を含ませた獣の毛の筆で中国の文字を借りて紙に書き残す「文明」の…試みであったとすれば、お神楽は、文字の代わりに身体行動とロうつしされてきた言葉、たとえば呪文のような…を用いて物語を伝えようとしたもの、といえるだろう。その場合、何者かの他者を真似る知恵は幸か不幸かまだ発見されず、なんとしてでも神なら神に、鹿なら鹿になりきらねばならなかった。他者を真似るのではなく、他者になる。これは近代演劇では至難のことである。ましてなるべき対象は…見たこともない、たとえば神。
 私は神だ、と思い込む。なかなかその事を信じられない。くり返し、私は神だ、と思い込もうとする。目をつむったり、面をかむったり、そうして思い込みを誘う動きをくり返す。笛は情動を誘い、太鼓は運動を引き出そうとリズムを刻むだろう。いい具合にむずむずしてきたぞ…などと考えると、つまり邪念が入るとダメになる。はじめからやり直す…。この繰り返しのうちに気分がよい方向に動き始めたら上昇気流に乗るトンビの要領で躰をふっとのせる…。酒はその飛翔を大いに助けたにちがいない。
 最初から他者(観客)に演じてみせる魂胆なぞは入り込む余裕はなかった。いや、むしろ“観客”の方が神になって神座と定めた「結界」に入り込む、というのがマツリの常道だったろう、すくなくとも奥飯石の“観客”はそうだった。そして観客は…なにをかくそう、力ミサマと区別がつかないときている…。
 …そのように出雲神楽には、凝視するならば日本人の信仰や、神や、魂や、言葉や、舞や、演劇や、もろもろの原初のヒミツを解くカギが、いまでもいっぱい、いきいきとしてつまっているように思えた。

神々のふるさとの神楽

高橋秀雄(日本伝統芸能研究所所長)

 真赤な太陽が西の空に沈む。しばらくは山々の稜線がくっきりと描かれるが、やがて迫ってくる夜の帳の中に姿を消す。静謐な空気をゆれ動かすように、太鼓の響きが聞こえてくる。
「御座替神事」がはじまっている。御座替とは、毎年、新しい茣蓙を編み、これを神座としてしつらえるおごそかな神事である。
 日本の各地では、陰暦の十月を神無月と称しているが、出雲ではこの月を神在月と呼んでいる。全国の八百萬の神々が出雲に集まってくると伝えられているからである。
 佐太神社では、九月二十四日の夜に古伝の「御座替式」が厳粛に執り行われる。八つにたたんだ茣蓙を手にしおごそかに舞い清める。直面による神事舞いであり、この種の神楽は七つの演目があり、いずれも茣蓙を清める神楽であり、「七座の神事」と呼ばれている。
 翌二十五日は例大祭。「翁」と「佐陀神能」が奉納される。佐太神社の神楽は「七座」「翁」「佐陀神能」の三つを基本として構成される。「翁」と「佐陀神能」では面を着けての神楽を特色とする。
 社伝では、慶長年間に当社の幣主祝宮川兵部少輔秀行が上洛の折りに当時中央で盛んであった大和猿楽を学び伝え、「佐陀神能」を作り伝えたとされている。
 演目は十二番あるが、もっとも人気のある曲は、「ヤマタノオロチ」の神話を内容とする「八重垣」である。神話であるとともに、この物語の背景には、古くから斐伊川から農耕に必要な水の供給とともに、しばしば洪水をおこすという農民との関連が色濃く反映し、農民の生活とも密接に結びついていたからであろう。
 この映画では、「見々久神楽」「奥飯石神楽」の「ヤマタノオロチ」を比較し、さらに新しい表現様式で人気の石見の「有福神楽」にも視点をあて、「出雲神楽」の秘密を探ろうとするものである。

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