佐藤弘道は今でも「おかあさんといっしょ」のおにいさんなのか?

今日、11月17日放送の「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ)。人気コーナーの「食わず嫌い王決定戦」に、「おかあさんといっしょ」先代の体操のおにいさん・佐藤弘道が出演する。
今朝の産経新聞のテレビ欄にはこう書いてある。

食わず嫌い・体操のお兄さん佐藤弘道Vsユー皆であいうー体操

「ユー」というのは、元フェアチャイルドのYOUのこと。「食わず嫌い」の対戦相手である。
バラエティ番組では、アニメの主題歌を唄う歌手や声優など、子ども番組に関わったタレントを珍重する傾向にある。
また、とんねるずもYOUも育児経験者ゆえ、ナマ“弘道お兄さん”登場に、さぞ浮かれることだろう。

YOU「あたし、見てましたよぉ、毎日」
佐藤「ありがとうございます」
木梨「♪あわてたアヒルがあ!…っていうンですよね」
石橋「イシバシタカアキ、い!」
(スタッフの笑い声)
YOU「あのね、園長先生んとこがイイんですよ。ちょっとやってくださいよぉ」
佐藤「♪園長先生、え!」
石橋「おー、本物だあ〜」
YOU「この首の角度がね、たまんないんですよ」
木梨「♪いいないいな、なれたらいいな」
石橋・木梨・YOU「♪みんないっしょに〜みんないっしょにあ・い・うー! おー!」
(一同拍手)

と、こんなシーンが繰り広げられるに違いない。

おや、この感じ、どこかで見たような? デジャヴ?
そうだ、忘れもしない1999年の「だんご」騒動の頃に似ているじゃないか。
番組を卒業したばかりの歌のおにいさん・速水けんたろうと歌のおねえさん・茂森あゆみは、各局のバラエティ番組に呼ばれると、必ず「だんご3兄弟」を1フレーズ唄わされていたものだった。雑誌やテレビ欄では「だんごのお姉さん」とか「だんご歌手」なんていう雑な肩書きをつけられちゃうこともしばしば。
うん、確かに似ているんだけど……でも、なにか、違う。
現在も「おかあさんといっしょ」に出演中の佐藤と違い、速水と茂森は、「だんご」騒動が過熱した頃には完全に番組を卒業していた。
また、「だんご3兄弟」はCD売上げ歴代1位になるほどのヒットで、子育て中ではない一般人にも充分浸透していたと思われる。「おかあさんといっしょ」発の社会現象だ。
一方、佐藤はそこまで一般的ではない。人気アニメの声優程度の浸透度だと思う。
たとえば、「宇宙戦艦ヤマト」の麻上洋子。まあ、このコラムをご覧になっている皆さんならご存じだと思うけれど、普通、この名前を聞いただけじゃ何者だかわかるまい。「ルパン三世」といえば、故・山田康雄の顔は浮かんでも、小林清志や井上真樹夫の顔は浮かばないだろう。でも、「宇宙戦艦ヤマトの森雪が可愛かった」とか、「次元よりも五エ衛門のほうがカッコイイ」くらいの話は出来る人は多い。
つまり、NHKの超長寿番組である「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさんといえば、本人を全く知らなくても雰囲気くらいはイメージできる…ということ。って、なんか余計わかりにくいたとえですみません。

これまで、番組を“卒業”した体操のおにいさんが、引き続き「おかあさんといっしょ」に出演していたことはないと思う。
しかし、佐藤は、2月にNHKが「体操のおにいさんを卒業」と大々的に発表したものの、4月からも土曜日の「おかあさんといっしょ あそびだいすき」に出演中。“NHK「おかあさんといっしょ」の体操のおにいさん”ではなくなったが、今も“NHK「おかあさんといっしょ」あそびだいすきのおにいさん”なのである。
NHKとしては、2005年3月に「佐藤弘道『おかあさんといっしょ』卒業」としているようだが、「おかあさんといっしょ あそびだいすき」というタイトルの番組にレギュラー出演している以上、佐藤はやはり今でも現役の“「おかあさんといっしょ」のおにいさん”だ。

さて、NHK的には“卒業”しても、民放ではいまだに「ママのアイドル・体操のひろみちお兄さん登場!」といったスタンスで起用されている佐藤。12年も体操のおにいさんを務めて人気が出た人がタレント活動を始めるにあたって、その肩書きを利用しない手はない。

だが、実際には卒業していないのである。仮にNHKがどう言おうとこれだけは譲れん。
「おかあさんといっしょ」の出演者は、年齢や家族構成を伏せるのが慣例である。
以前、NHKに問い合わせたことがあるのだが、「子どもたちの夢を壊さないため」にそうしているらしい。年がバレるとどうして夢が壊れるのか理解に苦しむが、それがNHKのスタンスならそれでもいい。
だったら、年齢を明かすどころか、家族と共演したり、金融関係の会社のCMに出演したり、トーク番組で若いお嬢さんが接客する店に行った話をしたり、バラエティ番組で「あ・い・うー」……なんてのは、夢が壊れる要因にはならないのだろうか?

もし、契約上の問題で佐藤の言動をNHKがコントロールできないのだとしたら、「おかあさんといっしょ あそびだいすき」のタイトルから「おかあさんといっしょ」の文字をハズしてほしい。それなら納得できる。それも無理なら、佐藤を「おかあさんといっしょ」以外の番組で起用してくれ、NHK。
夢が壊れるから現役出演者の年齢や家族構成を伏せるという「おかあさんといっしょ」の慣例の是非はともかく、佐藤に対してこの慣例が徹底されてないのがどうにも気持ちが悪いのだ。何度も言うけど、我々のようなシロートから見れば、今でも弘道おにいさんは現役の“おかあさんといっしょのおにいさん”なんだから。
時代が移り変わるにつれて、「おかあさんといっしょ」を取り巻く状況、関連企業との兼ね合い、出演者の都合などなど、NHKが方針を変更せざるをえないこともあるだろうが、「おかあさんといっしょ」は変わらないからこそ面白いのだし、長く愛されてきたのだと思う。

無論、番組をより良くするため、子どもたちが楽しめるよう、日々工夫してくれるのは嬉しい。だが、無理に変わらなくてもいいのだ。
古くさくたっていいじゃないか。我々のようなオトナのマニアが「今どき年を伏せるなんて…」「アニメは要らないからもっとおにいさん・おねえさんを映せ」などと見当はずれの文句をつけようが、一切、何も変わらないのも「おかあさんといっしょ」の良さなのである。【み】

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