「まねっこピーナッツ」究極のナイスキャラ

「おかあさんといっしょ」の造形スタッフは、へびくん・ぶたくんや「もぐらトンネル」のモグラ、「かっぱなにさま?かっぱさま!」のカッパなど、次々とキュートな人形を世に送り出してきたが、この春、究極のナイスキャラが登場した。
「まねっこピーナッツ」のピーナッツ人形である。
4月から始まった「まねっこピーナッツ」は、人形がキメるさまざまなポーズをスタジオのコドモたちがマネをするというごく短いコーナーで、月〜金にオンエアされている。

ツータカツータカというカントリー&ウエスタン調のご陽気なテーマソングにのって登場するピーナッツ氏。カウボーイのような格好をした殻つきピーナッツ型のボディに紐の手足がくっついている。
ピーナッツ氏の一人称は「オイラ」である。
彼が「オイラと勝負だ!」と煽ると、おにいさん・おねえさんたちが「まねまね!」と景気の良い合いの手を入れる。
曲がかかっている間、紐の手足をぐにゃぐにゃと動かすピーナッツ氏。そして、「まねまねまねっこピーナッツ」という歌詞のところでポーズ。ピーナッツ氏、なにしろ手足は紐だから、片足を高々と上げたりいきなり腰を落としたりと、どんなポーズも自由自在だ。
おにいさん・おねえさん、コドモたちがポーズをマネると、ピーナッツ氏が声高らかにカウントを始める。

ワンピーナッツ、ツーピーナッツ、スリーピーナッツ!

なぜカウントの後にピーナッツ。必要なのかピーナッツ。
これではまるで、「打つなら打ってみロッテ」とか語尾に無理矢理「ロッテ」をくっつけられてた千葉ロッテ在籍時代の「ドカベンプロ野球編」の伊良部みたいではないか。って、たとえがわかりにくいですか。すみません。

そして、カウントが終わると、ピーナッツ氏は「な〜かなかやるじゃねえか」などと伝法かつ居丈高な台詞を口にするのである。落花生なのに。
で、その言い回しがやたらと憎たらしいんだよ、これが。
思わず人形を乱暴にわしづかみにしてぶんぶん振り回してやりたくなるほど小憎らしい。
なんでまた、朝から植物の実ごときに挑戦的な態度をとられなきゃならないのか。
しかし、人間のおにいさん・おねえさんは、文句も言わずにニコニコと合いの手を入れ、おっとっと…などとよろめきながら従順にポーズをキメたりしているのである。

だが、ここまで憎たらしいとかえって爽快だ。
中途半端が一番いけない。やるなら徹底してやるべきだ。
また、コーナーの最中、唄ったり踊ったりするおにいさん・おねえさんたちの嬉しそうな表情が誠にいい。見ているだけで楽しくなる。万が一、視聴者から「ウチの子がマネをするので乱暴な言葉遣いはやめてほしい」といった抗議があっても、ピーナッツ氏のキャラはこのまま変えないでほしい。
「ねえ、みんな、ボクのマネができるかな? それじゃあ、いきますよー!」なんて優しげに喋るピーナッツ氏はピーナッツ氏ではない。
抗議には「コドモの言葉遣いは家庭の躾の範疇」「彼はこういうキャラクタなのだと貴方のコドモに教えなさい」と突っぱねればいい。

それにしても、どうしてピーナッツにカントリー? ワルツや阿波踊りやボサノバじゃダメなのか。
カントリー&ウエスタンといえば、アメリカ西部のカウボーイたちの伝統的な音楽である。
そうか、落花生はアメリカ生まれの植物か? ……と思って辞書を引いたら、原産地は南アメリカだった。「江戸前期、中国を経て渡来し、各地で栽培」されたらしい。
いやいや、きっと主な輸入元は北アメリカなのだろう。……と思って検索したら、「農林水産省非技術センター」のサイトによると、現在、中国からの輸入が国内流通量の約69%を占めているという。

っていうか、関東育ちの人間にとって、落花生といえば千葉。
そして、千葉といえば、醤油、長島茂雄、成田空港……あ、マザー牧場?
マザー牧場→牛→カウボーイ。おお、落花生とカントリー&ウエスタンが見事に繋がったではないか。ぶらぼー。

と、まあ、出鱈目な話はこれくらいにして、今後もますますピーナッツ氏の憎たらしさに磨きがかかることを祈りたい。小憎らしさを極めてくれ、ピーナッツ!【み】

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